日光二荒山神社の別宮、奥地にある「瀧尾神社」(たきのおじんじゃ)は、壮絶な神気の宿る聖地でした。
日光東照宮、二荒山神社本社の裏手を、その道が合っているのか不安になるくらい深く進んでいくと、その神社はあります。
実際は車で行けばそう遠くもなく、歩いてだと30分くらいの道のりなのですが、道は狭く山は深みを増しています。
今ご紹介の写真は、瀧尾神社の手前にある「瀬尾高徳水神社」という社。
水の女神「罔象女神」(みずはのめのかみ)を祀ります。
神使は可愛いカメとカエル。
辺り一帯は深い水の底にいるような、重くしっとりとした気に包まれています。
瀧尾神社に向かいます。
参道はさらに山奥へ石段となって続いています。
階段を昇り終えると開けた場所がありました。
立て札には「別所跡」とあります。
ここは東照宮が出来る以前の、日光参詣の中心地だったそうです。
こんな山奥が、と思ってしまいますが、永正6年(1509年)に日光へ来た連歌師「宗長」は彼の紀行文「東路のつと」で、
「ここより谷々を見おろせば、院々僧坊およそ五百坊にもあまりぬらん。」
と記しており、当時の隆盛を物語っています。
またそこには、弘法大師が神霊の降下を祈願したところ、美しい女神が現れたという「影向石」(ようごうせき)がありました。
さて、石の鳥居が現れ、ただならぬ気配に覆われてきました。
徳川3代目将軍家光の懐刀であり忠臣でもあった「日光山守護・梶定良」(かじさだよし)によって、元禄2年(1689年)に奉納されたと云う鳥居。
この鳥居は「運試しの鳥居」と呼ばれ、小石を3つ投げて、真ん中の丸い穴を通ると運が良いと云われています。
穴を通った数が多いほど幸運なのだそうですが、もちろんノーコンの僕に幸運が訪れることはありません。
鳥居を過ぎると、鮮やかな朱塗りの楼門が見えてきます。
なぜこんなところに、と狐に化かされたような立派な門に、足が止まります。
楼門の奥、聖域に踏み入れば、これまた見事な拝殿・唐門・本殿があります。
祭神は弘法大師が820年に祀ったと云う「田心姫命」(たごりひめのみこと)です。
田心姫はここでは、水の神様として祀られています。
唐門の横には、良縁を願うと云う「縁結びの笹」が。
本殿前に立っているだけでピリピリとくるものがあるのですが、真の聖域はこの裏にありました。
身を清め、俗界と縁を切ると云う「無念橋」を渡ると、
ぶわり、と洪水のような神気が、三本直立する杉の木から吹いてきました。
この三本の御神木は「滝尾三本杉」と呼ばれ、滝尾神社境内で最も神聖な場所であると云われています。
この杉は2代目だそうで、樹齢250年~300年。
300年以上前に倒れた先代の御神木もそのまま苔むして、自然と命の神秘を次代に受け渡していました。
本殿の左奥には、「酒の泉」と呼ばれる湧き水があります。
今は口にすることができませんが、かつて弘法大師がこの泉の水を神様に奉納したことで知られ、酒のような味がすることから、その名が付いています。
さらに川を渡った奥にも鳥居が。
そこにあるのは「子種石」です。
子宝・安産にご利益があると伝わる磐座。
それは確かに、ちょっと変わった風貌の石でした。
真ん中が盛り上がって尖っていて、平たい栗のよう。
愛嬌のある妖怪のようにも見える子種石、
思わず頭を撫でてみたくなりました。