
奈良「石上神宮」のそばを流れる「布留川」を上流に向かって進むと、「桃尾の滝」(もものおのたき)があります。

桃尾の滝は古今和歌集で「後嵯峨天皇」や「僧正遍照」が詩に詠んでいたことから、古くから信仰されていた滝と考えられています。

狭い道幅ですが、桃尾の滝の近くまで車で進むことができ、駐車場もありました。

桃尾の滝は高僧「義淵」によって龍福寺が建立され、後に弘法大師「空海」によって真言密教の一大道場として隆盛を誇ったと云います。

現在、龍福寺は明治の廃仏棄釈により廃寺となっていますが、桃尾の滝は変わらず、その姿を残しています。

まっすぐに降り注ぐ、一筋の滝。
まさに霊場にふさわしいその滝は、今でも滝行をする行者が後を絶たないと云います。

落差約23m。

滝壼の左側には鎌倉時代中期に作られた不動三尊磨崖仏などがあります。

岩に力強く線彫りされた摩崖仏。

滝の背後の岩の割れ目にも不動尊が祀られているようでした。



桃尾の滝のやや麓側に「石上神社」と呼ばれる神社があります。

長い石段を登っていくと、

侘びた拝殿が見えてきます。

鬱蒼とした森に包まれた石上神社。

カエルのような石が目に付きました。

狛犬も、長い歳月を感じさせます。

石上神宮の大元は、おそらく布留川の水神を祀った神社であったのではないかと思われます。
それに対し、ここ、石上神社はじっとりとした山の気配を濃く放っています。

このひっそりとした場所にある石上神社は、石上神宮の元宮だと云われています。

人から忘れ去られたかのような佇まいの神社は、それでも自然の風景に溶け込んでなお美しく、ただそこにあり続けるようでした。
