二ツ岩大明神:たぬカタリ case of 二ツ岩の団三郎

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むか~し、むかしのぽんぽこぽん。
佐渡の山から金がザックザックととれてたころな、島には100匹以上のムジナが棲んどったっちゃ。
中でも、盗賊から新町のおもや屋敷を守った源助ムジナ、
女に化けて船人をだましてからかう相川関の寒戸ムジナ、
和尚と禅問答をするのが大好きな赤泊村徳和の禅達ムジナ、
盗人から田地の水や庵を守った新穂村潟上の才喜坊ムジナ、
このぽんぽこらは、佐渡の四天王と呼ばれていたっちゃ。
その四天王の親分が、東日本のムジナの総大将・団三郎だっちゃ。
団三郎はさぬきの六代目金長も“先生”と呼んで、一目置くほどの存在やった。

団三郎は蜃気楼でなんでも作り出すことを得意とし、時に人を化かして楽しんでいたっちゃ。
自分の住処の穴倉に蜃気楼をかけ、豪華な屋敷に見せかけて、気に入った人間を招き入れたりもしたっちゃ。
悪さもしたが、困った人には金を貸したりしていたんで、村人からは慕われていたっちゃ。
その金は団三郎が人に化けて金山で働いて稼いだものもあれば、金山からくすねて来たものもあったっちゃ。

ある時、団三郎が旅のしなにで出会ったキツネに
「あっしも佐渡でひと山当ててぇ。だんな、どうかあっしを佐渡へ連れて行ってくんなせ」
と頼まれたっちゃ。
団三郎は
「連れて行ってはやるが、その姿ではまずいちゃ。わしの草履に化けなっせぇ」
と言ってキツネを草履に化けさせたっちゃ。
団三郎は坊主の姿に化けて、キツネが化けた草履を履いて佐渡へ渡る舟に乗ったっちゃ。
船は岸を離れて、どんぶらこ、どんぶらこと佐渡に向かって漕ぎ出した。
沖に出てしばらくすると、団三郎は草履を脱いで、ポイっと海に放り込んだっちゃ。
慌てたキツネは必死に泳いで、なんとか元の岸へと命からがら辿り着いたんぢゃ。
すると背後から団三郎の大きな声が響きよる。
「佐渡にぬしらの棲むところはにゃー。どうしても来てぃぁーちゅうのなら、またわしが海に落としてやろう」
キツネはそりゃぁびっくりして、決して佐渡に渡ろうとは考えにゃーようになったっちゃ。
それ以来、佐渡にゃ、ムジナはいるがキツネはおらんのだそう。

そんな団三郎であったが、ある時、若い農夫を見つけ、そやつを化かそうと若い女に化けたっちゃ。
「もし、そこのお人」
女に化けた団三郎は、具合の悪そうなふりをして男に声をかけたっちゃ。
「どうしたんだか?」
「ええ、おいらはそこまで歩いて来たのですが、急にお腹が痛くなって、動けなくなってしもうたっちゃ」
「なるほど、おいやーいけにゃー」
農夫は女を背負って、家まで送ってあげようと思ったんだが、すんっと獣の匂いがしたもんだから
「こやつはもしや、団三郎ではなかか」
と思ったっちゃ。
すると農夫は女を背負ったまま、そのまま縄でしばりつけたっちゃ。
突然のことに団三郎は慌てての、農夫に言ったっちゃ。
「旦那さま、なぜおいらを縄でしばりつけるのか?」
「いやいやおいやー、おめさんがずり落ちねえようにするためだて」
「旦那さま、ちょっと降ろしてくんなせ」
「なぁしてだ、具合がわーりのに、なして降りる?」
団三郎は農夫が降ろさずにいるのでさらに慌てて
「あの……びりたれがしてぃぁーのです」
と答えたんだが、農夫は笑っての
「お前さんのような美しい娘さんのびりたれならぜひ見てみてぃぁーちゃ。わしの背中でしなされ」
と言って一向に降ろさなかったっちゃ。
やがてたどり着いたのは、農夫の屋敷やった。
「ここはどこですの?おいらの家ではありませんが?」
団三郎が女のフリでそう言うと
「団三郎よ、もうお前の正体はわかっているぞ。これに懲りたら、悪さもほどほどにせい」
農夫はそう言って、平謝りする団三郎を散々懲らしめたっちゃ。
以来、団三郎が人を化かすことはなくなったちゅうことじゃ。
ぽんぽこぽんぽこ、ぽんぽこりん。

