長野県千曲市にやってきました。
水害の被害が気になっていましたが、見た感じは平穏さを取り戻しているように思えます。

目的地を目指す途中、「斎の森神社」がありました。

斎の森神社の創建は鎌倉時代、中世以降は諏訪大明神といわれ、川中島平に入る入口を守る神（塞いの森）として、武水別神社先の森であったといわれています。

この地籍は八日市場と称され、八幡宮を拝する交通の要所であり、鎌倉時代には八の日に市が定期的に開催されたようです。

当社は武水別神社の大頭祭（新嘗祭）の出発神社として、今も伝統を引き継いでいるとのこと。

社名からして、元はサイノカミを祀った神社だと思われますが、残念ながら、その痕跡は見当たりませんでした。

てくてく歩いていると、「臼道祖神」というものがありました。

武水分神社大頭祭では、ここで頭人達は拝礼します。
石が御神体として祀られていますが、旱魃の夏は雨乞いの人々によって人知れず川底へ沈座されるのだそうです。

この石は「塞の神」と呼ばれることもあり、台座との臼は女性の代名詞でその上に道祖神が乗り陰陽をあらわしています。
これぞサイノカミ信仰、という痕跡がここにありました。

さて、今回の目的地は信濃国四宮の一社、「武水別神社」（たけみずわけじんじゃ）です。
神社に向かうまっすぐな道を歩いていると、

「青海橋趾」という石碑が目に止まりました。
大頭祭の時、この橋のたもとに頭人が到着するとお宮から役向が出向いて、挨拶と行列についての問答をしたと云います。
その際、舞台を組んで「青海波」という雅楽の曲を奏で、舞楽が舞われたことからその名が付いたそうです。

立派な鳥居が見えてきました。

思っていたよりも大きな神社です。
修復された箇所が、逆に古い歴史を感じさせます。

武水別神社は、「八幡宮」と呼ばれていた時期があります。

現在も「八幡さま」（やわたさま）と地元で呼ぶ方は多いとのこと。

主祭神は「武水別大神」（たけみずわけのおおかみ/たけみなわけのおおかみ）ですが、相殿神は「誉田別命」（ほんだわけのみこと、応神天皇）、「息長足比売命」（おきながたらしひめのみこと、神功皇后）、「比咩大神」（ひめおおかみ）とお決まりの八幡三神になっています。

境内に数ある摂社・末社群の中で特別な存在感のある社は高良社（こうらしゃ）です。

覆屋内にある本殿は、室町時代後期16世紀頃の造営とされ、室町時代の特色を示すものとして、長野県宝に指定されています。

肝心の祭神の記載がないのが残念ですが、玉垂神が祀られているのでしょうか？
そうなると八幡三神として祀られる比売大神にも意味深いものが見えてくるのですが。

参道を進みます。

創建は社伝によると、第8代孝元天皇の時代に鎮祭されたと云うことです。

意富多多泥子の孫・田田彦命の5世孫「多祁古」が用明天皇朝に信濃へ下向し、武水別神を奉斎したことに始まる伝える系図もあるようです。
タ、多すぎ。

武水別神社一帯は平安時代末期より石清水八幡宮の荘園となっており、安和年間（968年-970年）に石清水八幡宮から八幡神（相殿の3柱）が勧請されたと伝えられます。

そのため、当社はこの地方随一の八幡宮として広く武門の崇敬を受け、木曾義仲が祈願したと伝えられるほか、

川中島の戦い時の上杉謙信の勧請文なども残されているのだそうです。

中鳥居を過ぎると、威風ある社殿が姿を現します。

武水別神社は本殿ばかりか、拝殿にもかなりの力の入れよう。

社殿を始め境内の建物類は火災等によりその都度再建が成され、現在の建物は殆どが天保十三年の火災以降に建てられたもの。

拝殿は立川和四郎の後見の下に、水内の峰村弥五郎の手により安政3年（1856年）に完成。
瓦葺の屋根は昭和57年に本殿と同様に銅板で葺き替えられました。

本殿は諏訪出身の工匠立川和四郎（二代・富昌）によって嘉永3年（1850年）に完成しました。

建坪三十一坪余。

内外の彫刻は繊細を極めています。

明治に入り、それまで称していた「八幡宮」から「武水別神社」の社名に復した当社、

さて、主祭神の武水別大神とは一体誰なのか？

武水別は「たけみずわけ」と読みますが、「たけみくまり」と呼ばれることもあるそうです。

一般には武水別は神武天皇より7世後裔とされる水田の神、地方神ともされ善光寺平の五穀豊穣・千曲川の神ともされるとのこと。

仲国造となる建借彦命の御子、神八井耳命の後裔とも伝えられています。

しかし僕には、武水別は建御名方の名の方に近い感じがしてなりません。

本殿の周りを囲む末社群、

それを見ても大和的、と言うよりはいかにも出雲。

目洗石という石も

サイノカミ的です。

そこで今一度、建御名方の系図を見てみました。

建御名方の息子「速出雄」の3世後に「武美名別」の名がありました。
これでしょう。

建御名方の子孫であるべきところを、あたかも大和の人間のように言い伝えられているあたり、物部王朝による征圧の歴史を感じさせます。

ところで今回、改めて「八雲ニ散ル花　蝦夷ノ王篇」の再構成を行うことにしました。

色々と新たな情報を入手し、その必要性を感じたからです。

というか、八雲ニ散ル花・全シリーズのリライト、再構成が必要なのではないかとさえ思っています。
それほどに富氏との邂逅は僕にとって、大きなインパクトでした。
正しい歴史を追求することの難しさ、そしてその重要性を思い知らされるのです。

境内を後にする前に、気になっていた茶店に足を運びました。

名物のうずら餅はぷるんとした餅としっとり餡のハーモニーが絶妙な、美味しい甘味でした。