高天原爾神留坐須
神漏岐神漏美乃命以知氐
皇親神伊邪那岐乃命
筑紫乃日向乃橘乃小門乃阿波岐原爾
禊祓比給布時爾生坐世留祓戸乃大神等
諸々禍事罪穢乎
祓閉給比清米給布登申須事乃由乎
天津神地津神八百万神等共爾
天乃斑駒乃耳振立氐聞食世登
畏美畏美母白須
– 天津祝詞「禊祓詞」 –
高千穂の神漏岐山のふもとに「荒立神社」（あらたてじんじゃ）があります。
荒立神社はニニギノミコトの道案内を務めたと記紀に記される「猿田彦命」（サルタヒコノミコト）と、彼に嫁いだ「天鈿女命」（アメノウズメノミコト）の夫婦神を祀っています。
近年では「夫婦円満」や「芸能」のご利益ありと高千穂通の人気のスポットになっています。
こちらの宮司さんは「猿田彦命」のメッセージを伝えることができるという噂で、お会いするのにいつも予約で一杯だそうです。
中には著名人も会いに来るという噂。
猿田彦…そう、サルタ彦、です！
興味深いのは、荒立神社の宮司家は「興梠」姓の方であり、当社は「興梠」一族の氏神として、祭祀されて来たと云います。
「興梠」姓は高千穂から阿蘇方面一帯に見られ、特にこの宮尾野地区で多く、当地は「こうろぎの里」「こうろぎの内裏」と呼ばれていたそうです。
荒立神社の境内に足を踏み入れると、里宮に訪れた時のようなノスタルジーを感じます。
この興梠という姓、それは「神呂木」（かむろぎ）に由来すると伝えられます。
神呂木とは「神漏岐」のことで、神社や神道流派によって多少違いがありますが、祭祀において最初に奏上する最も一般的な祝詞「天津祝詞」にその名が出てきます。
高天原に神留坐す（たかあまのはらにかむづまります）
神漏岐神漏美の命以ちて（かむろぎかむろみのみこともちて）
皇親神伊邪那岐の命（すめみおやかむいざなぎのみこと）
筑紫の日向の橘の小門の阿波岐原に（つくしのひむかのたちばなのをどのあはぎはらに）
禊祓給ふ時に生坐せる祓戸大神等（みそぎはらひたまふときにあれませるはらへどのおおかみたち）
諸々禍事罪穢を（もろもろまがごとつみけがれを）
祓へ給ひ清め給へと申す事の由を（はらへたまひきよめたまへとまをすことのよしを）
天つ神地つ神八百万神等共に（あまつかみくにつかみやほよろづのかみたちともに）
天の斑駒の耳振立て聞食せと（あめのふちこまのみみふりたててきこしめせと）
畏み畏みも白す（かしこみかしこみもまをす）
「大祓詞」（おおはらえのことば）では更に濃い内容の祝詞が述べられますが、両祝詞の冒頭に登場する共通の神「カムロギ」。
それによると、国生みを成したイザナギ・イザナミの神を生んだ神がカムロギ・カムロミであると述べています。
つまり、「神呂木＝神漏岐」という神は、イザナギ・イザナミより先に存在した、原初の男神となります。
興梠姓の方々は、当地にかなり古くから居た、一族の末裔なのです。
サルタ彦の声を聞く、興梠姓の宮司。
その古き一族が何処の血を引く者か、推して測るべしというところです。
また、高千穂に伝わる鬼八伝説では、「アララギ」という鬼八（キハチ）の里があったとされますが、これが「興梠」に通じるため、鬼八一族の末裔が興梠一族であると云われています。
であれば、 鬼八伝説は、天孫ニニギの孫である三毛入野命が、土着の一族である神呂木の一族を支配・征伐した物語となるのではないでしょうか。
境内には出雲の新年の神「大歳神」も丁寧に祀られていました。
神社裏は神漏岐山の裾野にあたり、そこにある広場はパワーの強い場所であると云われています。
立ってみると、確かにそう感じるような気が、しなくなくもなくもない。
本殿後ろの神漏岐山にある板木は、7回叩くと願いが叶うと云われており、その板木を巡る散策路が設けられていました。
鬼八とは何者なのか。
意外なところで、その姿を見かけました。
出雲の石見神楽に「道反し」（鬼がえし）という演目があります。
常陸（ひたち）の国、鹿島神宮の祭神で「武甕槌」（タケミカヅチ）の命（みこと）は、世界中を荒し廻った大悪鬼が日本に飛来し人々に危害を加えていると聞き、退治に向かいます。
現れた大悪鬼は、相手を言い伏せようとして掛け合いますが、遂には立ち会いとなり激しく戦うことに。
「秘術を尽くして戦ったが神の剣からは逃れられない、命だけは助けてください。」とついに鬼が降参します。
これに武甕槌は、「命を助けてやるから、今後は人間を食うのをやめて、九州高千穂の峰に有る千五百穂の稲穂(米)を食え。」と許したのでした。
この神楽の興味深いのは、大悪鬼ともあろうものが、武力に頼らず、最初は言葉で言い伏せようとするのです。
これはまさに出雲族の「言向け」る姿そのもの。
ただし彼は世界を荒らし廻って日本に来ていますので、出雲に定住した渡来人の可能性もあります。
