はるか昔、混乱と混沌、戦乱に明け暮れる葦原中国(あしはらなかつくに)。
かつて父母が創り上げた日本の地の惨状を見て、天界のアマテラスは憂いていました。
そこでアマテラスは彼の地を平定するため一柱の神を遣わします。
その神の名は「天饒石国饒石天津日高彦火瓊瓊杵尊」(あめにぎしくににぎしあまつひだかひこほのににぎのみこと)。
略して「ニニギノミコト」です。
アマテラスの孫、いわゆる天孫ニニギは三種の神器と数人の神様を伴って「筑紫の日向の高千穂のくじふる嶽」に降臨するのですが、この場所を巡って幾つか論じられている場所があります。
主力説となる場所は2つ。
宮崎県高千穂の「くしふる峰」。
もうひとつは鹿児島県霧島にある「高千穂峰」。
そんな天孫降臨の地「高千穂峰」を御神体とする宮が「霧島神宮」です。
主祭神はニニギノミコト。
が、この「霧島神宮」はたびたび火山による火災で焼失しており、現在は森深い安全な場所に移設されてます。
そして元あった場所は「古宮址天孫降臨神籬斎場」(ふるみやあとてんそんこうりんひもろぎさいじょう)として現在も聖地として祀られています。
先ほどから写真にあげている場所が「古宮址」です。
「高千穂河原」と呼ばれることもあり、「天孫降臨御神火祭」が毎年11月10日に行われています。
現在は社殿は無く、小さな祭壇があるのみの場所。
しかし気の置けない何かを感じる、そんな場所なのです。
霧島神宮へやって来ました。
一ノ鳥居、ニノ鳥居と抜けていきます。
遠くには雲海が見えていました。
三ノ鳥居の先には本殿。
国家に謳われる「さざれ石」もあります。
参道を進むと、やがて社殿が見えてきました。
鬱蒼とした杜に囲まれて、焼失と再建を繰り返してきた社殿です。
御神木は「霧島メアサ」と呼ばれる杉の大木。
樹齢800年、樹高38.2m、南九州の杉の祖にあたる霧島杉です。
パワーの強い御神木との評判も高い。
ある一角から御神木を望むと枝に神様のような、神官さんのような影が見えます。
早朝の神社は気持ちが良いです。
ひときわ冷たい手水の水も気を引き締めます。
風が爽やかに駆け抜ける。
皇居、富士山、伊勢神宮とつながる「レイライン」上にあるという「霧島神宮」。
その威光はとても素晴らしいです。
しかし霧島神宮の真髄は裏の森にありました。
本殿左手からまずは旧参道に降りてみます。
霧島七不思議のひとつ、「御手洗川」(みたらしがわ)がありました。
11月から4月ごろまではほとんど枯れて、5月ごろから大量の水が湧き出ると云います。
天孫降臨の際、天ノ川から持ってきた「天真名井」(あめのまない)がまじっていると伝わります。
そばには「鎮守神社」があり、
横には霧島六所権現の祖「性空上人」の墓もあります。
旧参道は古い石の階段で、趣を感じます。
神様との約束を破った亀が石になったと伝わる「亀石」も霧島七不思議のひとつ。
旧参道を登り本殿方向へ戻ります。
今度は本殿手前から森の方へ向かいましょう。
森へ足を踏み入れると、そこはきらびやかな本殿とは別世界が広がっていました。
深い森の中にあるのは「山神社」。
鳥居をくぐり結界の中へ。
強い神気の中でたたずむ小さな祠。
大木の生気が生々しく降り注いでいます。
溢れ出す生気で、辺りは満たされています。
森の生命力に、畏敬の念を感じずにはいられませんでした。