「おお、これか」 空に薄く朝日が差し込む頃、太く天に向かって伸びる大木に、藁で編み込まれた大蛇が数人の男衆によって巻きつけられる。 大彦は目を輝かせ、その祭事の全てを見ていた。 「この祭りを一度見ておきたかった」 大和で…
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母木神社:八雲ニ散ル花 荒覇吐篇 04
伯耆国の西部の方には、ホウキ(宝木)という高い神木が生えていた。 「ホウキ」とは、「ハバキ」の発音がのちに変化したものであった。 それで国の名前をつけるときに、そのホウキに当て字して、伯耆の国となった。 鳥取市気高町宝木…
賣沼神社:八雲ニ散ル花 八上恋歌篇 03
騒々しいのは嫌いだわ。 夏を惜しむ蝉の高鳴りも、姫さま、姫さまと騒ぐ家の人たちも。 小川のせせらぎに足を漬けて、私はのどかな曳田の空を眺めていた。 「姫さまー」 また呼んでる。分かっているわよ、あの人が来ているんでしょ。…
白兎海岸:八雲ニ散ル花 八上恋歌篇 02
いつぶりかしら、故郷の海を見るのは。 あの人と初めて会った時も、こんな海風の吹く日だった。 大山の祭りの後に立ち寄ったのだと言っていた彼は、肩にかけていた大きな袋を砂の上に下ろし、海を見ていた私の横に座ってきた。 「やあ…
倭文神社〜健葉槌と下照姫:八雲ニ散ル花 八上恋歌篇 00
一に云はく、二(ふたはしら)の神 遂に邪(あしき)神 及草木石(くさきのいは)の類を誅(つみな)ひて、皆己(すで)に平了(むげをは)りぬ。 其の服(まつろ)はざる者、唯 星の神 香々背男耳(のみ)。 故れまた倭文神 建葉…
宇倍神社:八雲ニ散ル花 番外
武内大田根は足元に転がる蝉の死骸を眺めていた。 蝉は一生のうち、最後の数日にありったけの生を放ち、そして死んでいくのだという。 「私は蝉だ」 彼はこれまでの人生を振り返り、僅かに掴んだ栄華の果てに、終焉を迎えつつあるのだ…
白兎神社:八雲ニ散ル花 海祇ノ比賣巫女篇 番外
大きなふくろをかたにかけだいこく様が来かかるとここにいなばの白うさぎ皮をむかれて赤はだか だいこく様はあわれがりきれいな水に身をあらいがまのほわたにくるまれとよくよく教えてやりました だいこく様の言うとおりきれいな水に身…
赤猪岩神社:八雲ニ散ル花 37
鳥取県西伯郡南部町に、因幡の白兎神話の続きの舞台となった場所があるというので訪ねてみました。 「赤猪岩神社」(あかいいわじんじゃ)には、「大国主」が命を落とし、母の愛と二人の女神の力で生き返った「再生神話」が伝わっていま…
樂樂福神社:八雲ニ散ル花 36
神社の近くに「鬼林山」という名の山があった。 そこには、暴れ回って村人を困らせる「牛鬼」を首領とする鬼の集団がおった。 この地を訪れた孝霊天皇はその話を聞き、早速鬼を退治することを村人に約束した。 天皇は皇子神達や随従の…
蚊屋島神社:八雲ニ散ル花 29
鳥取県西伯郡日吉津村にある「蚊屋島神社」(かやしまじんじゃ)は、斎木雲州氏によると、出雲9代大名持の「鳥鳴海」(トリナルミ)王が祀られた神社であると云うので、訪ねてみました。 松林の風情ある参道を進むと、立派な社殿が建っ…