フォトグラファー「ヨシダナギ」さんの写真展に行ってきました。
開催期間がタイトでしたので、滑り込みでなんとか見れました。
対馬「オソロシドコロ」の特集で、僕のブログにも火をつけてくれたTBS系列の番組「クレイジージャニー」でヨシダナギさんもその撮影のドキュメントが度々放映され、一躍有名になりました。
幼い頃よりアフリカ人に憧れていたという彼女。
未成年期は現代人に多い、複雑な年代だったようです。
しかし母親のサポートでフィリピンに誘われて以来、カメラを手に世界を飛び回るようになったと言います。
彼女の映し出す少数民族、先住民族の美しい姿は、見るもの多くの心を捉えます。
警戒心が強い彼ら民族を、ここまで生き生きと撮影できる彼女の手法の1つが、彼らと同じスタイルでその暮らしに溶け込むこと。
同じ食物を食べ、同じ衣装に身を包む。
時には彼らと同じ半裸のスタイルで生活するということです。
クレイジージャーニーでは、彼女の、そんな一部始終を余すことなく伝えています。
部族の女性らは特に、最初こそよそよそしいそぶりなのですが、
そんなヨシダナギさんの体当たりなスタイルに次第に心を開き、心を寄せていく姿が見て取れます。
彼女の写真を見て、正直僕は嫉妬します。
おそらく僕は、人類というものに絶望している口なので、これまであまり人というものを写してきませんでした。
むしろ徹底的に人を排除した写真にこだわっていたと言えます。
しかし彼女の写真を見ていて、人はまだ、こんなにも美しさを残していたのか、と思わせられます。
人の純粋な美しい形が、この写真展でも溢れんばかりに展示されていました。
彼ら彼女らの写真を見ていて、僕は思います。
やはり人類は、単一の視点で見てはいけないのだと。
グローバル化、それは結構なことですが、今世界で叫ばれているグローバル化の行き着く先は、人類の単一化ではないかと思われてなりません。
それはあまりに傲慢で暴力的な、決して美しくない世界の広がりです。
旧約聖書の「創世記」11章にある「バベルの塔」の物語は、今の人類の傲慢を表しているように思えます。
かつて人類の全てが1つの言語で意思疎通をはかれていた頃、ついには先が天に届くほどの塔を造ろうとした人類に天罰が下り、人々は互いに相手の言葉を理解できなくなって無数の言語に別れ、全ての地に散ったと伝えられます。
暴力的な全は個を殺します。
真のグローバル化は、マイノリティな個の全てを守る意思のもとでなされなければならない。
さもないと、この美しい民族美も、人としての尊厳も、失われてしまうのです。
ただ、この希少な美を守りたいと願う我々フォトグラファーも重々承知しなくてはならないことがあります。
それはこの写真展でヨシダナギさんも同じようなコメントを伝えておられましたが、長く外界に触れることなく守られてきた美は、我々が外界の空気を持ち込むことで破壊してしまうリスクを負う。
例えば彼らにカメラが、メディアが、文化が、それが仮にささやかなアドバイスであったとしても、もたらされてしまった時、彼らの受け継いできた文化に少なからず影響を与えてしまうということです。
それによって明日の彼らは、昨日の彼らとは確かに違ったものになってしまいます。
秘境や聖地を旅する僕も同じです。
そこに足を踏み込めば、確実に何かを破壊しているのです。
僕らが抱えるジレンマ、実は人の好奇心が一番厄介なのかもしれません。
彼女の写真展はとても充実した、素晴らしいものでした。
手頃な入場料にも関わらず、充実した作品の数々に加え、撮影フリーという大サービス。
写真を写真で撮るという暴挙に抵抗を感じつつも、せっかくなのでたくさん撮らせていただきました。
ただ暗いスペースに強めのライティングでしたので、ここに掲載させていただいた写真は、本来の美しいヨシダナギの写真とは随分印象が違っています。
彼女の真に美しい写真はホームページやSNSでたくさん発信されていますので、ぜひそちらでご確認ください。
http://nagi-yoshida.com 【Nagi Yoshida Official Web Site】
https://twitter.com/nagi_yoshida 【Twitter】
https://www.instagram.com/nagiyoshida/?hl=ja 【Instagram】
写真集は購入を随分悩みましたが、かなり高額だったため諦めてしまいました。
立派な装丁と内容ではありましたが、強気な価格設定に、せめて半額であったらと悔やまれます。
私はご存知の通りTV自体を観ないものですからクレイジージャーニーもヨシダナギ氏も知りませんが、大変興味深いですね!
この方はフリーなのですか??
いいねいいね: 1人
フリーだと思います。
オフィシャルページには仕事依頼のページもあります。
が、だいぶ有名になられましたので、TBSや書籍系のしがらみはあるのだと思います。
いいねいいね: 1人