外周4kmほどの小さな炭鉱の島「池島」。
かつてはそこに、8000人近い人々が暮らしていました。
今、池島を歩いてみると、賑やかだった当時の面影を見ることができるのでした。
池島の高台にある炭鉱住宅街の北脇に向かいます。
そこには池島事務所と郵便局があり、
電気が灯って今も人の気配があります。
しかしその先はシャッター街。
ここは「新店街通り」、かつての池島で1番の繁華街です。
電気屋さんだった店のシャッターは、もう開かれることはありません。
雨を避けるアーケードも骨組みを残すのみ。
先にもう一棟ありました。
喫茶店でしょうか、洒落た雰囲気を感じさせる入り口。
ショッピングに訪れる人々の影が見えるようです。
裏手にも店舗があります。
レストラン&喫茶「モナーク」。
「泥酔の方の入場はお断りします」の札が見えます。
「池島ファミリーボウル」。
さほど広くはないスペースに何レーンあったのでしょうか。
ファミリーやグループの歓談の声が今にも聞こえてきそうです。
ファミリーボウルの隣にはスナック「エーワン」と「雀王」。
ここだけは新店街通りで異質な感じがします。
炭鉱住宅群すぐそばの繁華街は、老若男女にあふれていたのでしょう。
今はその生活の匂いを残したまま、全て廃墟と化していたのでした。
池島の繁華街は新店街通りの他にもうひとつありました。
「郷地区」です。
池島の幹線道路から脇道に入ります。
フライアッシュタンクの跡地があります。
先には比較的新しい団地の姿が。
そこに車での侵入は憚られる一方通行の細い路地があります。
のどかな朝の散歩道にも見えますが、そこには
溢れかえる廃墟が。
倉庫のような建物の入り口には、風化したパチンコ台が無造作に積まれています。
倉庫の奥を覗くと、マニアが喜びそうな玉貸機とメダル交換機がまるで夫婦神のように鎮座しています。
別の崩壊した建物には、きちんと並んだシューズ。
パンをくわえた女の子が今にも走り出てきそう。
「郷地区」とは海岸線から高台に向かう斜面にへばりつくようにある集落のこと。
ここは高台にある団地のような堅牢な建物ではなく、木造を中心とした一軒家が軒を連ねます。
故にかなり崩壊も激しく、日に日にその姿は変容しているそうです。
中には奥行き2mもないのではないかという、うなぎの寝床のような一軒家もあり、どのような暮らしが営まれていたのか気になります。
理容「まえかわ」
もう動くことのないサインポールが哀愁を誘います。
こちらはレストランでしょうか、
いなくなった主人の代わりに、残された人形が僕を迎えてくれました。
池島は炭鉱開発以前、300人ほどの漁師が暮らしていたといいます。
この海沿いの一帯はその漁師たちの家々があったのではないでしょうか。
やがて炭鉱が開発されると水質汚染によって漁師たちは姿を消しました。
海辺の小道の先からは、高台に向かって急斜面に家々が連なっています。
「池島小番所跡」というものがありました。
江戸時代の天保元年(1644年)、鎖国制度の強化に伴い、外国船や密貿易を監視するために16ヶ所の番所が設けられました。
ここはそのひとつ。
細い坂道を上っていきます。
このあたりはかつて崖だったそうです。
それが炭鉱初期の掘削物で積み重なり、緩やかな傾斜の土地となったということです。
そうした地盤のせいもあってか、完全に崩壊した建物も見受けられます。
しかし全てが廃墟になっているわけでもなく、新しい車が駐まっていたり洗濯物が干してあったり、いくつかの家屋ではまだ人の住む気配が感じられます。
この扇状地のちょうど中間あたりから下は一般居住区であり、ここから上は
大人の歓楽街が広がっていました。
おしゃれな外灯はパブかスナックか。
このズタボロの建物は、かつてのパチンコ屋の姿だとか。
下にあったパチンコ台は、ここに置かれる予定だったのでしょう。
スナック「千代」、
その向かいにはスナック「マキ」。
このマキさんは2014年2月まで営業していた池島最後のスナックです。
そしてこのマキのお隣にある、ジブリ感溢れるシックな建物。
それはなるほど、旅館「美松」の建物でした。
一般的なサラリーマンの収入の2倍はあったと言われる坑夫たち。
命がけで体力の限りを尽くし、一仕事終えた彼らのあふれんばかりの熱情は、この傾斜地の狭間にて癒されてきたのでした。
しかしそんな古き良き時代の景色も風前の灯火。
そう遠くない先に、跡形もない更地となるのかもしれません。
そこにいた人を思い浮かべると、廃墟そのものの愛でかたが正反対になりますね。色褪せた昔の写真の中の、活気のある人達を見ているような気分になりました。
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池島の場合、緩やかに人が減少したため、廃墟にもまだ人の温もりが強く残っているように感じました。
炭鉱バブルで賑わう、古き良き時代が目に浮かびます。
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なんか懐かしい風景。
レトロだな~^_^
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