「五月雨を集めて早し最上川」 ー 松尾芭蕉『おくのほそ道』
山形県の母なる川「最上川」。
日本三大急流のひとつに数えられるこの川は、山形県の美味しいお米や果物を育む、まさに「母なる川」と言えます。
その中流にあたる「最上峡」は、美しい景勝地として、また松尾芭蕉の『奥の細道』の舞台として知られています。
天気の良い日は、船頭さんの舟歌を聴きながら、のんびり川下りを楽しむのもオススメです。
そんな最上峡の奥深くに「幻想の森」と呼ばれる森があります。
近年にわかに注目を浴びているようです。
ただしその幻想の森に行くには、簡単な道のりではありません。
最上川沿いの47号線にある「幻想の森」という小さい看板を目印に、山道に入っていきます。
あとは延々と未舗装の林道を約15分ほど走ります。
路面は砂利で滑りやすく、離合できる場所は限られた超細い林道の一本道です。
天候の悪い日は、行かない方が良いでしょう。
険しい山道を越えて、辿り着けば、確かにそこは幻想的な世界が広がっていました。
幻想の森とは、杉の巨木が立ち並ぶ森の一角でした。
しかしそれは、単に年数を経た巨木があるというだけではなく、唸るように巨体をうねらせた、奇形の杉が林立しているのです。
杉の代表といえば、屋久島の「縄文杉」が有名です。
屋久島の屋久杉は「表スギ」と呼ばれ、太平洋型の杉だということです。
それに対し、幻想の森の杉は「裏スギ」といわれる日本海型の杉になります。
裏スギは葉が垂れるように下向きに付いているため、屋久島の表スギとは一味違った森の風景を創り出してるのだそうです。
森の中心らしき場所に、主のような杉がいました。
圧倒的存在感です。
生きて今にも動き出しそうな造形。
裏スギの群生地としては、京都の「芦生スギ」や秋田の「秋田スギ」などが広く知られていますが、最上峡の幻想の森の杉は、特にその変化に富んだ樹勢に特徴があります。
中には樹齢1000年を超えるものもあると云われ、大きなものになると幹周りが15mを超えるものもあると云います。
不安になるような林道の山奥で、圧倒される巨木の数々に、身震いするような森ではありますが、
足元は木片のチップが敷き詰められ、歩きやすくしてあります。
よほど深いところに入り込まない限り、迷うこともないと思われます。
より幻想的な世界を堪能したいなら、雨上がりの朝など、霧がかった時の方が雰囲気は絶大でしょう。
ただし多分、怖さも増しましです。
30分もあれば、ほぼ一周できる感じでした。
もっと広大な範囲をイメージしていましたが、この奇形樹が群生しているのは、わりと限られた範囲のようです。
『十三人の刺客』や『超高速!参勤交代』、CMなどのロケ地になったことで、にわかに注目を浴び始めた幻想の森。
山形といえば、極めて豪雪激しい地区ですが、その過酷な環境を生き延びて、長い歴史を刻んできた古木のオーラは、強い生命力に満ちていました。