
【神遣神社】
遠野の中心地から早池峰山に向う途中の車道わき、
山中にひっそりとあるのが「神遣神社」(かみわかれじんじゃ)です。

森に隠れるようにある社殿は、気をつけて見ていないと通り過ぎてしまいます。

遠野には「三姉妹と母親」の女神の伝説が残っています。
遠野物語では第二話に「神の始」の話として伝えています。

ある時、母娘は伊豆権現のある社に宿をとりました。
そして母は、3人の姉妹にそれぞれ「遠野三山」を与えようと話をします。

遠野三山とは「早池峰山」(はやちねやま)、「石上山」(いしがみやま)、「六角牛山」(ろっこうしやま)のことを言います。
母親の女神は、夜になって夢の精霊が降り立った娘に、最も高貴な早池峰山を与えると約束しました。

その夜、精霊は長女の女神の夢枕に降り立ちましたが、こっそり見ていた末の妹が精霊をつかみ、自分の胸の上に乗せてしまいます。

朝になって精霊は自分の所に降りてきたと主張する末の娘を認め、母親は彼女に早池峰山を与えました。

本当は早池峰山をもらえるはずだった長女には「六角牛山」を、次女には「石上山」をそれぞれ与えられます。

こうして神遣神社の場所から各自別れて、与えられた山へと旅立って行きました。
その後、母親は伊豆神社という所に祀られます。
ちなみに遠野三山に女性が入ると、女神に嫉妬され、さらわれてしまうことがあるといいます。


【石上神社】
次女の女神に与えられたのは「石上山」です。
その中腹に「石上神社」(いしがみじんじゃ)がありました。

侘びた参道をすすみます。

やや小振りな社がありました。

現在の主祭神は剣の神「経津主神」(ふつぬしのかみ)です。
拝殿の柱には、剣をかたどった印が施されていました。
奈良の石上神宮は「布都御魂」(ふつのみたま)をご神体とする剣の聖地であり、神代三剣をはじめとするあらゆる刀剣が祀られています。



【六神石神社】
長女の女神に与えられた「六角牛山」(ろっこうしやま)の麓に「六神石神社」(ろっこうしじんじゃ)があります。

麓とはいえ、細い道の先にあり、アクセスは大変でした。

参道を歩きます。

そこそこ登りがいのある石の階段を上ると、苔がびっしり乗った社が見えます。
神輿殿のようです。

こちらが拝殿。

堂々とした狛犬。

味のある狛犬。

末の妹の謀に早池峰山を逃したものの、六神石神社には長女の風格を感じます。

山の神気をビリビリと感じるところでした。



【伊豆神社】
三姉妹の母親を祀った神社が「伊豆神社」です。

とてもローカルな雰囲気の所にありました。

ここの狛犬はひょうげています。

少し登った所にある本殿。

そこに鎮座する狛犬はとても小さく侘びています。

ちんまい。。

母親と三姉妹の夢の精霊の話の舞台はここのようですが、神遣神社だという説もあるようです。

不思議なことに、この伊豆神社と各遠野三山山頂を直線で結ぶと、それぞれの神社がその線上に鎮座しています。
そして神遣神社も、この伊豆神社と早池峰山頂を結ぶ直線上に位置しています。
そしてさらにこの聖なるラインを見事に横切って、遠野駅を含むJR釜石線が通っています。

意図的な配置なのか、偶然か、ちょっと気になるところです。
