『つのさはふ 石見の海の 言さへく 辛の崎なる 海石にぞ 深海松生ふる 荒礒にぞ 玉藻は生ふる 玉藻なす なびき寝し子を 深海松の 深めて思へど さ寝し夜は 幾だもあらず 這ふ蔓の 別れし来れば 肝向ふ 心を痛み 思ひつ…
カテゴリー: 八雲ニ散ル花
高角山:語家~katariga~ 19
『秋山に 落つる黄葉 しましくは な散りまがひそ 妹があたり見む』(137) 「秋の山に落ちるもみじ葉よ、しばし散らないでおくれ。妻のあたりを眺めたいから」 人麿が出発した夕方には、渡津村の東方の空に浅利富士が見えた。そ…
浮布池:語家~katariga~ 18
「お前、今までろくに化粧なんてしなかったじゃないか」 兄は妹の変わりように呆れていたが、そんな言葉などどこ吹く風で、女は一層めかし込んだ。 都風の垢抜けした人麿に女は恋心を抱いていた。 孤独と失意の人麿にとっても渡津の女…
伊柑神社:語家~katariga~ 17
島根県浜田市下府町に「伊甘神社」(いかんじんじゃ)が鎮座しています。 当地は石見国庁跡であると伝えられます。 石見国府が廃止された跡には、小野一族がかれらの祖先である大和6代目大君「国押人」を祀る伊甘神社を建てました。 …
高津柿本神社:語家~katariga~ 16
「高津柿本神社」(たかつかきのもとじんじゃ)は、島根県益田市高津町に鎮座しています。 社名の通り、歌聖柿本人麿を祀る神社で、柿本神社の本社を謳います。 当社創建の由来は、柿本人麿が残した辞世の歌 『鴨山の 岩根し枕ける …
畝尾都多本神社:語家~katariga~ 15
奈良県橿原市に、「畝尾都多本神社」(うねおつたもとじんじゃ)が鎮座しています。 当社は天香久山北西麓に鎮座し、「啼澤神社」「哭沢神社」「泣沢神社」の別名があり、その境内は「なきさわのもり」と呼ばれています。 御祭神の「哭…
大依羅神社:語家~katariga~ 14
『夏影の 房(つまや)の下に 衣裁(きぬた)つ吾妹 裏設(ま)けて わがため裁たば やや大に裁て』(1278) 「夏の木陰がかかった部屋で、妻が衣を織っているよ。もし私のためならば、少し大きめに織ってくれない…
藤原宮趾:語家~katariga~ 13
『やすみしし 我ご大君 高照らす 日の皇子 荒栲(あらたへ)の 藤井が原に 大御門 始めたまひて 埴安(はにやす)の 堤の上に あり立たし 見したまへば 大和の 青香具山(あおかぐやま)は 日の経の 大御門に 春山と 茂…
墨坂:語家~katariga~ 12
土形娘子は妊娠したので、お産のために実家に帰っていた。だがそろそろ産まれる頃なのに、何故か知らせが遅い。 ある夜、墨坂の家で人麿は夢を見た。 夢の中で妻・土形娘子の声を聞いた気がした。 ひんやりと柔らかい、細い指の感触を…
和歌浦:語家~katariga~ 11
「若の浦に 潮満ちくれば 潟をなみ 葦辺をさして 鶴鳴きわたる」 万葉歌人「山部赤人」らを魅了した、和歌浦を訪ね歩きました。 「和歌浦」(わかのうら)とは、和歌山県北部、和歌山市の南西部に位置する景勝地の総称です。 そこ…
葛木倭文座天羽雷命神社:語家~katariga~ 10
「どうしたのですか、こんな時分に」 「いや、姉さんと少し話をしたかったから来ました」 大津皇子は姉で伊勢神宮の斎宮である大来皇女に会いに来た。それは表向きは今後の政権についての相談だったが、死の予感から一目会いたいとの思…
磐余神社:語家~katariga~ 09
奈良県橿原市、神山「二上山」に相対するように鎮座するのが「磐余神社」(いわれじんじゃ)です。 街中にあって広い境内。 長い参道の先に社殿があります。 祭神は「神日本磐余比古命」、つまり「神武天皇」が祀られています。 しか…