
「所造天下大神命(あめのしたつくらししおほかみのみこと)が狩をされたとき、追いかけられた猪の形がこの郷の南の山に2つある。
また、その猪を追いかけた犬の形もある。
その形はどれも石になっていて、猪と犬とは見分けがつかないように同じ石である。
それが現在でもそのままにあるので、猪(しし)の像(かた)のあるところという意味で『宍道』というのである。」
加藤義成著『修訂出雲国風土記参究』


松江市宍道町にある「石宮神社」(いしのみやじんじゃ)を訪れました。
出雲国風土記にある「所造天下大神命」とは大国主のことを指しているようで、ここに大国主に狩で追いかけられたイノシシが石になったものがあると伝えています。

鳥居の右にあるこの巨石がそのひとつ。

なかなかの迫力ですが、

まあ、イノシシといえばイノシシに、見えなくもなくもない感じです。

もう一体あるというイノシシの石は、鳥居の左側、大木の奥にあります。

なるほど、

ちょっと「乙事主さま」に見えちゃいました。

乙事主さまの奥にも巨岩があります。

この猪の道ということから、「宍道」(ししぢ)となり、それが転じて「しんじ」となったと伝えられています。
しじみが取れるから宍道湖となったと思っていたのは、僕ばかりではないはずです。

「宍」(しし)とは本来、食肉となる動物を指すようで、主に鹿と猪をシシと呼んでいました。
さらに鹿と猪を区別するため、鹿を「かのしし」、猪を「ゐのしし」と呼んだそうです。

ところで拝殿は境内ギリギリに建っており、腰をかがめた時よろめくと、石の塀から落ちてしまいます。
なぜこのようなギリギリに建っているかというと、

後ろに回って見ると、

何かが祀ってありました。

これは「犬石」と呼ばれ、大国主の狩に共した犬の姿だと伝えられています。

この犬石が当社の御神体であり、本殿はなく、直接祀る形になっています。
なので、拝殿はどうしても、この位置になってしまったのであろうと思われます。
同じく宍道町にある女夫岩も、地元では「ししいわ」と呼ばれ、こちらが伝承のイノシシの岩であるという見解もあるようです。
