神に愛される人

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奇しくも僕は、” かみきり ”を生業としている。
人はまた、これを” かみ結い”と呼称する。

美容師の仕事はなかなか壮絶である。
多かれ少なかれ、美容師は皆、最初に手荒れに悩む。
シャンプーをしていると、いつしか指の皮膚の中に小さな水泡のようなものが浮かび上がってきて、猛烈なかゆみに襲われる。
我慢できずに掻きむしると皮膚が裂け、手は体液でベロベロに。
それが乾くと皮膚がバリバリになり、シワというシワが深く割れ、血が噴きだす。
仕事が終わってからも練習は続き、念願のスタイリストになってからも苦悩は続く。
自らの未熟さゆえにお客様を悲しませ、切なく眠れない夜を過ごすこともある。
しかしどんなに辛くても、美容師は泣いてはいけない。泣きたいのはお客様の方なのだから。
そのような時代を経て、スタイリストになって3年ほど技を磨いて、ようやく一人前の美容師となる。
拘束時間は長く、休暇は少なく、収入も決して多くはない。
それでも美容師ほど素敵な職業はない。なぜなら世に少ない、人を幸せにできる仕事のひとつだと信じているからだ。

旅に出かけると世界はいつも、特別美しい姿を僕に見せてくれる。
「オレって神に愛されてるじゃん」などと嘯いてみるが、実は違う。
神は常に遍く、全ての者にその美しい姿を見せている。
勤労の果ての貴重なひとときだから、鋭敏になった感性が、その美しさを捉えているだけのこと。
惰性で生きていると、せっかくの恩寵を取り逃してしまうことになるのである。

美容師の中でも残念なのは、ベテランになり惰性に生きていると、自分こそが美を知っているのだと勘違いし傲慢になる人たちだ。
僕にとって美は神と同義である。故に美に対してはどこまでも畏れ多く、謙虚でなければならない。
時に触れる機会のあるスピ系の多くの人に抱く僕の印象も、この惰性に堕ちたベテラン美容師に似たものがある。
自分こそが神を知っているのだと言わんばかりの風体は、少々傲慢に感じるのだが、それらの人が誰かを幸せにできたという話を僕はあまり聞いたことがない。

時に悩み、時に打ちひしがれ、それでも上を向き、懸命に一歩を歩む人、
それは例えば料理であったり、音楽であったり、絵であったり、etc.
そのような努力、好奇心、向上心、そして情熱に溢れる人こそ、ああこの人の才は神に愛されていると、僕は心から思うのである。

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8件のコメント 追加

  1. 治りが早いのは若い証拠ですよ~(^^♪
    赤ちゃんの傷がすぐ治るのと同じです!!

    いいね: 1人

  2. 美容師さんて、ホントに素晴らしい職業だと思います!!
    カット技術で全然違いますよね!!

    私は、かれこれ20年以上、ずっと同じ人に切ってもらってます。
    オーダーは適当ですが、いつも私のイメージするカット&カラーをしてもらってます(笑)
    技術はもちろんのこと、人としても彼女とはフィーリングが合うようで、とても楽しい美容院タイムを過ごしてます。

    先日、美容院で彼女が言ってたことを思い出しました。
    美容師傷(だったかな?忘れちゃった…(^-^;))左手の中指に傷があるんですよね。
    カットする時につく傷。
    彼女は同業者が偵察で来ることもあるけど、すぐわかるんだよ、その傷があるから(笑)って言ってましたが、そんなとこに傷を作るなんて、やっぱり刃物を使う職業の方は大変だなあって思ったものです。

    時間も不規則だし(昼休憩とかきちんととれないですよね?)、立ち仕事ですごく大変だと思います。
    それでも、続けられるのは「神に愛されてる」からですね(^^)/

    いいね: 1人

    1. CHIRICO より:

      たしかに左手中指は切りやすい所ですね(笑)
      でもどうだろう、僕は傷跡は無いようですが。
      ハサミ傷はv字に切れるんですよ。そして治りが早い。
      良いハサミで切ると、傷もきれいなんですね。刺身と同じです?
      切ったことも気づかないことがあったりします。(いやほんと?さすがに気づくか😁)

      いいね: 1人

      1. あ、そうです。V字カットって言ってました!!

        切ったことに気が付かなくても、その後気づきませんか?
        お風呂でしみたり。。。(笑)

        いいね: 1人

        1. CHIRICO より:

          いや、さすがに痛いです、その場で😄

          いいね: 1人

          1. ですよね…(^-^;

            いいね: 1人

  3. こんにちは、パッチングワーカーです。
    いつもと毛色の違う投稿に戸惑いながら、興味深く読ませて頂きました。
    神様は本当に平等ですよね。
    私ごとで申し訳ありませんが、これでもかと降り掛かる想定外の人生の難所に神を恨んだりもしましたが、なんとか乗り越えた先に素敵なプレゼントを必ず用意してくださる。
    是非、神様と共にたくさんの方々を美しく導き、幸せのお手伝いという素敵な天職を全うして頂きたく。
    いつもの投稿はもちろん大好きでございます。
    読ませて頂きながら神聖な気持ちになっております。
    いつもありがとうございます😊

    いいね: 1人

    1. CHIRICO より:

      パッチングワーカー様、返信が遅くなり、大変失礼しました。
      稀にいただいたコメントが別フォルダに入り込むことがあり、気がつくのに時間がかかりました。

      年がら年中、神様を祀る場所を訪ねておりますが、神とは一体何なのだろうか、と思うことが多々あります。
      いつか私なりの神についても書いてみたいと思いますが、これがまたこじれておりまして😅

      この世界は、結局のところ一生懸命生きていけば、それなりに素晴らしいものだと思います。
      一番自分を不幸にするのは、他人に対する妬みでしょうね。自分にないものを持っている他人がどうしようもなく妬ましい。
      それはお金かもしれませんし、健康かもしれません。時間や仕事、いろいろです。
      でも妬みを振り切って、とにかく自分の持っているものを精一杯使い切ることができれば、きっとそれが一番幸せに近いのだろうと思うのです。

      いいね: 1人

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