
和歌山、奈良、三重にかけて幾重にも伸びる道「熊野古道」。
「熊野三山」信仰が古代から中世にかけて高まり、「蟻の熊野詣」と言われるほど多くの人が切れ目なく熊野に参詣しました。

熊野古道は大きく分けて「紀伊路」「小辺路」「中辺路」「大辺路」「伊勢路」の5つがあります。
このうち「小辺路」「中辺路」「大辺路」が世界遺産「紀伊山地の霊場と参詣道」として認定されています。

熊野古道を一つでも踏破しようと試みるなら、数日の日数と相当の体力を要します。
僕はお手軽に熊野古道を体感できるコースを歩いてみることにしました。

それは「中辺路」の「発心門王子」から「熊野本宮大社」を目指すルートです。
まず「熊野本宮大社」からバスに乗り「発心門王子」まで向かいます。
あとは再び「熊野本宮大社」まで緩やかな下り坂を歩いて2時間半ほどで戻ります。

たどり着いた「発心門王子」付近は杉林の中にあり、心地よいところにありました。

「王子社」とは熊野の神様の御子神を祀った社のこと。

熊野古道沿いには「九十九王子」(つくもおうじ)と呼ばれるほどのたくさんの王子社があり、
参詣者は各王子社を巡りながら、またここで休憩をしつつ熊野三山を目指しました。

「発心門」とは山岳信仰の四門修行に由来した言葉で、「聖域への入り口」を表しています。

ひとまずここで心を清め、足を進めます。

このルートは林道と民間道を交互に歩くようなコースになっています。

歩き始めてすぐに石でできた水路の跡のようなものがありました。

のどかな風景が心に染み込みます。

王子社の他にも小さな祠がいたるところにあります。

細長いやつもいました。

民家の間をしばらく歩くと、若い杉が立ち並ぶ山道に入ります。

気が遠くなるくらいたくさんの杉。

しばらく歩くと「水呑王子跡」(みずのみおうじあと)というところに出ます。

「水呑王子」とは「発心門の内の水飲」という意味らしいです。

ここではレトロな廃校が素敵です。

再び深い山道に入ります。

森が深くなってきました。

熊野古道の森は命に満ち溢れています。

杉に囲まれたこの小道も、果てしない数の人たちに愛されてきたのでしょう。

昔の人たちは長い日数をかけ、この祈りの路を歩きました。

道脇の切り株には、そうした祈りの石が積まれ、

そこかしこに、命の芽吹きを感じます。

杉の隙間から、朝日が優しく降り注ぎます。

熊野古道の風物詩の一つが小さなお地蔵さん。

赤い前掛けをかけ、ここを行く人に愛されています。

ふいに民家が点在する場所に出ました。

のどかな山村です。

見事な富士形の山が見えました。

それにしても熊野の山々は深い。

熊野本宮の森「大斎原の森」を伏し拝む。
「伏拝王子」(ふしおがみおうじ)からの光景です。

お茶畑がありました。

またしばらく歩くと

「三軒茶屋跡」に出ます。

実際にお茶屋さんがあり、鮎の干物と栗の渋皮煮をいただきました。

こうした素朴な味を堪能するのも、旅の醍醐味。

ハート型の石を見つけました。

疲れも出てきましたが、せっかくなのでちょっとより道してみます。

「大斎原」の大鳥居が一望できました。
熊野古道を歩いてきた人たちがこの情景を見たときの感動が伝わります。

ゴールはもう近い。

いよいよ本宮手前まで来ました。
最後に「祓殿王子跡」(はらいどおうじあと)にて心身に積もった汚れを祓い清め、聖域へと足を進めました。
