高蔵寺:語家~katariga~ 06

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千葉県木更津市にある真言宗豊山派の寺院「高蔵寺」(こうぞうじ)を訪ねました。
当院は「藤原鎌足」(ふじわらのかまたり)出生に深い関わりがある寺院と伝えられていました。

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山号は平野山(へいやさん)。本尊は聖観世音菩薩であり、坂東三十三観音霊場第30番札所でもあります。

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用明天皇の代(585年~587年)に徳義が小像の観音菩薩を感得して寺を建立、この観音像は、行基が刻んだ観音像に納められていると云います。

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通称は「高倉観音」(たかくらかんのん)。

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昔、上総国馬来田・矢那郷の有力者・猪長官は40歳あまりになっても子ができませんでした。
そこで高蔵寺の観音に願をかけたところ、娘が生まれたと云います。

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その娘は観与子と名づけられ、大切に育てられました。
しかし観与子も年頃になっても良縁がなく、嘆いていました。
そこで彼女も高倉観音にすがったところ、「鹿嶋に行って、日天を拝みなさい」との夢告がありました。

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観与子が夢告の通りにしますと、鹿島の豪族の血を受け身ごもったと云います。
そして実家で生れ育った息子が鎌足だったのでした。

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『鎌足家伝』によると、彼は鹿島豪族家の「字は中郎」と書かれているので、次男だったことが窺えます。
『君津郡史』によると、鎌足の父母は各々が地方の国造の子孫で、両家とも太臣家の血をひいていたと云われています。
つまり鎌足と太安万侶は互いに海部系太家の血縁であり、親戚の間柄であったと言えます。

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太臣家の祖は「神八井耳」(かんやいみみ)と伝えられています。
彼は大和王朝初代大君「天村雲」(あめのむらくも)の皇子でした。

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天村雲は海家(海部家)の出身でした。
2代目大君には次男の「沼河耳」(ぬなかわみみ)が就任しましたが、その兄が神八井耳と伝えられます。
天村雲大君の后は東出雲王家・富家の事代主(八重波津身)の娘・蹈鞴五十鈴姫ですので、藤原鎌足は出雲王の血を引いていることにもなります。

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鎌足はこの高倉観音を深く崇拝し、七間四面の本堂や阿弥陀堂、三重塔、鐘楼などを建立したと伝えられます。

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境内には、大化の改新後の650年7月に鎌足が腰を下ろして休息したと言われる腰掛石や、鎌足が着替えをして衣服をかけた杖が根付いて花をつけた鎌足桜などの伝承も残されています。

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鎌足は中臣家の養子となり、中臣鎌足として時に手を血に染め、中大兄皇子・天智帝の右腕として暗躍します。
その功をして、鎌足はその死の直前に「藤原」姓を天智から賜りました。
それは道長に「この世をばわが世とぞ思う望月の欠けたることもなしと思えば」と謳わせた、「藤原氏族」一大勢力の始まりであったのです。

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8件のコメント 追加

  1. asamoyosi より:

    CHIRICO様 おはようございます。
    先日の私のブログ「藤原鎌足生誕の地」の中で、鎌足は鹿島の生まれだと思っていたと書いたのですが、やはりそうだったのですね。二人共そう思っていたなんて、どうしてかな、年相応の病気?とちょっと心配していたのですが、まあどこで生まれていようとたいしたことじゃないと確かめることもしなかったのです。お恥ずかしい限りです。CHIRICO様のおかげで自信復活です。ありがとうございました。これからは、面倒くさがらず可能な限り確かめようと思っています。
    追伸:CHIRICO様の「高蔵寺」、リンクさせてくださいね。
                                                 asamoyosi

