その昔、唐の国に遣いに行った貴公子が、織女を伴っての帰国の途中にその女と深い恋仲となりました。
しかしそれは、儚い、かりそめの縁でした。
二人は日本に着いて離ればなれになってしまったのです。
それからというもの貴公子は織女を想い、悲しみの日々を過ごしていました。
と、ある夜、夢枕に天女が立ち、男に告げました。

「もしお前が、織女のことを忘れられないのなら、宗像の中津宮へ行きなさい」

筑前大島の中津宮に来た貴公子は、そこでしばらく時を過ごしました。
星のきれいな夜、 天の川で禊をしていると、なんと水面にあの織女が映っています。
神の導きに嬉しくなった貴公子は、水鏡に映る織女との逢瀬を楽しみに、神仕えの身になったと云うことです。

幾度と訪れた宗像大社の聖地の一つ、「筑前大島 中津宮」。
そこで毎年8月7日に七夕祭があるというので訪ねてみました。

たまたま僕の休暇と重なり、幸運でした。
が、この日は接近する台風の影響か、波風強く、フェリーも大揺れです。
なんとかたどり着いた大島では、早速祭が始まっているようです。

祭会場に向かう前に、まずは中津宮参拝です。

中津宮参道の右手に、「蛭子神社」があります。
手前に「蛭子社」「須賀社」があり、階段の先に「天満宮」と「大歳社」があります。

その奥に、ひっそりと鎮座するのが彦星様が坐します「牽牛神社」です。

中津宮参道の左手には、かの「沖ノ島」と時を同じくする祭祀跡がある、島の最高峰『御嶽山』を源流とする、「天の川」が流れています。

天の川を隔てた先に、ちょこんと鎮座するのが織姫様坐します「織女神社」です。

今回の主役はこの二社ですが、まずは本家「宗像三女神」の次女「湍津姫命」（たぎつひめのみこと）へご挨拶。

中津宮の境内に敷き詰められた丸石は、大島特有の白い斑点のある紫の石。
とても綺麗な石です。

急勾配な石段を昇り、

神門をくぐります。

七夕仕様に飾られた社殿。

いつ来ても心地よい場所です。

古代東出雲の富王家伝承によると、「宗形家」を興したのは、6代出雲王の「臣津野」（オミツヌ）の子「吾田片隅」（アタカタス）であったと云います。

そのアタカタスの娘が、美女と名高い宗像三女神「田心姫」「湍津姫」「市杵島姫」の三姉妹でした。

ちなみに記紀では三女神はアマテラスとスサノオの誓約（うけい）によって生まれたとされています。

ところで大島港の売店で、「祈り星」なるものを購入していました。

袋の中身は、様々なガラスの石が入っているようです。

僕がゲットしたのは、天の川を映し取ったようなきれいなガラス玉。

これを天の川の水で清めると良いと記されていましたが、

社務所の奥に、天の川の聖域「天真名井」がありますので、

そこで清めてきました。
もう薄暗かったので、ちょっと怖かったです。
あと社務所ではこの日限定の御朱印をいただきました。

さて、中津宮向かいにある祭会場へとやってきました。

たくさんの出店が出ています。
九州女子大の学生さんが販売していた「あかもくの餃子」がとても美味しかったです。

あと「宗像の漁師サンド」と「もずくの天ぷら」「甘夏サワー」のセット。

そういえば、港でこの時期限定の「サワラ丼」もいただきました。

ぷりっぷりのサワラがたっぷり乗った、とてもジューシーな一杯でした。

祭会場ではイベントも行われています。

これからブレイクするという、なんとかって人も出演していました。

最後にはご当地豪華景品セットが貰える、じゃんけん大会に、盛り上がります。
が、僕は初戦で敗退でした。

さて、次第に空も暗くなってきました。

牽牛神社の参道にも、火が灯ります。

幻想的な階段を昇ると、

ちょこんと祠が鎮座しています。

中津宮参道も美しさを増しています。

この竹あかりは、伊勢志摩サミットの会場装飾を手掛けた「ちかけん」さんがプロデュースしたものだそうです。

星々や天の川をイメージした竹あかり。

昼間とは違った姿に、湍津姫命もご満悦のようです。

そしてこの日の主役、織姫様へと、天の架け橋も灯ります。

織女神社の前には祭壇が設けられ、

厳かに神事が執り行われます。

鎌倉時代から続くとされる祭り。

「日本書紀」には、呉に赴いて縫工女を得るよう命じられた「阿知使主」が、帰国の際に「胸形大神」の求めで、織女4人のうち「兄媛」を献上したと記されています。

宗像には「織幡神社」もあり、織女に関する、何かしらの歴史的事柄があったことを窺わせます。

神事が終わるとお神酒をいただき、

みんなで奉納の舞を踊ります。

いわゆる盆踊りなのですが、

次第に参加者は増えていき、踊りの輪が大きくなっていきます。
そしてフィナーレの「七夕踊り」を迎えるのでした。