ゴールデンウィークの頃に美しい藤の花を見せてくれる「河内藤園」には秋の顔があります。
5月に美しい薄紫のグラデーションを飾った藤棚も今は枝を残すのみ。
しかし改めてその幹を見てみると、これはまた趣深い造形をしています。
さて、藤棚の少し奥はやや急傾斜の山道となっており、そこに紅葉のトンネルが出来ています。
近年は急激な温暖化の影響もあり、綺麗な紅葉とならないことも多いようです。
それでも美しい枝ぶりの中を歩くのは気持ちよい。
「緑」と「赤」は「補色」の関係にあります。
色相環でいう真反対の色です。
一枚の葉の中で真反対の緑色から赤色に変化するのはとても不思議です。
葉が緑なのは緑の色素「クロロフィル」と黄の色素「カロテノイド」があるからだそうです。
これらの物質が光を吸収し光合成を行います。
秋になり日照時間も少なくなってくると光合成の効果が落ちてきます。
そうすると落葉樹は休眠のための準備をし始めます。
この際、緑の「クロロフィル」は分解され、枝や幹に回収されます。
しかし黄の「カロテノイド」は分解されず、そのまま葉に残るそうです。
そのため葉は黄色に色づくのです。
更に光合成で糖分が作られるのですが、落葉の準備が進むとこの糖を幹に運ぶ管に、通り道を塞ぐ層ができます。
糖はそのまま葉に残り、これが赤い色素「アントシアニン」に変わり紅葉するのだそうです。
銀杏にはこの糖の流れを塞ぐ仕組みがないため、黄色の色素のみ葉に残り、赤くはならないのだとか。
緑が分解吸収され、黄が残り、赤が上乗せされて赤く色づく。
なるほど補色にあたる色の変化にも納得がいきました。
まあそんな理屈はさておき、赤い世界というのは自然界には稀有なものです。
滅多に見れない艶やかなその風景に、人々はいつも心奪われてきたのでしょう。
美しく紅葉する条件は昼は日が当たって暖かく、夜は冷え込む環境。
赤い色素の「アントシアン」が作られはじめるには最低気温が8度以下になる必要があります。
秋には必ず紅葉すると言えなくなってしまった現代がとても寂しい。
いつまでも日本が日本らしくあってくれるよう、願います。