沖縄南部には水の聖域が多い。
さらにその一つを訪ねました。
海岸部の農地に「受水走水」(ウキンジュハインジュ/神名・ホリスマスカキ君ガ御水御イベ)の入り口はありました。
その先はこんもりとした森に続いています。
行き着いた所には、沖縄における稲作発祥の地と伝えられる「御穂田」(ミフーダ)と呼ばれる水田があります。
そこに注ぐ水源の一つが
「受水」(ウキンジュ)です。
受水からは水が湧き出し、おだやかな水流を作っています。
受水のそばには「イビ石」と思われる石が置かれています。
イビ石とは神の降り立つ標識、いわゆる磐座のようなものです。
受水の対面にゴツゴツとした岩が見えます。
これが「走水」(ハインジュ)。
速やかに流れる水と言う意味です。
静謐の中に水が湧き流れる音だけが響いています。
当地は東御廻り(アガリウマーイ)の巡拝地の一つとなっています。
受水走水から元来た道へ戻り、突き当たりまで進むと百名ビーチに出ます。
そこにちょこんと見えている岩。
この岩には「ヤハラヅカサ」と記されているそうですが、潮が満ちて水没しています。
潮が引くと、その全貌が見えるのだそうですが。
これはアマミキヨが海の彼方の異界・ニライカナイから渡ってきて、その第一歩を記した場所を示す目印とされます。
このヤハラヅカサではかつて、国王や琉球の最高神女「聞得大君」が四月の稲穂祭に行幸した場所と伝えられます。
浜の裏手には冒険ロープレを思わせる、巨岩と大樹の世界がありました。
上部へ誘う石の階段があります。
そこにはアマミキヨが仮住まいしたと伝わる「浜川御嶽」(はまがわうたき)がありました。
石垣で囲われた神聖な場所。
当然よそもので、しかも男性の僕は立ち入ることはありません。
背後を振り返ると、岩を這う奇怪な樹の根。
その岩の下には、ここも祭祀が行われたのではないかと思われる空間がありました。
さらに奥から風が吹き込む場所があります。
岩と岩に挟まれた風の回廊。
そこにも寄生するように樹木が根を絡めています。
回廊の幅は人が一人、体を擦りながらやっと通れるくらい。
上を見上げれば、神々しい何かに見下ろされているような感覚になります。
古代琉球人はこの地で何を思い、何を感じたか。
海から吹く風は、ニライカナイの香りがするようでした。