
天を覆う、美しい紅葉。

その葉はまるで、天狗のうちわのよう。

そして僕は今、「御碕神社」(みさきじんじゃ)というお社の前に立っています。

シズさんとモモさんに連れられて来たわけですが、またとんでもないところを知ってるよね、このコたちは。

情報は皆無。Googleでは辿り着けない、そんな聖地です、ココは。

トンデモない道を延々と走り、何の案内もない場所の奥に、ひっそりと鎮座しています。
ブログのために場所を再確認しようとしましたが、ゼンリンでようやく御碕神社の名前を見つけました。

すんごい山の中なのに、なぜ”御碕”なのだろう?
ミサキ=佐比売様の”御前”ということなのでしょうか。

この山間の集落の歴史は古く、古来の三瓶山登拝の道筋のひとつにあり、古老の言では鎌倉時代にすでにかなりな集落をつくっていたといいます。
例祭は11月9日で、竜神信仰を伝え、そのやり方には原始的なにおいが漂う貴重な行事なのだとか。

祭典の朝、各農家は稲を二束ずつもって神社のある山の急坂を登り、参拝したあと神前で稲穂をしごいておとし、稲穂を供えたあと稲わらをお祭りの当番の家へもって集まる。この稲わらで、長さ2~3mのワラの竜蛇をつくる。
竜蛇の頭には一年365日、つまり365の割り箸で作った弊串を立てる。

できた竜は神社に運ばれ、古い藁龍蛇の上に重ねて置かれ、新しい竜蛇の出来具合でその年の豊凶を占うのだそうです。
今年11月24日に訪れた時の、この出来立ての藁竜蛇の出来具合はどうだったのでしょうか。
僕の見立てでは、立派に見えましたが。

藁竜蛇は出雲地方ではメジャーでありますが、石見・大田地区では珍しく、しかも信仰となっているものは稀有であるとシズさんは言います。
確かに、確かに。

さらに当社に伝わる珍しい行事ごとが、社の裏手にありました。

これは「酒うらない」と称され、昔は本物の酒を仕込んでいたそうですが、今は大田市七浦の海岸から運ばれた海水に「こうじ」を入れ、それを1.8lが入る瓶に納めてここに埋めてあるのだそうです。
一年後の祭典の時に蓋を開け、向こう一年、豊作であれば水が澄み、大雪になる時は水面が真っ白になるのだと。
昭和38年の豪雪の時は、水面にこうじの玉がぽかり、ぽかりと浮いていたとのことです。

明治5年の浜田地震の前年の祭典では、この瓶が割れたという伝説もあるそうで、まことに不思議な神事です。
11月9日かぁ。参列してみたいな。

御碕神社は300年ほど前に伊勢神宮に出かけた村民が、二見ヶ浦で弊串をもらって帰ってきたのを祀ったのが始まりだそうです。
伊勢の古い祭典様式を伝え残されたものと考えられていますが、御碕の社名といい、三瓶山に関係ありそうな酒瓶といい、竜神といい、謎多き隠れた聖域。
尽きかけていた好奇心が、メラメラと再び燃え始めます。
僕を喜ばせようと連れてきてくれた、シズさん、モモさんに、大いに感謝です。

天狗のうちわーーー納得です!
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でしょ😁
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