隠岐の島町蛸木に鎮座の「神嶋神社」（かみしまじんじゃ）に立ち寄りました。

境内の前に立つ、立派な銀杏の木。

まだ幼い葉は、出づ芽色をしています。

今回の島後へ来て、最初に立ち寄った神社が神嶋神社でした。

「あんたどこから来たん」

「福岡デス」
そんな会話を、地元の奥様と交わします。

神嶋神社の創建は不詳。
祭神は豊玉媛命のようです。

小ぶりながらも、立派な本殿。

地元の方々に大切にされている印象です。

境内には、気になる石がちらほらあります。

妖怪 杯状穴だらけ石。
そういえば、隠岐の島町は「水木しげる」さんのルーツの場所らしいですね。

神嶋の名前に釣られてやって来ましたが、腰掛けられていた奥様にお伺いしたところ、向かいの島が神嶋、というわけでもないようでした。
神嶋と呼ばれる島は、もう少し沖の方にあるのだと。

天気のおかげでもあるのでしょうが、とてものどかな神社です。

木漏れ日の下で、しばらくのんびり過ごしたい、

そんな気持ちになりました。

島後を南から西へ、油井という海岸にやって来ました。
この辺りは島後で最も広い波食棚を形成しており、約2千万年前の日本海が湖であった時代の地層でできているそうです。
冬季の海面低下時にはその地層が浮き出たようにその姿を現し、水平線へ夕日が落ちる頃はウユニ塩湖のような絶景になるのだとか。

さて、この油井の、とある神社を探します。

「あ、通るのね、ちょっとお待ち」
と言って、妖怪 お松さんがクイッと腰を曲げて参道を通してくれます。かわいい。

お目当ての神社は「國吉神社」（くによしじんじゃ）です。

なぜここに来たかというと、千葉の同名社が伊甚（いみじ）系のタケミナカタを祀る神社だったからです。
kanekoさんと参拝して、神様っぽいひとが挨拶してくれた神社でした。

本殿にある丸い木は、太陽かな。
隠岐の神社では、本殿の屋根にたびたび、丸い飾りを見ることがあります。

祭神はタケミナカタかな、と思えば、例の『隠岐島前・島後神社Map』によると、主祭神は大国主となっていました。

しかしおそらく、本来は古事記によって曖昧にされた、事代主の方ではないかと推察されます。

なぜかというと、

道を挟んだ反対側付近に、「美穂神社」があるからです。

美保関の美保神社の真の祭神は、ヌナカワ姫だと思われます。
ヌナカワ姫は大国主の妃だと記紀には記されていますが、本来は事代主のお妃様でした。

しかし、

まあ、荒れています。

こちらの美穂神社は、廃神社になっているのでしょうか。サミシイね。

隠岐の島町いちの繁華街、西郷港がある中町に鎮座の「諾浦神社」（なぎうらじんじゃ）にやって来ました。

階段登ったるでー。

小学校の旧校舎のような拝殿がありました。

祭神はナギラヒメノミコト。

創建は1776年（江戸時代）より以前であると伝えられます。

西郷町、中町では、明治21年（1888年）11月20日（旧暦10月17日）に過失火による大火があり、全市街970余戸のうち、約８割の754戸が灰燼に帰したといいます。
この火災で当本社も焼失しましたが、幸いにもご神体は無事だったとのことです。

翌22年10月17日には鎮火祭を斎行。その後、11月21日に変更し、以来毎年執り行われているそうです。

「あのぅ、すみません。ご祭神のナギラヒメとは、どういったお方ですか？」

「うむむ、わからんのう」

隠岐島あるあるですが、他では聞いたことのない神様が祀られているところが多々あり、その神様の由来について、氏子さんはおろか、神社の方でさえ分からない、というところがほとんどなのです。
これは参りましたな。

しかし諾浦神社は高台にあり、街を8割燃やした大火においてもご神体が守られる場所に鎮座しているということ。

時には避難場所となりうるように、ナギウラの姫君は、この小さな港町をやさしく見守っているのでした。