大原三千院

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「京都大原三千院 恋につかれた女がひとり」
この「恋につかれた」は「疲れた」ではなく「憑かれた」のだとか。
ほう。

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てなことで、人生に疲れたおっさんがひとり、行ってきましたよ大原三千院♪

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三千院に向かう道は「大原女の小径」(おおはらめのこみち)と呼ばれ、寂光院~三千院・勝林院を結ぶルートとなっています。

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大原女(おおはらめ)は、頭に「柴」(しば)を乗せて、京の町へ行商に出かけた大原の働く女性のことです。
大原女の服装は時代を遡ると、平安時代、寂光院に穏棲された建礼門院に仕えた阿波内侍(あわのないし)が着ていた衣装がその原型と言われています。
大原観光保勝会

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バス停、及び駐車場から三千院までは長い坂道を、お漬物屋などを見ながら上って行きます。

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涼を届けてくれる、小川のせせらぎ。

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三千院門跡と掲げられた石碑のある階段を上ると

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みたらし団子屋さんやお食事処が軒を連ねます。

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石垣に囲まれた玄関口「御殿門」(ごてんもん)にたどりつきました。
まるで城のよう。

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拝観料をチャリンチャリンして中に入ります。

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三千院(さんぜんいん)は天台宗の寺院で、山号は魚山(ぎょざん)。
薬師如来を本尊とし、三千院門跡とも称されます。

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三千院は8世紀、最澄の時代に比叡山に建立された円融房に起源を持ち、後に比叡山東麓の坂本に移されますが、その後も移転を繰り返し、1871年(明治4年)に現在地に移されました。

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一方、境内にある「往生極楽院」は、平安時代末期の12世紀から大原の地にあった阿弥陀堂にあったもので、

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三千院と往生極楽院は元来は別々の寺院となります。

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元永元年(1118年)、堀河天皇第三皇子「最雲法親王」が三千院に入寺しました。
これが当寺に皇室子弟が入寺した初めといわれています

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以後、歴代の住持として皇室や摂関家の子弟が入寺し、護良親王(尊雲法親王)も入寺しました。

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保元元年(1156年)、大原に政所(まんどころ)が設置されることになります。
これは、大原に住みついた念仏行者を取り締まり、大原にそれ以前からあった来迎院、勝林院などの寺院を管理するために設置されたものといわれています。

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大原は古くから貴人や念仏修行者の隠棲の場として知られていました。
藤原氏の権力が絶大であった頃、文徳天皇の第一皇子である惟喬親王は皇位を藤原良房の娘・藤原明子の子「清和天皇」に譲り、自らは出家して大原に隠棲しました。

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大原の政所が「三千院」と呼ばれるようになったのは1871年(明治4年)のこと。
梶井門跡の持仏堂の名称「一念三千院」から取られました。
これは「心のわずかな働き(一念)の中にも、この世のあらゆる要素(三千)が備わっている」という意味になります。

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三千院の奥には「音無の滝」(おとなしのたき)があります。
良忍上人はじめ、家寛、湛智など代々の声明法師がこの滝に向かって声明の習礼をしたと伝えられ、初めは声明の声が滝の音に消されて聞こえず、稽古を重ねるに従って滝の音と声明の声が和し、ついには滝の音が消えて、声明の声のみが朗々と聞こえるようになったと云われています。

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三千院から勝林院へ向かう参道の右手に「大原陵」(おおはらのみささぎ)があります。
鎌倉時代に承久の変で隠岐に流された第82代・後鳥羽天皇の陵墓であるとされ、また、佐渡に流されてた後鳥羽天皇の第三皇子、第84代・順徳天皇の陵墓も治定されています。

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「勝林院」(しょうりんいん)は天台声明(しょうみょう)発祥の寺。

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阿弥陀如来を本尊とする当院は「問答寺」、「証拠堂」とも呼ばれます。

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承和2年(835年)に円仁(慈覚大師)によって開かれたと伝えられ、唐で経典などに独特の旋律を付けて唱える声明を学んできてた円仁はこの地にそれを伝えたとされます。

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しかしその後寺は荒廃、長和2年(1013年)寂源によって復興され、勝林院が建立されました。

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文治2年(1186年)には法然と顕真などによる宗論、いわゆる「大原問答」がこの寺で行われました。
顕真らは法然に12の難問を投げかけていきますが、法然はそれらに対して念仏によって極楽浄土へ往生できることをはっきりと示したといいます。
その時、本尊の手から光明が放たれ、法然の正しさを証明したと言い伝えられ、本尊は「証拠の阿弥陀」と呼ばれるようになりました。
念仏すれば誰でも極楽浄土へ往生できることを知った聴衆たちは大変喜び、三日三晩、断えることなく念仏を唱え続けたのだそうです。

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三千院の参道奥にある「宝泉院」(ほうせんいん)、そこは勝林院の僧坊の一つになります。

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2005年(平成17年)に完成した枯山水庭園の宝楽園は、庭園作家の園冶(えんや)が造園しました。

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宝泉院では一服の抹茶と茶菓子を頂くことができます。

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廊下の天井は、慶長5年(1600年)に伏見城で自刃した徳川家康の家臣鳥居元忠らを供養するため板間を使用しており、血天井とよばれています。

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奥の間に通されると、そこには素晴らしい庭が望めました。

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盤桓園(ばんかんえん)と名付けられたその庭は「立ち去りがたい」という意味を持ち、書院の柱や鴨居を額に見立てて鑑賞することから「額縁庭園」とも呼ばれています。