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    1. CHIRICO より:

      asamoyosi様、おはようございます。
      リンク、ありがとうございます。
      鎌足の出身は、藤原氏の宗廟が鹿島神宮であることを踏まえても間違いありません。鹿島神宮の元の宮司家も多氏(太氏)であるといわれています。
      鎌足は元は鎌子と言い、宮中祭祀を司る中臣家に養子に迎えられました。そして死の直前に藤原姓を賜ったと云います。
      飛ぶ鳥落とす勢いの藤原にあやかりたい人は多かったようで、傍流の多氏や中臣氏も藤原を名乗りたがったようです。それで鎌足の直系以外は藤原を名乗ってはならないという詔を出してほしいと、不比等は文武帝に奏上しています。
      そのようなことから藤原鎌足の誕生の地を名乗る人たちが後世に出てきたのではないでしょうか。
      歴史にはいろいろな人の思惑が絡んでいますので、解きほぐすのは難しくもあり、楽しくもあります😊

      いいね: 1人

      1. asamoyosi より:

        CHIRICO様 
        ご丁寧な解説、ありがとうございます。
        通り一遍の歴史の勉強では、なかなかこういった内情まで理解することは出来ませんよね。
        このことも、私のブログで紹介させていただきました。
        これからもよろしくお願いいたします。
                                  asamoyosi

        いいね: 1人

        1. CHIRICO より:

          恐れ入ります。
          なに分、私も思い込みで話していることもあるかもしれません。
          ちなみに話したかもしれませんが、益田岩船の対になる磐座は、生石神社の石の宝殿だそうです。

          いいね

          1. 匿名 より:

            CHIRICO様 こんにちは。
            益田の岩船と対になる磐座があるのですか。伊勢神宮と対になる神社は和歌山市の日前宮だと思っていましたが、巨石に関してもそう言ったところがあるのですね。生石神社は「おうしこじんじゃ」と読むそうですね。もうご存じかも知れませんが、生石と巨石と言えば和歌山にも生石(おいし)高原に笠石と呼ばれる巨石あります。まだ行ったことはありませんが、近くには生石神社(こちらは”しょうせきじんじゃ”)があるようです。主祭神は大穴牟遲命と少名彦命で、こちらにも巨石がご神体としてあるようです。読み方こそ違え、生石という名前、さらに巨石がご神体、主祭神も大穴牟遲命と少名彦命で同じ。何か繋がりがあるのでしょうか。面白いですね。
                                                               asamoyosi

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          2. CHIRICO より:

            和歌山にも生石という地名があるのですね。
            「石が生まれる」、神戸の生石神社も正にそんな場所で、辺りは古くからの石切場となっています。
            出雲族は山頂付近の大きな岩の下に、王族の遺体を埋葬したそうですから、古い時代に和歌山に移住した出雲族が笠石の下に王族を埋葬し、出雲神を祀った可能性は高いと思われます。

            富氏曰く、益田岩船は推古女帝が祀らせたもので、女神の岩なのだそうです。飛鳥坐神社の陰陽石の超巨大版です。岩船の三つの穴は女性のそれを示し、横の削られた線刻は陰毛なのだとか。ちょっと驚き、そしてスケールの大きな話です😅
            男神の岩がなぜ神戸にあるのかと言うと、物部守屋に命じて、そこの石切場から切り出して筏で運び出す予定だったのだそうです。しかしその直前に討たれてしまい、そのままになっているのだとか。
            どちらも幾何学的な形であり、すぐにそのような形を連想することは難しいですが、生石神社の石の宝殿もよく見ると、確かに男性器のようなくびれや突起がもうけられています。
            面白いですね😁

            石の宝殿の写真はこちらにございます。
            https://omouhana.com/2018/05/20/生石神社:八雲ニ散ル花%E3%80%8075/

            いいね: 1人

  2. mame58 より:

    うちは禅宗ですが、わたしは真言宗が好きです💕だって、お願い事叶えて下さるもの😊

    いいね: 1人

    1. CHIRICO より:

      その人その人に合った、神様や仏様はあるものですね。
      僕には特定の信仰はないのですが、自然の美しさの中にこそ神は在られると思っています😊

      いいね: 1人

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