熊本県球磨郡あさぎり町にある「夫婦岩」(めおといわ)を訪ねてきました。
途中、旧須恵村役場近くに「おいちの墓」と書かれた案内板を見かけました。
細道の一角にあったのは、小さな石憧(せきとう)。
正確には、その六地蔵石憧の龕部(がんぶ)が祀られています。
六面のそれぞれには、地蔵菩薩が線刻されており、造立年代は室町時代とみられています。
この石憧は「おいち」の墓で、彼女は室町時代のこの地域の地頭「平河氏」の娘でした。
おいちは、とある家へと嫁いでいったのですが、婚前に妊娠していたことがわかり里に返されてしまいます。
途方に暮れたおいちは帰る途中、自害して果ててしまったのです。
このとき、「魂は後世までとどまり、妊婦をお守りします」と遺言したとされ、以来この石憧は、今も妊婦と子どもの守り神として、多くの人に信仰されているのだそうです。
さて、Googleなmapを頼りに、夫婦岩と表示される場所にやってきました
が、どれや?
これか?
違うやろ、ともう一つ別にマップに夫婦岩と表示されている場所へ向かいました。
すると、おお、
かすかに夫婦岩神社と読める、素朴な鳥居が。
これだー!
山に向かってぐいぐい車を走らせると、
あったー、ありました、
なんかトドのような磐座が…
角度を変えて見ると、なるほど夫婦が支え合うような形になっています。
でも本当はこっちが「婦」で、
ちょっと下ったところにある子岩が
夫でしょうね。
見事なサイノカミです。
『あかねさす 白髪のすその 岩しみず 乙女の胸に 清く宿らむ』
夫婦岩の案内板には次のように書かれています。
「上村の象徴である白髪岳の麓に夫婦岩がある。かって村の男たちは、五穀豊穣を祈るためにこの白髪岳に登った。七号目あたりにある水口より聖なる水をもらい受けるためである。
彼らがこの水をたずさえて山を下ってくる頃には、着飾った娘たちが酒迎えをしてくれる。焼酎、肴、歌に踊り、座は一段と賑わいを増して行き、いよいよ歌垣がはじまる。
若者が娘の気を引くように求婚の意をこめて歌いかける。娘は待ち望んだように承諾の意をこめて歌いかえす。
はるかに遠い昔の若者と娘は素朴でおおらかな歌垣の中で結ばれた。ここにたたずむと時代を超えて今にも彼らの歌が聞こえてきそうな気がする』
と。
なんとロマンティックな案内板でしょうか。
五穀豊穣を願って白髪岳に登った男衆を、女たちは着飾って、この夫婦岩の側で酒を用意して帰ってくるのを待っていたのでした。
そしてここで、たくさんの愛が生まれたのです。
夫婦岩の穴をくぐり抜けたところには、何もありませんでした。
この白髪山には、熊襲が住んでいたと伝えられています。
では、この夫婦岩は熊襲の祭祀跡なのでしょうか。それにしては出雲的です。
白髪とは白神なのでは、とふと思いました。
白山信仰と繋がりがあるのか。
結局のところは、よく分からないのでした。
CHIRICO様 いつもありがとうございます。
夫婦岩の案内板、素敵ですね。男女のおおらかな交流の場でもある歌垣・・・本当にロマンを感じます。
六地蔵石幢ですが、遠く離れた当地にもあるのです。文化の繋がりって面白いものですね。2012年に発見された六地蔵六面石幢ですが、貞和5年(1349)の文字が刻まれていることから、国内最古のものとされているようです。でも残念なことに、この石幢にまつわる伝承は残っていないようです。何らかの物語が伝わっていれば、もっと早くに認識されていたかも知れません。単なる石であっても弘法大師が腰掛けた石、丹生明神が座って休まれた石とかいって大切に後世に伝えられているように・・・。そう考えてみると、伝承ってとても意義のあるもののように思えてきました。そうそう、文化の繋がりと言えば石垣島で見た「石敢當」ですが、それと同じような「破除石」を奈良県で見つけたときの感動を思い出しました。
asamoyosi
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asamoyosi様、こんにちは。
六地蔵石幢が奈良にもあるのですね。
福井の足羽神社境内の隅に「六地蔵宝塔」というものがあり、石幢と同じものであろうと思われます。
こちらは元禄14年(1701年)に松玄院第八世諶応等が開眼導師となり、常陸国真壁郡小栗庄下館の真誉諶入が建立したと伝えられています。
中央に摩尼車のような六角形の木製車輪が嵌め込まれており、これを回転させると災難から免れるのだそうです。
破除石は検索しても出てきませんね、ちょっと気になります😊
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CHIRICO様
六地蔵六面石幢は橋本市高野口町嵯峨谷にあります。言葉足らずでごめんなさい。
それと「破除石」は間違いで衝の字が抜けていました。正しくは「衝破除石」または「衝波除石」でした。御所市の散策で見つけました。
「衝」の字を飛ばすなんて、我ながらショック(衝撃)を受けています。重ね重ねのごめんなさいです。
どちらも私のブログに載せてありますので、よろしければどうぞ・・・。
asamoyosi
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それぞれの記事を拝見しました。
橋本市の六地蔵六面石幢は風化も少なく、このような貴重な文化財が残されていることに感動ですね!
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