Wikipediaの「濱宮」の項に『紀伊続風土記』の引く『（紀伊）国造家旧記』によれば、神武天皇の東征に際して、日前・國懸神宮の神体「日像鏡」と「日矛鏡」を奉じた天道根命は、最初に紀伊国「加太浦」に来着したと記されていました。
そこから「木本」を経て毛見郷南方の琴ノ浦に浮かぶ岩上に2種の神宝を奉安したと云います。
この加太浦とは現「加太春日神社」であり、木本は現「木本八幡宮」に比定されるそうで、それぞれ訪ねてみます。

最初に訪れた「加太春日神社」（かだかすがじんじゃ）は、人形奉納で有名な「淡島神社」の近く、港町の狭い路地裏にありました。

延喜式神名帳の記載はない村社ですが、「紀伊国神名帳」 に「正一位春日大神」と記されています。

祭神は、主祭神として「天児屋根命」「武甕槌神」「経津主神」を、配祀神として「天照大神」「住吉大神」を祀ります。

その他狭い境内には、数々の摂社が祀られていますが、それぞれの祭神に関連性はあまりみられないように思えました。

当地はもともと航海安全と大漁を祈願するために「住吉大神」が合祀されたものと見られ、中世には「住吉神社」とも称されていたそうです。

「紀伊風土記」によると、日野左衛門藤原光福が地頭としてこの地を支配した時、自分の祖先神である春日三神を新たに祀り、総名として「春日社」と称したとあり、現社名の元となったようです。

役小角が友ヶ島を行場とし、当社を勧請して守護神としたという話も伝えられていました。

続いて「木本八幡宮」（きもとはちまんぐう）へ。

和歌山市宮山、厳橿山（いつかしやま）と称する小山の麓に鎮座します。

小さな祓戸があり、

その先に、結構な階段が連なります。

当社の祭神は八幡宮よろしく「応神天皇」「神功皇后」そして「日孁大神」となっています。

社伝によると、天道根命が日前・国懸両大神を厳橿山の橿の木の根本に奉安して祀ったのが起源と伝えており、

このことより「木本の宮」、地名を「木（ノ）本」と名付けたと云います。

階段が続く参道は、杜の木がよく繁り、とても心地よい。

当地には、神功皇后が三韓征伐を終えて凱旋の途次、麛坂・忍熊両皇子の乱のために誉田皇子（後の応神天皇）が武内宿祢とともに当地に上陸して頓宮を営み、暫時滞在して難を逃れたという話が伝えられており、八幡宮として祀られることになった所以としています。

拝殿より少し下った場所には様々な末社群や、

遥拝殿が鎮座しています。

見上げた先には立派な社殿が。

狭い敷地に迫るように建てられ、

全貌をフレームに収めるのは困難です。

今はこの厳橿山の麓一帯に住宅街が広がっていますが、往古は山麓直下まで海岸線が迫っていたそうです。

海を見下ろす当地が、往古の人々に神々しく見えたことは間違い無いでしょう。
当社には「梯子獅子」（はしごしし）と称される有名な「木ノ本の獅子舞」（県指定無形民俗文化財）が今も受け継がれていました。