
朝倉の「荷持田村」に豪傑の男がいた。
その人となりは強健で、鷹の羽を飾り、朝倉の山々を悠々俊敏に駆け回る。
その様はまるで、大翼で天高く飛ぶ猛禽類のようだ。
鉱山を持ち、刀剣の類を造ることに長けていた。
力と人望もある。
平地の農民からは、米と労働力をたびたび拝借したが、それでも地域では英雄と呼ばれていた。
ある時、大和王朝に貢物を差し出すことをやめた。
馬鹿らしくなったのだ。
「なぜ俺が頭を下げ、いつまでも奴らごときに従わなくてはならない」
そう思っていると、ついに大和から大王直々のご征伐ときた。
自分のテリトリーに、のこのこ現れたやつに得意の矢を打ち込んでやった。
「他愛もない」
その男、「羽白熊鷲」はあぐらをかき、酒を呷った。
油断した熊鷲のそばまで、皇后の大軍が迫っていた。

天皇を祟った神の名を知った神功皇后は、神託の通り、異国新羅の国を攻める決意をします。
しかしその前に皇后にはやらなければならないことがありました。
後顧の憂いを一掃すべく、天皇を死に追いやった「羽白熊鷲」(はじろくまわし)と、
自分を暗殺しようとした土蜘蛛「田油津姫」(たぶらつひめ)を征伐することです。
神功皇后は軍勢を率い、香椎宮から朝倉の「荷持田村」(のとりたのふれ)へと向かいます。

【御陵寶満神社】
香椎を出発した神功皇后らは御笠川沿いに南下します。
大野城あたりにさしかかった時、一つの聖地が見えてきました。
「御陵寶満神社」(ごりょうほうまんじんじゃ)は小さな祠が、ひっそりとあるだけの神社です。

裏には御陵中学校があり、なんとも無造作に祠がありますが、ここは結構すごいところでした。
「玉依姫」(たまよりひめ)がここに来て、亡くなったと言うのです。

玉依姫とは「豊玉姫」(とよたまひめ)の妹で、初代天皇「神武天皇」の母であると記紀は伝えています。
この姉妹は綿津見の龍宮の住人です。

祠の中は小さな鏡がありました。
この聖地で皇后は「玉依姫から姉妹の契りを約束する神託」を得たそうです。


【御笠の森】
「御陵寶満神社」から山田の方へ進んだ道路の脇に「御笠の森」という小さな公園があります。

皇后が進んでいると、いたずらなつむじ風が皇后の笠を奪ってしまいました。
そしてここの森の木の上に引っかかったので「御笠」という地名になったそうです。

困った皇后は森の神様にお願いをします。
そして森の前で舞を奉納すると、笠のひもがひとりでに解けて、笠はひらりと舞い降りてきたそうです。

これから始まる戦の前の、ほのぼのとした話です。


さて、皇后は「羽白熊鷲」討伐に先立ち、「吉備臣」(きびのおみ)の先祖にあたる「鴨別」(かものわけ)に熊襲討伐を命じます。
鴨別はたちまちのうちに熊襲を倒し、皇后軍の士気は高まります。

【大根地山】
いよいよ皇后らは羽白熊鷲の支配する領域へ入ります。
そこは山々が連なる、険しい土地でした。

筑紫野市と飯塚市の間にそびえる山に「大根地山」(おおねちやま)があります。
いくつかの登山ルートがありますが、長崎街道冷水峠(ひやみずとうげ)から登るのが最もポピュラーのようです。

冷水峠登山口には「無名の鳥居」があります。
これは黒田綱政公が大根地山に猟に訪れた時、不測の御霊験を感じ、のちに寄進したものということです。

大根地山は元は羽白熊鷲の根城の一つだった可能性があります。
熊鷲は背振山系から朝倉の山岳地帯に勢力を有していました。
鉱山を持ち、銅の精錬に長け、剣などを作っていたと思われます。
鉱山では事故が絶えず、それゆえに人手が必要なので村から人をさらっていたようです。
米なども奪っていたことでしょう。

皇后軍はまず、この大根地山を攻め落とします。
「大根地山」の名は「大己貴」(おおなむち)が訛ったものではないだろうか、と「河村哲夫」氏は考えます。
「大己貴命」とは「大国主命」「大物主神」の別名です。
神功皇后の重臣に「大物主神」を信奉する「大三輪大友主君」が随行していますので、この山は大友主君が攻め落としたのかもしれません。

