「日本三景」、「世界遺産」、そして「神を斎(いつ)き祀る島」、宮島。
いつ訪れても美しく雅な聖地を、ちょい旅してきました。
宮島へはフェリーで渡ります。
本土側の宮島口には宮島舞楽のハイライト、「蘭陵王」の像があります。
王は名将でしたが、美しい声と優れた美貌であったため、兵達が見惚れて士気が上がらなくなるので、必ず獰猛な仮面をかぶって出陣したそうです。
宮島に渡るフェリーには、いくつかの会社がありますが、JRのフェリーがおすすめだと思います。
その理由は、JRのフェリーだけ、大きく旋回して、厳島神社の正面を回ってくれる便があるからです。
宮島に到着すると、「平清盛」公がお出迎えしてくれます。
宮島の厳島神社は、推古天皇の御代に、安芸に流されていた「佐伯鞍職」(さえきくらもと)が宗像三女神(市杵島姫命、田心姫命、湍津姫命)の託宣を受けて神殿を創設したのがはじまりとされています。
そして後の平安末期に、平清盛率いる平氏一門の崇敬を受け栄えました。
参道には鹿の姿が目につきます。
とても愛嬌ある宮島のマスコットですが、以前は溢れるほどいた鹿が、今は随分少なくなったように感じました。
お店の方に聞いてみると、「お客様のお土産などを食べたりといたずらをするので減らしました」とのことでした。
か、神の遣いをどうやって減らしたのか、、は怖かったので聞きませんでしたが、
実は宮島では鹿は神の遣いではないそうです。
あくまでマスコット的な存在のようです。
また、宮島といえば「しゃもじ」が有名です。
宮島に光明院というお寺がありますが、そこの修行僧「誓信」が、主たる産業がなかった宮島のために何かできないかと考えました。
誓信は御山の神木を「弁財天」が手に持つ「琵琶」と似た形に削り、宮島参拝のお土産として売り出すことを島民に進めたそうです。
これが「しゃもじ」の発祥になり、やがてしゃもじは「飯を取る」ことから「敵を召し取る」に通じていて「必勝・商売繁盛」の縁起物となりました。
厳島神社に祀られる宗像三女神の「市杵島姫命」は弁財天と同一と見なされています。
【光明院・五重塔・千畳敷】
さて、宮島の参道を歩いていると、ひときわ目につくのが朱色の五重塔です。
そこが世にしゃもじを生み出した誓信がいた「光明院」です。
日本に数ある五重塔の中でも、なかなかに美しい塔ではないでしょうか。
思わず五重塔に目を奪われがちですが、足元にもすごいのがありました。
「龍髯の松」(りゅうぜんのまつ)です。
さながら龍の髭といった感じで、左右2本づつの枝が、これでもかってなくらい、横に伸びています。
いろんな角度で撮影を試みましたが、とてもフレームに納まりきれるものでもなく、諦めました。
五重塔も素晴らしいのですが、そこにある「千畳敷」は、ぜひ一度訪れてみるべきです。
千畳敷は、正しくは「豊国神社」と呼ばれます。
千畳敷はその名の通り、とても広大な堂です。
ここは1587年に豊臣秀吉が戦争で死んだ人たちを供養するために立てたそうです。
しかし完成する前に秀吉は死んでしまいました。
そのため天井が張られていない所もあり、千畳敷は未完成のままなのです。
隅の方に「大鳥居の尺杖」というものがありました。
大鳥居再建の際に用いられた大物尺だそうです。
堂内には優しく光が差し込み、ゆったりとした時が流れていました。
【幸神社】
宮島には、小さな神社がたくさんありますが、その中の一つ、「幸神社」(さいわいじんじゃ)は近年、女性に人気が出てきているそうです。
幸神社は五重塔の下、ちょっと入り込んだ裏路地にあります。
町の名前も幸町といい、江戸時代は厳島神社に参拝する表参道でした。
御祭神は「猿田彦命」です。
ささやかな幸せを感じる、そんな雰囲気に包まれる神社です。
【大願寺】
厳島神社を抜けた先に「大願寺」があります。
厳島神社の回廊を抜けるとすぐに大願寺の楼門があり、どこからどこまでが大願寺の敷地なのかよくわかりません。
正式な名称は「亀居山放光院大願寺」(ききょざんほうこういんだいがんじ)と言い、宗派は真言宗で、開基は不明。
鎌倉時代に「僧了海」(りょうかい)によって再興されたと伝えられています。
大願寺は、明治の神仏分離令までは、厳島神社の修理・造営を一手に担っていたそうです。
また、神仏分離令により、厳島神社の本殿にあった弁財天を大願寺に移したと云います。
大願寺の本尊「厳島弁財天」は、鎌倉の江ノ島、琵琶湖の竹生島とともに、日本三大弁財天の一つとされています。
厳島弁財天は毎年6月17日に行われる大祭の際に御開帳されます。
境内の池の中には、弁財天の使いとされる厳島龍神がお祀りしてありますが、その祠と本堂の間には、存在感のある「九本松」があります。
伊藤博文のお手植えと伝わりますが、九頭龍が弁財天を守っているかのようで、とても力を感じます。
【清盛神社・西松原】
大願寺を抜けて、大鳥居を右手に見つつ進むと、「西松原」が見えてきます。
その松原の中に、ひっそりと「清盛神社」があります。
清盛公は厳島におけるその功績を讃えられ、御祭神となりました。
その清盛神社のあるあたりから西松原を眺めると、美しい海の様子が見えました。
瀬戸内海って、こんなにきれいだったろうか、と目を疑ってしまうほどの青さです。
公の厳島を愛しむ思いがなせる奇跡かと思いました。
【大元神社】
西松原を進むと「宮島水族館」があり、さらにその先に進むと「大元公園」があります。
その公園には立派な大木が茂り、穏やかな空気が流れています。
その森の中にあるのが「大元神社」です。
大元神社は厳島神社の創設より前からあったとされる古社の一つです。
御祭神は「国常立尊」「大山祇神」。
それに厳島神社の初代神主、佐伯鞍職の祭殿 にもなっているそうです。
うしろにある本殿は朱色で雅です。
ざっくり、東から西へ歩いて見ましたが、厳島神社だけではもったいないほど見所のある宮島であることを、改めて実感しました。