石見地区は出雲の西方に位置し、支那秦国から渡来した海族の居住区と重なります。
それもあってか、石見神楽の内容は、「大蛇」（おろち）に代表される大和寄りの、記紀に沿った演目が目立ちます。
その中で「道反し」（ちがえし）は、鬼が降参し許されると言う形で終わり、鬼を殺さずに道の途中から反すのでその名が付けられています。
また「峰は八つ谷は九つ音にきく、鬼の住むちょうあららぎの里」と語られ、この鬼があららぎの里の鬼八であることが分かるのです。
高千穂でも、鬼八は二上山に天降った神と伝えられていました。
石見地区に伝わる神楽を繋げれば、鬼八は出雲から移住した王族もしくはそれに近しい者であることが窺い知れます。
鬼は支那渡来系の一族が、まつろわぬ者に好んで使う蔑称。
そして八は、出雲の聖なる数字でもありました。
高千穂で鬼八は、表向きは乱暴狼藉者として伝えられています。
しかし、こと民間の伝承に至っては、彼は山里に稲作をはじめとする様々な文化を伝え、阿蘇から矢部、高千穂一帯の村民に慕われた、そして由緒ある祖母山の姫を妻に迎えた古代高千穂の主であったように伝えられていました。
ここ高千穂にも、支配者によって歴史から隠された、優しき王国があったのです。
偲フ花 
narisawa110
あと、垂仁の所の埴輪のお話を元にすると、生贄やってた側が物部という事になります。やってた側と差し出していた側が逆転ですね。
つまり、鬼八は生け贄を出してた側の家で、やめさせた側が実際に生贄をやってた家という事になるのかもしれません。
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橋本家のそばには、獲物を解体し神の贄（猪肉などだと思われる）を献上する家があったとか。
他の地区でも、だいたいそうで、この方たちは崇敬を込めて恵多と呼ばれていたそうです。
今は貶められた字を充てられていますが。
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narisawa110
なるほど。今ではケイタさんという名前的に見ればその意味は
親切。めぐみ。思いやりある行為。物事に恵まれる。幸運に与ること。賢いこと。知恵や聡明さを備えていること。
忌部氏もそうだったのですかね。富家は名乗れなかったそうですし。（別の呼び方気になりますね）
故に勾玉の利権が彼らに回ってきたのかもしれませんね。
しかそれが何らかの変遷を経て鹿免状に変わり諏訪信仰の全国展開に繋がったのかもしれませんね。
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narisawa110
現地に行ってからだとまるで見え方が変わるのがこの神社でしょうかね。
古文書がほぼ確認できず、村社としてあったものが明治時代に十社（今の高千穂神社）に合祀されて廃社。いつの間にか復活した。
出雲伝承を念頭に置くと、五ヶ瀬近辺に神門家の痕跡を何処に求めたら良いのかが課題でしたが、少なくとも大歳神がここにいるという事が、独自性と言うか一つの道標になるかと思いました。
基本的に幸神三柱のうち猿田彦が単体で祀られ、神楽の関係で後付けになるウズメが三ヶ所神社にいない事が、伝承通り出雲族の領域に物部氏が来たと言う事と符合する気がします。
あの辺りの神社は一族名と山が一対になっている事が特徴と思われます。三瓶山、大山など、火山側が見れる方が重要視される気がしますので、農耕の土地的に有利な東側より、西側のワイナリー側の方が祭祀的には上位に来る気がします。つまり、二上山は橋本の屋敷神的な位置付けです。ここから出雲のトオチネまでイザナギ、イザナミを持って来れ、富家も納得する出来事が必要になるわけですね。
そして東側には対となる橋本、つまりイザナミがいない事から男系のみの片手落ち状態になっています。
更には高千穂神社にもある「桑之内二神外宮宣命之状」の存在です。これは、田尻文書や十社文書とも言われ、複数存在すると考えられますが、かつては東側も桑の内呼称であった可能性をもたらし、姫様のおっしゃる通り、桑の内、クラオカが昔の土地の区割りであった事と合致する気がします。
富編集長のおっしゃるとおり、揉めるもの同士こそ血筋が近いとも考えられます。
そして、国譲り事件は基本的に他の呼ばれ方は吉備もそうですが鬼伝承になると考えられます。
つまり、西側が鬼にされた方では無いかと。
また、イザナギ、イザナミはもしかしたら大年教の呼び名であったりしてと妄想。
五瀬の兄弟の一人はワニの投影があり、もう一つは私の妄想通りだとしたらウサ豊家。
すると金子さんとも繋がる気がしてきます。
