青森で霊場といえば「恐山」。
日本三大霊場として「高野山」「比叡山」と並び称されます。
しかしその恐山は観光バスがしきりに往来し、近年ではスマホゲームでレアキャラがゲットできるなどの噂が飛び交い、
本来の霊場としての姿を失いつつあります。
実は素朴ながら静謐で、恐山と並び称される霊場が五所川原市金木町にあります。
「川倉賽の河原地蔵尊」(かわくらさいのかわらじぞうそん)です。
金木町は「太宰治」を生み育てた「斜陽館」がある町です。
入り口には数体の像が建っています。
川倉賽の河原地蔵尊は恐山を開いた「慈覚大師」によって開かれました。
「天空から不思議な御燈明が降り、そこから地蔵が出土して安置した」と伝わります。
立ち並ぶ地蔵尊。
楼門では仁王像が立っています。
気持ちを正して、門をくぐります。
少しばかり参道を歩くと本堂である「地蔵尊堂」に着きます。
恐山は老若男女広く、死した人を偲ぶ場所ですが、
ここは主に幼い子供を亡くされた人たちが、偲び、供養に訪れる場所のようです。
地蔵尊堂の中には6体のお地蔵様が立っています。
お地蔵様の裏に回ると、そこには亡くなった子供の供養のために何百体もの小さなお地蔵様が観客席に座っているかのように並べ置かれています。
故人の写真や靴や服などの遺品が取り囲むその地蔵様は、化粧を施されたものもあります。
地蔵尊堂の横には「人形堂」というお堂もあり、
そこには結婚する前に亡くなった若い故人のために、花嫁・花婿の人形をお供えしてありました。
地蔵尊堂から下る道があります。
その道は「賽の河原」(さいのかわら)と呼ばれています。
100mほどの小道の脇には、小さな地蔵様が並んでいます。
小屋のようなものも数箇所あり、中には寄り添うように地蔵様が座っています。
風雨にさらされながらも綺麗に着飾る地蔵様は、ここを訪れる方が丁寧に、大切にお手入れをされているのでしょう。
下まで降りていくと、
沼地に出ました。
再び小道に足を向け、地上に戻ります。
怖いという感じはありません。
ただただ哀しみだけが、この雨のように降り注いでいます。
死は、あらゆる命あるものに、遍く訪れます。
しかし幼い命の、あってはならない早すぎる死ほど、哀しいものはありません。
願わくは、純粋で穢れを知らぬ魂よ、
きらきらと輝く世界で、笑い声を響かせていてほしい。