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樹齢約700年の「五葉の松」は、樹高は11m、枝張りは南北11.5m、東西14mで三上山(近江富士)を象ったとされています。

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高浜虚子はこの松を「大原や 無住の寺の 五葉の松」と詠み称えたということです。

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京の都の隠れ里、大原。

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最近は嵯峨野嵐山は竹林ばえリストで、宇治は抹茶パフェリストで溢れ、侘びも寂びも失われて久しいです。
しかし大原にはまだ、古き良き京都が残っているよう、そんな気がします。

疲れたおっさんもひとり、大原で隠棲したいとちょっぴり思った初夏の日でした。

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11件のコメント 追加

  1. ヒフミヨは天岩戸の祝詞かな より:

    女ひとりの旋律で、京のヒフミヨ巡りにて、数の言葉ヒフミヨ(1234)を大原問答の想いに・・・

    「女一人」の替え歌

      一(i²×i²)の一切

     京都 大原 勝林院
     一に憑かれたアイ(i)一切
     祖父母で紡ぐDNAの帯が
     池の水面にアイ(i)映す
     京都 大原 勝林院
     一に憑かれたアイ(i)一切

     京都 栂ノ尾 高山寺
     一に憑かれたアイ(i)一切
     あるべきようはの廻る帯
     天竺夢の石だたみ
     京都 栂ノ尾 高山寺
     一に憑かれたアイ(i)一切

     京都 嵐山 天龍寺
     一に憑かれたアイ(i)一切
     禅の公案 〇△□の帯
     瞑想すればヒフミヨに
     京都 嵐山 天龍寺
     一に憑かれたアイ(i)一切

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    1. 五条 桐彦 より:

      ヒフミヨは天岩戸の祝詞かなさん、コメントありがとうございます。
      ヒフミヨというのは初めて聞きましたが、僕にはよく理解できません。
      多くの方が多くの思いで聖地を巡っておられますが、僕はそれで良いと思っています。
      僕はだただた、そこに美しさがあれば、それだけで十分幸せです。

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  2. toshiyu03site より:

    CHIRICOさん、こんにちは、コメント、有難うございます🎵 子供の頃、大阪に住んでました、 京都へはよく行ってました、京都と云う場所は、風情、情緒があります、 なにか、日本の古来の秘密が隠されいる様な、神秘的な魅力があります🐬

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    1. CHIRICO より:

      京都は風情・情緒があり、秘密があって神秘的、おやまあどこかのミステリアスな美女のようですね☺️
      全くその通りだと思います♪

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  3. toshiyu03site より:

    デュ−クエイセスのヒット曲、女ひとり🎵は、小学生の頃、よく歌ってました、作詞は、永六輔さんだったように思います。恋に疲れた女、と、ずっと思ってました、
    その女性は、恋に憑かれた、哀しい女性だったんですネ🎵❗ 勉強になりました、
    有難うございます🎵🐬

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    1. CHIRICO より:

      日本の言葉は難しいのですが、それ故にとても意味深く情緒的ですね♪

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  4. 匿名 より:

    CHRICO様 おはようございます。
    三千院へいらっしゃったのですね。三千院は私が若かりし頃、よく行ったお寺です。お寺の雰囲気も好きなのですが、往生極楽院の勢至菩薩になぜか心惹かれて・・・。学生の頃、三千院の近くにある金比羅山の岩場でロッククライミングの練習をした帰りにも何度か訪れたことがあります。もちろん仕事に就いてからは彼女を案内して、朝早くから車を走らせたこともある思い出のお寺です。最後に行ったのが退職する前ですから、もうずいぶんと昔のことになります。それからいろいろなことがあり、外国人客で京都が溢れているとかで足が遠のいていたところへ、コロナ禍。もう一度行ってみたいお寺ですが、行けるかしら・・・。懐かしいお寺のブログ、ありがとうございました。

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    1. CHIRICO より:

      asamoyosi様、おはようございます。
      三千院もインバウンドの波に押されていたのでしょうか、今回訪れた時は、古き良き大原を感じさせるものでした。
      観光地は寂れて欲しくない、が騒がしくなっても欲しくないと旅行客としてはなんともわがままな心持ちで散策しておりました。
      ロッククライミングなどもされてあったのですね、ちょっと驚きです😊

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  5. Nekonekoneko より:

    血天井とは何ですか?なんだか怖くて悪夢を見てしまいそうだ🐥一体何が天井から吊り下がっているのか…。最後のお食事の写真は流石に京都らしくて凄く美味しそうです。見てるだけでお腹空いた🦑

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    1. CHIRICO より:

      京都の寺のいくつかでは、自害や殺された武士の血が染み込んだ城の床板を、供養のため天井に使用しているところがあります。
      別の寺院でご住職が、「それが血の跡です」と案内してくれたことがあります。
      天井から吊り下がっているのは駕籠です。
      食事の写真は「松門」さんの「八菜ランチ」税込¥2,200です。洛北地方の季節のお野菜をふんだんに採り入れたランチだそうで、とても丁寧に、そして繊細な味付けが全ての野菜にほどこされていました。ボリュームタップリで、野菜で満腹になれたのは初めての経験かもしれません。

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      1. Nekonekoneko より:

        何の呪いの儀式なんでしょうか🐥供養というよりも。いや何で駕籠?よく分かりません🦑「八菜ランチ」はとても美味しそう。¥2,200円は妥当な値段です。京都の高級ランチがお手軽な値段で楽しめる🐣野菜料理は美味しいですね♪

        いいね: 1人

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