
箱根十七湯の中で最も古い歴史を持つ「湯本温泉」(ゆもとおんせん)は、天平10年(738年)の開湯と伝えられます。
江戸時代には源泉が次々に開発され、今では箱根温泉の玄関口、中心的存在として賑わっています。

湯本温泉街は、箱根土産やグルメ処が集まった散策スポットとして人気です。
定番の温泉饅頭や駿河湾・相模湾で水揚げされた魚介名産、伝統工芸寄木細工や地元グルメ、和スイーツに溢れたストリート。
温泉街ならでは風情ある風景にも癒される町なのですが、いかんせん、この雨。

しっとりと濡れた怪しげなカップルは、そそくさと本日の宿「天成園」(てんせいえん)へとしけこむのでした。

天成園は、春日局の血を引く稲葉氏(小田原城主の家系)の別荘として建てられた「飛烟閣」(ひえんかく)を含む、万葉倶楽部グループに属するホテル。
男湯・女湯共に設けられた屋上天空大露天風呂が人気です。

箱根湯本は早川と須雲川が箱根火山を削り込んだ谷底に発達した温泉街で、泉質は単純温泉、アルカリ性単純温泉、ナトリウム─塩化物泉(弱食塩泉)、ナトリウム─カルシウム─塩化物・硫酸塩泉(含石膏弱食塩泉)、ナトリウム─塩化物・硫酸塩泉(含芒硝弱食塩泉)、ナトリウム・カルシウム─塩化物泉(含塩化土類弱食塩泉)などとなっています。

天成園の中庭には、鯉とアヒルや鴨が住む広い池、そして荘厳な二つの滝があります。
滝の一つは飛烟閣に因む「飛烟の瀧」(ひえんのたき)で、

もう一つは「玉簾の瀧」(たまだれのたき)です。

この玉簾の瀧の上方、105段の石段を登った先に、相模三九郎さんに教えてもらった「玉簾神社」(たまだれじんじゃ)があるのですが、なんと雨のため登拝禁止に!
ああ、この玉簾神社をゆっくり参拝するために、天成園に宿を取ったのに。。。

玉簾神社の御朱印ガチャを回して、さらに玉簾神社キャラの”ぬくぬくさん”おみくじも引いたのに。。
肝心の神社参拝が叶わぬとは。

玉簾神社は九頭竜明神を祀る唯一の分宮であるとのことで、楽しみにしていましたが、雨で滑って怪我をしては元も子もありません。
ここは潔く諦める他なし。
せめて玉簾の瀧の飛沫を浴びて、日頃の穢れでも落としておきましょう。



玉簾神社に参拝はできませんでしたが、天成園に泊まったのが無駄だったということはありませんでした。
玉簾神社は宿泊せずとも参拝できますが、ライトアップされた夜の妖艶な滝は、宿泊者のみが楽しめる醍醐味。
飛烟閣は古くから与謝野晶子なども訪れており、また将棋の名人戦の場としても利用されてきました。
昭和54年(1979年)の「中原誠」対「加藤一二三」王将戦では、玉簾の瀧の音で集中を削がれるというので、旅館側に頼んで滝を止めさせたという”ひふみん伝説”が残されています。
ひふみんの無茶振りに、どうやって滝の水を止めたのか、天成園スタッフの努力がしみじみと偲ばれて趣深いエピソードです。

他にも万葉倶楽部グループならではの、ライブキッチン・バイキング。
にぎり寿司から天ぷら、鉄板焼などなど、かなりクオリティの高い食事を、夕食だけでなく朝食も堪能することができます。

また、聖地としての天成園は、清水アキラのものまねショーが一年にわたって行われたり、「温泉幼精ハコネちゃん」第18話において実名で登場したりといった実績があります。
温泉幼精ハコネちゃん:
温泉街に降臨した、温泉の精霊・ハコネ。
ところが、長く眠りについていた彼女は、外見が幼女になっていた!
たまたま居合わせた高校生・冬哉は、
彼女の本来の力を取り戻すため、協力することになるが……。
温泉街の住人とハコネが巻き起こす、
ドタバタ温泉コメディ!遂にアニメ化決定!!
・・・めちゃ気になる。

さて、翌朝5時にベッドを抜け出した五条桐彦が目指した先は、

魔界。

降り続く雨模様に、いくつかの参拝を断念した僕ですが、ここだけは参拝しておこうと、傘を片手に足を向けました。

箱根湯本は、相模三九郎さんが言われる通り、「早雲寺」(そううんじ)があったり、「須雲川」(すくもがわ)が流れていたり、そこはかとなく出雲を連想させる場所でもあります。
出雲散家か、もっと古い出雲族が関わっている場所なのかもしれません。

今回訪れることができなかった場所は、また来たら良いのです。
雨は雨の、美しい景色を堪能すれば良いだけのこと。そうして雨女とオタク野郎の旅路は、もう少しだけ続くのです。

