遠野にある「続石」(つづきいし)という奇岩を訪れてみます。
続石は遠野物語にも出てくる名勝のひとつです。
「千葉家曲り屋」を少し下ったところに入り口がありました。
そこから15分ほど山道を歩くことになります。
道はそこそこの傾斜があり、深い森の中を登っていきます。
なにやら開けた場所に出ました。
「遠野物語拾遺」11話、ここには「武蔵坊弁慶」の伝説があります。
「弁慶の昼寝場」とありますが、ひと仕事終えた弁慶が昼寝をした所と伝わります。
ある時、武蔵坊弁慶は「笠石」という平たい大石をこの「泣石」の上にひょいと乗せました。
ところがこの巨石は自分は位の高い石なのに、永遠に他の石の下敷きになるなど残念だと一晩中泣き明かしたそうです。
確かに位の高さを窺わせる存在感ある大岩です。
弁慶はそれなら他の石の上に載せ替えようと「笠石」を別の一対の石の上に乗せ替えました。
それが「続石」です。
「泣石」を横に進んでいくと「続石」が見えてきます。
大迫力の続石。
それはまるで巨大な鳥居のようで、180cmある僕が楽々くぐれるほどの大きさです。
その奥には「山神社」があります。
「遠野物語」91話では、「鳥御前」という鷹匠が、続石の少し上の山に入りこみます。
そこで赭(あか・赤)き顔の男女と遭遇しました。
鳥御前はおどろいて刃物を抜くと、たちまち赭き顔の男に蹴り飛ばされ、気絶してしまいました。
連れに介抱されて家に帰りついた鳥御前は「自分は死ぬかもしれないが、このことは誰にも話すな」と言い残し、三日ほどで死んでしまいました。
山の神たちが遊んでいるところを邪魔したため、その祟りをうけて死んだということです。
続石の奥の山とは、遠野三山のひとつ「石上山」のことです。
続石は神社の鳥居と同じく、下界と異界との境界を示しているのかもしれません。
またこの続石が驚愕なのは、
片方浮いています。
何という絶妙のバランス。
上に乗っている「笠石」は幅7m、奥行5m、厚さ2mで推定120トンとのこと。
ともあれ、自然にたまたまこうなったのか、果たして人為的なものなのか、ドルメン(支石墓)であるという説もあり、
ロマンあふれる「続石」は労して訪れる価値のある奇跡の場所です。
東北の大地震でも落ちませんでした。
「続石」という名は、どこへ続く石だと言っているのでしょうか。
それは遠野ならではの、不思議な神の世界なのかもしれません。