島根県東忌部町宮内、そこは忌部の里と呼ばれ、忌部川のそばに「忌部神社」（いんべじんじゃ）がありました。

忌部氏といえば、玉造に所縁ある氏族ですが、若い女性の参拝客で華やいだ玉作湯神社に比べて、当社はやや侘びた風情があります。

当地は、富家の分家の「太玉命」が住んでいたと云います。

太玉の名は、勾玉を造ったことに依るそうです。

彼は東出雲王家の事代主の息子「クシヒカタ」に従って、大和の葛城へ移住しました。
日本書紀にも、「忌部首の遠祖、大玉」の記述が残っています。

由緒によれば、当社は明治期まで、大宮神社と称して天太玉命を主祭神としたとあります。

創建は平安期で、天照大神を日御碕から、天児屋根命を春日大社よりそれぞれ勧請し、忌部神戸の神社の総社としての地位占めてきたそうです。

拝殿内はとても清浄でした。

太玉命は大和でも玉を造り続け、大和朝廷でも重要な役職を得るようになっていきます。

忌部氏はのちに宮中祭祀を受け持ち、役職を首（おびと）から連（むらじ）へ、さらに物部族の重鎮に与えられる宿祢（すくね）ヘと昇位しました。

そして平安期には、苗字を斎部と改めます。

境内には様々な摂社が祀られています。

その神跡を見渡すと、出雲王国の名残を色濃く残しています。

さらにそれら摂社の奥には、とても神秘的な杜がありました。

杜の中は散策できるようになっています。

神社の隣は小学校になっていますので、昼下がりには子供たちで賑わうのでしょうか。

宮中祭祀を任されるようになる忌部氏ですが、後に台頭してくる渡来系「中臣氏」によってその座を奪われてしまいます。

故に忌部氏は、現代に謎多き氏族へとなっていったようです。