雄山神社:祈願殿

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前立社壇から立山方面へ進む途中、立山連峰の玄関口に「芦峅寺」(あしくらじ)と呼ばれる場所があります。
そこに鎮座するのが雄山神社「中宮祈願殿」です。

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祈願殿は神仏習合の時代、中宮寺・芦峅寺とも呼ばれていました。

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境内には、当時の名残を感じさせるものも見受けられます。

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当社は立山の主峰「雄山」を正面に頂く位置にあり、

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開祖である「佐伯有頼」(さえきのありより)は、この地で晩年を過ごしたと伝えられます。

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芦峅寺の門前は江戸時代から立山信仰の拠点として栄え、住民の名字はそのほとんどが佐伯有頼に由来するという「佐伯」「志鷹」の2姓で占められているそうです。
そのため、住民同士は互いに下の名前や屋号で呼び合うことが多いといいます。

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当地において江戸時代には、「御師」(おし)と呼ばれる人たちが活躍していました。

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御師らは「立山牛王」を配布したり「立山曼荼羅」で縁起を説明したりして、多くの人を霊山立山に呼び、芦峅寺などにある宿坊に泊めさせました。

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御師が携えて全国を回ったという立山曼荼羅は、立山信仰の世界観が凝縮した掛軸式絵画であり、立山の山岳景観を背景に、閻魔大王や鬼などの立山地獄、佐伯有頼の立山開山縁起、阿弥陀三尊の来迎の様子、女人救済儀礼「布橋灌頂会」の様子などが描かれています。
この立山曼荼羅をもって、御師は人々に絵解きを行って立山信仰を広めていったと言われています。

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「布橋灌頂会」(ぬのばしかんじょうえ)というのは女人禁制だった立山参詣の代わりに、当地にある「布橋」を渡って極楽往生を願う伝統儀式でした。
白装束を着た女人らは閻魔堂で懺悔の儀式を行った後、声明や雅楽が流れる中、僧侶に導かれ、煩悩の数と同じ108枚の板で組まれ白い布を敷いた「あの世」と「この世」の架け橋「布橋」を、目隠しをしたまま渡りました。
この時、悪い心を持つものは龍が口を開けて待っている谷川に転落したと云います。

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橋の先にある「うば堂」に入り、暗闇の中で読経を終えると、目隠しが解かれ、陽光に照らされた立山が目前に広がるという趣向で儀式は終わります。

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芦峅寺の信徒・御師らは「一山会」と呼ばれ、薬草や薬紛などを各家庭に配置し、翌年に代金を受け取るという越中売薬の原型も作り出していました。

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御師の末の人たちは現在、立山登山のガイドとして生計を立てる者も多く、時に民間救助隊員として活躍し、「勇敢で登山者を命懸けで守る」と評判なのだそうです。

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「斎戒橋」を渡ると、道が3つに分かれていました。

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真ん中の道は「立山開山御廟」へと続いています。

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立山玉殿岩窟において霊示を受け、立山を開山した佐伯有頼公。
その後彼は出家して「慈興」と号し、生涯を立山信仰を広めるために捧げました。

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有頼公は天平宝字3年6月7日、83歳で当地に入定したと伝えられます。

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右の参道の先には東本殿とされる「立山若宮」が鎮座します。

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若宮は岩の上に鎮座しており、別名「岩の宮」とも呼ばれています。
境内最古の建物で、承久二年の造営。
「刀尾天神」(天手力雄命/あめのたじからおのみこと)、「稲背入彦命」(いなせいりひこのみこと)、「佐伯有頼命」を祀ります。
霊峰立山を登拝する者は、必ず先に当社を参拝するを例としたと云います。

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若宮の手前には須佐之男命を祀る「釼嶽社」があり、これは剱岳山頂に鎮座していた旧社殿を移築したものだそうです。
祈願殿境内は、木村大作監督の映画「劒岳 点の記」(2009年)のロケ地でもあります。

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釼嶽社から伸びる参道があります。

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そこにあるのは「立山開山堂」で「佐伯有頼慈興上人」を祭神として祀っています。

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さて斎戒橋からメインの参道と思しき左の道に入ると、そこに林立する杉並木に感嘆の息がこぼれます。

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樹齢500年あまりの巨木が見守る聖域。

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「閼伽池社」は「高オカミ・暗オカミ神」を祀りますが、背後の池は枯れかけていました。
神仏に供える水を閼伽といい、この池の水を汲み神前に供えたものと思われます。

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ひらけた場所に堂々鎮座する社殿が「祈願殿」。

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明治維新まで「芦峅大講堂」と称していました。

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現在は雄山大神を始め、立山山中36社の神々を合祀し、諸祭儀、御神楽等を執り行います。

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開祖・佐伯有頼が晩年を過ごした当地。

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祈願殿は主峰雄山を正面に頂き、旧暦の7月~9月以外の参拝の厳しい季節には、ここから霊峰に向かって祭祀されました。

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殿内の絵馬には佐伯有頼伝説を物語るものや、

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何故かヤマタノオロチ神話のものもありました。

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面白いのは殿内に社務所があることです。
こちらで御朱印もいただけます。

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祈願殿の隣に「神秘社」または「山神社」と呼ばれる社が建っています。

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祭神は「天御中主神」「高皇産霊神」「神皇産霊神」の造化三神に加え、「大山祇神」と「久々廼智神」。
通称「山神様」と呼ばれ、殊に山仕事に関わる人々の崇敬が篤いと云いますが、ククノチの神が祀られているのは興味深いです。
ククノチ神といえば「宮島で一番美しい木」が思い浮かびます。

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そして杉並木の参道の最奥に鎮座するのが西本殿の「立山大宮」です。

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祭神は「立山権現伊弉那岐大神」(たてやまごんげんいざなぎおおかみ)、相殿に「文武天皇」(もんむてんのう)と「佐伯宿祢有若公」(さえきすくねありわかこう)。
佐伯宿祢有若は開祖有頼の父親とされる人物です。
大宮は、当中宮の末社という扱いながら、本来は立山信仰の中心的社殿でした。
かつては本殿・大拝殿と偉容を誇っていた当社ですが、明治初年、山中よりの落石により、両殿とも失われました。

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不思議なのは祈願殿と若宮は西向き、つまり東の立山山頂に向って参拝する形で建立しています。
が、大宮だけは南に向いており、またメインの参道も、境内最奥の大宮へと向って延びています。
これは祈願殿及び若宮に祀られるのは後世の修験の神であって、これに対し大宮に祀られる神は、当地における古代神道の神ではなかったかと思われるのです。

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