この山頂近いところにある烏帽子岩に皇后は腰掛け、下界を見下ろしたといいます。

山頂付近に「大根地神社」がありました。

かなり侘びた風情です。

手水舎付近には、意味ありげに小さな祠が幾つかありました。

霊泉ということでしょうか。

見晴らしは良いようですが、あいにく霞んでいます。

天空に建つ神殿はどっしりと構えています。

大根地山の標高は652m。

また源頼朝が富士山に猟に出かけた時、そこに棲まう千年有余才の神通自在の白狐が富士山からここへ移ってきたと云います。

神功皇后は羽白熊鷲戦を前に、ここに、天神七代、地神五代を祀りました。

神功皇后が主導する、初めての戦です。

本殿の横、裏には沢山の社、祠がありました。

山の中に並ぶ石の祠は、少し異様な雰囲気です。

祖霊社になるのでしょうか。

更に奥に赤い鳥居が連なった階段があります。

朱の回廊が異界へと誘います。

降りていくと「朝日丸神社」とありました。

そこは「奥之院」でした。
大根地山で、もっとも神聖とされる場所のようです。

冷んやりとした空気が漂っていました。



【砥上岳】
大根地山を制圧した皇后軍は次に朝倉方面を目指します。

朝倉軍筑前町にある「砥上神社」(とがみじんじゃ)は砥上岳の登山口麓にあります。
「中津屋神社」(なかつやじんじゃ)とも呼ばれますが、これは皇后がここに陣を張り、「中宿」として駐屯したことが由来です。
「砥上」も、ここで皇后が武器を研がせたことが名の由来です。

砥上神社拝殿です。

愛嬌ある狛犬。

拝殿内の龍の天井画が見事です。

摂社がいくつかありますが、中には人形や石が祀られてます。

脇にちょっと気になる社がありました。

見てみると「天照大神」を祀っているようでした。

近くには高木神の石碑もあります。

拝殿の裏に回ってみると、

「砥上嶽武宮遥拝所」と彫られた石碑があります。
「武宮」(たけのみや)とは砥上岳山頂に祀られた奥宮です。
神功皇后が武神「武甕槌」(たけみかづち)を祀ったところです。

では、その砥上岳を登ってみましょう。

とても雰囲気のある山道が続きます。

森林浴が気持ち良い。

武甕槌神は皇后の重臣「中臣烏賊」の祭神です。
砥上岳も元は羽白熊鷲の根城の一つだったのを、中臣烏賊が制圧したというストーリーが浮かんできます。

竹林が広がっていました。

しばらく行くと、二股に分かれた場所に出ました。
山頂へ向かうルートと外れて、もう一方の道に入ると、山門のように大きな岩が二つ並んでいました。

そこから10分ほど、登っていきます。

「観音塚」という古墳がありました。

こんな山の中に、誰が眠っているのでしょう。

中に入れそうですけど、とてもそんな気になれません。

再び、砥上岳山頂ルートに戻ります。

15分ほど登ると、なにやら神秘的な岩が見えてきました。

「ひづめ石」といいます。

神功皇后が騎乗した時の馬のひづめの跡といいます。

壱岐の「聖母宮」にも似たものがありますが、皇后の馬は、大岩を削るほど力強かったのでしょうか。

苔むした姿が美しいです。

更に進んでいきます。

20分ほど登ると開けた場所に出ました。

「みそぎのはる」と言う場所で、かつては小川が流れていて、皇后は禊をした聖地だそうです。

また10分ほど登ると「さやん神」という場所に出ます。

ピラミッド状に積み上げられた石の上に、男根を象徴した観音様のような石仏が置かれています。

また10分登ると、「かぶと岩」と言う標識があります。

「かぶと岩」が見えてきました。

でかい。
そしてその存在感!
かぶと、と言われればそう見えますが、なんか有機的な造形です。
磐座か祭祀跡か、伝説では皇后が被った兜が岩になったとあります。

かぶと岩まで来たら、山頂はもう一息です。
さらっと書いてはいますが、途中何度も帰りたくなるほど、きつい山道です。

そして山頂が見えてきました。

「武宮」の石板が見えます。

標高496.5m。

眼下には朝倉平野が一望できます。

「武宮」、祭神は「武甕槌」。
「伊邪那美」は、最後に産んだ火の神「火之迦具土」(ひのかぐつち)の炎に焼かれて死んでしまいます。
それに怒った「伊邪那岐」が「火之迦具土」を斬り殺した時に生まれた神が「武甕槌」です。

「雷神」であり、出雲で「大国主」に国譲りを迫った武神で、高天原の最終兵器。
茨城の鹿島神宮で祀られます。

高天原最終兵器までも味方につけた神功皇后、羽白熊鷲包囲網は完成しつつあります。 怒涛の戦乱は目前まで迫っていました。
Questo è ancora un’altro posto stupendo! Mi piace moltissimo! Il verde e il bosco sono sempre presenti!!
Posso chiedere una cosa?
……—-. “手水舎付近には、意味ありげに小さな祠が幾つかありました。” …………….写真19は何ですか?vedo sempre fuori dai Santuari.
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Quando visito il santuario, osservo sempre attentamente i dintorni.
La diciannovesima figura è un luogo d’acqua che dice “手水舎 _Chouzuya” e purifica le mani e la bocca prima di entrare nel santuario.
L’acqua santa sta uscendo nelle vicinanze.
L’acqua scorre verso la “手水舎”.
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心からありがとう
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