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佐渡市相川下戸村、佐渡金山などにも程近いまあまあな山中に「二ツ岩大明神」と呼ばれる神社があります。

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一応駐車スペースもありますが、ここまで来ることが不安になる道でした。

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そして横倒しになった由緒書き。

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そう、ここが佐渡貉の大頭領「二ツ岩の団三郎」のお社となります。

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こんな神社、怖すぎやろ。

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参道は100mほどですが、朽ちかけた鳥居が異世界感を漂わせています。

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この鳥居は、願をかけて鳥居を寄進し、成就したら感謝を込めてもう一鳥居を奉納するという風習によるもので、その数が団三郎の霊験深さを物語っています。

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佐渡でいう貉は、いわゆるタヌキのことで、団三郎は佐渡のみならず、東日本を代表するタヌキの大親分だといいます。
スタジオジブリの『平成狸合戦ぽんぽこ』にもその名が語られ、「相川町関の寒戸」、「真野町新町のおもやの源助」、「赤泊村徳和の禅達」、「新穂村潟上の才喜坊」の四天王のほか、100匹を超える名前つきのタヌキの総大将なのだとか。

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ある時、相川の柴町に住んでいた窪田松慶という医師が駕籠に乗せられ、立派な屋敷に連れて行かれました。
すると金屏風のなかから、50歳ほどの主人が挨拶に出てきました。
窪田松慶はその家の子供の刀傷の治療すると、主人はたいそう喜び、酒や吸物でもてなしました。
この主人は二ツ岩の団三郎が化けたものだと伝えられています。

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参道を歩いていると、お堂のようなものがあり、

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中にはびっしりと、小さな地蔵が並べられていました。こわい。

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対面には、絶対にぴりたれたくないと思わせる絶妙な雰囲気のおトイレも完備で、安心です。

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一旦開けた場所に出て、

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その先、

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この異界の先に、本殿があるようですな。
では一緒に沈みましょう。

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ひえ~っ。。

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あたりに妖気が程よく立ち込めて来たころ、

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社殿が見えて来ました。
って、ぶち壊れとるやないかい!

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社殿の横にほっそーい階段があるので、先にこちらへ行ってみます。

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ほっそーい階段の先には、

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二つの境内社、

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かな?

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で、振り返ってみると、ヤバっ。。
この建物、もう限界なんじゃないの??

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とおもって社殿正面へ戻って来たら、めっちゃ生命の危機をアナウンスされていました。
でしょうね。

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戸をそろりそろりと開けて、外から覗き込んでみると、こんな感じ。

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そこに社名の由来である二つの岩があり、間の隙間穴が関の寒戸神社の穴と繋がっているという話ですが、大丈夫。
それはもう、見なくても大丈夫だから。

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団三郎さん、どうかあなたの神通力でクラウドファンディング再建して頂戴。

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Googleマップを見ると、二ツ岩大明神には(山のほう)と記してあって、それで(町のほう)というものもありましたので、来てみました。

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う~ん、シブい。

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さて、佐渡貉の総大将・二ツ岩の団三郎にはモデルがいたという話です。
越後国の商人で明暦3年(1657年)に佐渡金山で用いる鞴(ふいご)の押皮をとるために繁殖用の子ダヌキを売っていた者の名前が団三郎で、後に佐渡で養狸を始め、島民から敬われ、タヌキ自体も氏神のように祀られたのだとか。
しかしながら、佐渡ではむじなのことを「トンチボ」と言うのですが、これは「頓智坊」の意味であり、佐渡貉伝承は神社や寺とのつながりの深さを感じさせます。
四国のぽんぽこたぬきがサイノカミに関係しているように、佐渡貉も修験、いわゆるサンカが関与していると思われます。

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とある話では、関の人が山の二ツ岩をお詣りした時、団三郎から関の寒戸へ届けてほしいと品物を預かり、その礼として銅銭をもらったそうです。
「最後の一文だけ残しておけばどんなに使ってもなくなることはないと、そしてだれにも話すな」と言われたそうで、たしかにその通りであったのだが、あまりの不思議さについ他人に話したところ、この銅銭はただの銅銭になった、ということです。
僕も団三郎から五円玉をもらったことだけは、誰にも話さないようにしなければなりません。
ぽんぽこ、ぽんぽこ、ぽんぽこりん。

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