つぼ湯

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和歌山県の「道」の世界遺産「熊野古道」。
熊野の聖地には、古くから巡礼者が湯垢離(ゆごり)を行って身を清め、癒してきた温泉街があります。
その一つ「湯の峰温泉」には珍しい世界遺産があります。

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「つぼ湯」、それは唯一、実際に入ることのできる「温泉」の世界遺産です。

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風情のある温泉街にこじんまりとある「つぼ湯」は、二人がぎりぎり浸かれるくらいの小さな温泉です。
なので予約・時間制で入浴しなければなりません。

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川沿いにぽつんとある風情ある小屋。
ここにつぼ湯があります。

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この「つぼ湯」には小栗判官にまつわる物語がありました。

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都の高貴な家に生まれた「小栗」は戦いに負け常陸(ひたち)の国に流れ着きます。
そこで相模の国の守護代、横手殿の美姫「照手姫」と恋に落ちました。
これを知った横手殿と子らは怒り、様々な計略の果て、ついに小栗を酒の場に呼び、これを家来もろとも毒殺します。
こうして家来と小栗は地獄行きとなりましたが、家来たちの懇願により閻魔大王は小栗を娑婆(しゃば)に戻すことにします。
ただしこの時、小栗は目も見えず耳も聞こえず、ものも言えない変わり果てた姿となって生き返ることになります。
その姿は餓鬼に似ているので、人は「餓鬼阿弥」と呼びました。
閻魔大王はこの餓鬼阿弥を熊野の峰の湯につけると元の姿に戻るだろうとだけ言付けました。
餓鬼阿弥の姿に心を痛めた藤沢の上人は、彼を引き車に乗せ、首に「この者を一引き引いたは千僧供養、二引き引いたは万僧供養」と書いた板をかけ、富士浅間神社まで引いていきました。
この後次々と多くの人が、代わり代わりに「えいさらえい」と餓鬼阿弥を引いて東海道を上っていきました。

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一方「照手姫」は横山殿の怒りを買い、淵に沈められそうになるところを、姫に同情した下僕の一計で逃れることができました。
その後、人買いづてに次から次へと売られ、各国を流れて美濃の遊女宿に買い取られます。
遊女になれという主人の話を断った照手姫は「常陸小萩」と名のり、かわりに16人分の水仕事をすることになります。
ある時常陸小萩は、東海道を上ってきた餓鬼阿弥を見つけ、それが自分の夫であることも知らず、夫の供養になればと主人に5日間の暇をもらい餓鬼阿弥を引いていきます。
やがて約束の5日目になり、「ああこの身が二つあったなら」と小萩はとても名残惜しみつつも遊女宿に戻っていきました。

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その後も多くの人に助けられ、ようやく湯の峰にたどり着いた小栗。
湯に浸かった餓鬼阿弥は次第に元の姿を取り戻します。
四十九日をかけ湯を浴び、晴れて元の姿に戻った小栗はすぐに常陸小萩の元へ向かいます。
こうして長い年月と、多くの人の助けを経て「小栗」と「照手姫」は結ばれるのでした。

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この時小栗が浸かった湯の峰の湯こそ「つぼ湯」となるのです。

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さて、僕もつぼ湯に入ります。

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本当に小さな湯です。
洗い場も含め、全体で3畳くらいの広さでしょうか。

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かなり高温なので水で薄めて入ります。

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適温になった湯に入ると疲れが一気に抜け落ちる感じです。
風情極まるひと時。
まさに「生きかえる心地」です。

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「つぼ湯」の湯の色は一日に7回変わると言います。
この時は深いブルーの乳白色。

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ひと風呂浴びたあとは夜風に涼み、「湯筒」で温泉卵をいただくのも良いです。
すぐ近くの小売店で卵や野菜、芋・栗など売ってました。

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