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ウズメは高千穂に取られたとかなんとか、と佐織さんが話していました。たぶん。
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narisawa110
ここではカムロギ、カムロギが祀られていたという事なのでしょうね。ヒルコが居ないのが気になりますが。この辺の話の延長に謎の人物、オモイカネが出てくる気がしています。ホツマツタヱや小野系の伝承や考察？によると、ヒルコはワカヒメになるのだそうです。確か、諱がワカヒメ。
姫様のイメージにぴったりな気がしますね。
記紀や出雲伝承においてはイザナギイザナミは出雲の大神の事とされますが、不仲であった話はイクメとヒバス姫を投影しているとされます。神代の話は第一次物部東征時期となりますので、設定の使いまわしや重複があると仮定する場合、イニエと豊玉姫の娘の事を暗示している気がします。
ワカヒメはアチヒコ（オモイカネ）と婚姻し、ウズメの一族になった。ここにB女子様の額田が入り、金子様（兼子さまも同族？）登場の縁アリとするのであれば、オモイカネになる気がする。
・・・？オモイカネって何気にウマシマジに近くなってきた気がする。
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オモイカネも色々混ざっているという事でしょうかね。
ワカヒメ、なるほど確かにあの可憐さが媛さんのイメージにぴったりですな😌
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なんと鬼八の末裔ではない可能性があるのですね。色んな伝承がまだまだありそうなんですね。また、何か謎解きのピーン✨️が降ってこられましたら、是非是非教えてくださいませm(_ _)m
九州は雪積もらないから羨ますぃです。
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ここ、行きたくなりました。非常に興味深く拝見致しました。
鬼八は神漏岐一族。高千穂の伝承によると、神漏岐家は、三毛入野命の高千穂入りの際に、恭順の意を示し、その後自分たちはこの荒立神社に移ったと。つまり、戦わないで迎え入れる形をとったわけですね。この伝承が真ならば、この辺りも争いを避けるインド、クナト大神系をルーツにもつ一族らしいストーリーですね。
その荒立神社の宮司さまは代々、興梠家というのてすね。。
鬼八退治の話しは、その後に神漏岐家の姫様を奪われてしまったことから（まるで豊彦と常世織姫のストーリー、越智家との後の争いの伝承のような）拗れていった、若しくは、興侶家にとっては血筋を絶やさないことを最も大事にしていたり、后を迎える家元も古くから決まっていたのに、そこに物部が姻戚関係を結ぼうとしたことから、断絶せざるを得ず、そこから争いが起きたのかと。
神漏岐一族と恐らく姫さんの家元、が関わってくるのかな。。なんて妄想致しました。
やはり、古代は女系の血筋がとても重要なので、自由恋愛は御法度だったというのも普通にあったのだろうなあと思いました。
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興梠家は、鬼八の末裔ではない可能性を、今回の姫さんの話を聞いていて感じました。
高千穂の伝承にもいろいろありまして、まだまだ深掘りが必要そうです。
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（追記）荒木博之氏(1922-1999)の「鬼八伝承を巡って―土蜘蛛と山姥―」今から20数年前の遺稿。この方が興侶弥寿彦氏から聞き取りした内容をまとめたものと知り、そこから鬼八の伝承は、高千穂と阿蘇、色々諸説あるのだとわかりました。それで、興侶家が鬼八の子孫だと、まるっと私信じ込んでおりましてん。五条先生が感じられたということは、恐らくきっと、もっと裏や深い謎が背景にあるのでしょうね。
あまりこの辺りは詳しく探究していないのですが、それによると。。なんとなく鬼八はとてもお人好しで、遠方からきた三毛入野命を歓迎したら裏切られたような伝承になってました。私は鬼八の娘が奪われて。。かと思ってましたが、どうも鬼八の妻がうばわれて、という内容になっていました。
なんとなく荒立神社の御祭神が猿田彦なので、鬼八には猿田彦っぽい、彫りの深い顔のイメージがあります。遠方から来る客人を導き案内する。。というのも猿田彦の（冨家の伝承とはまるっきり違う記紀の内容ですけど）イメージとなんだか重なりました。
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