住吉荒魂本宮〜神功皇后紀 35

忍熊王は明石海峡を眼下に望む、小高い岬の上に立っていた。 「うむ、壮観だ。」 陸地には兵士が隊列を為し、海上には勇壮な軍船が所狭しと浮かんでいた。 「父上の主だった群臣はあちらに付いたようだが、兵士の数では我らが圧倒的だ…

篠崎八幡宮〜神功皇后紀 34

「皇子よ、彼れが穴門じゃ」 神功皇后はついに出発の地へ戻ってきた。 かつては仲哀天皇と在り、今はその息子と居る。 武内宿禰は軍兵をまとめ上げ、いよいよ最後の決戦へと準備を整えていた。 数日前に「洞の海」(くきのうみ)から…

風治八幡宮〜神功皇后紀 33

「おお、立った、皇子が立ったぞ」 どこから見つけてきたのか、皇子はきれいな石を手に遊んでいる。 それを母に見せたかったのだろう、神功皇后の膝に手をかけ、おもむろにつかまり立ちをした。 皇子が初めて立った瞬間だった。 皇后…

大分八幡宮〜神功皇后紀 32

まだ肌寒さを残す頃、梅の花が咲き、桜は固い蕾を膨らませる。 神功皇后らは雪解けを待って険しい峠越えを決行した。 皇后自ら、竹で編んだ籠に紐をつけて背負い、そこに皇子を入れて運んだ。 そうして辿り着いた平地が大分の村だ。 …

筥崎宮〜神功皇后紀 31

「やはり餅は用意できぬか」 やがて年も明けようかという深夜、千代の松原にいくつもの松明が焚かれていた。 煌々と炎が照らす先には深く掘られた穴があり、今まさに、一つの箱がその中に納められようとしていた。 「首尾はいかようか…

宇美八幡宮〜神功皇后紀 30

12月4日のこと、 鳥飼の翁は凱旋された神功皇后のために夕べの御膳を奉仕した。 「ささ、お召し物もこちらへお着替えください。」 男装のまま現れた皇后の身を清めさせ、着物を献上した。 「此度の戦は我が胎内におる皇子のためだ…

筑前一之宮 住吉神社〜神功皇后紀 29.5外伝

博多と春吉の間にある筑前一之宮「住吉神社」。 住吉神社は全国に2129社あり、大阪の住吉大社がその総本社とされていますが、 この福岡の住吉神社は1800年以上前に建てられ、日本最初の住吉神社であるということです。 御祭神…

風浪宮〜神功皇后紀 29

「磯良殿の具合はいかがでしょうか」 武内宿禰は屋敷を世話してもらった水沼の君に問いかけた。 「気丈にされてはおりますが、体の衰弱は著しくございます。」 神功皇后の皇軍は三韓征伐で壱岐からの帰路、嵐に遭った。 兵たちは散り…

能古島〜神功皇后紀 28

「寒い」 冬の始まりに、神功皇后は焚き火の前にいた。 辺りは薄暗く、まだ陽は昇らない。 鎧は脱ぎ捨て、湿った衣服を炎の熱に当てた。 「姫さま、お体はご無事でしょうか。」 近臣の者共が皇后とその胎内の子を気遣う。 「此処は…

慶州〜神功皇后紀 27外伝

10月3日。 神功皇后は和珥津から出発しました。 その時、神は波風を起こし、海原の魚が大小を問わず、ことごとく御船を乗せて進みました。 追い風が大いに吹いて、皇后の船は労することなく、すぐに新羅に到着しました。 やがてそ…

海神神社〜神功皇后紀 26.5外伝

対馬の西側に「木坂山」というこれまで斧を入れていない、太古から受け継がれる聖地があります。 その木坂山の麓にあるのが対馬一の宮「海神神社」(かいじんじんじゃ・わだつみじんじゃ)です。 海神神社の手前にはダイナミックな入り…

胡簶神社〜神功皇后紀 26

(まったくこの男は) 強い紫外線と海の潮による年月が成したのであろう、深くひび割れた身体中を覆うしわは亀の甲羅を思わせた。 そんな肌を持つ安曇磯良が用意した小舟に乗せられて、神功皇后が連れてこられたのは断崖絶壁に奇跡のよ…