
岬の御籠島にある鰯碆(いわしばや)という岩礁の先に、海中から光が放たれている。
「速吸の瀬戸で船が度々遭難するのは神さまが咎めているのかもしれない。確かめてみよう」
と海士の兄弟が海に潜ってみて見ると、巨大なタコが光る金の玉を抱いていた。
二人は光る玉に近寄ると、大ダコは足を絡め遮ってくる。やっとのこと大ダコを退け海底の光る玉を持ちあげたが、そこで兄弟の海士は息絶えた。
村人は光る玉を御籠島へお祀りしたが、一向に海難はなくならない。
村人たちがどうしたことかと思案していると、一夜のうちに竹が三本生えているのを見つけた。
これはご神託だと言い出すものがあり、その地に神社を建て、御籠島より遷座した。
これが野坂神社のはじまりである。


船!

船!

船に乗っていざ渡らん、速吸の瀬戸!

黒砂・真砂の姉妹岩のある佐賀関を出港し、愛媛最西端の佐田岬を目指します。

さらば大分、さらば九州。

万感の思いを乗せ、船は旅立つ。

速吸の瀬戸は古代から航海の難所とされてきました。

しかし佐賀関や愛媛の三崎町などの民は勇敢にもこの海で漁をし、豊かな幸を得ていたと云います。
野坂貝塚ではアワビやサザエなどが豊富に含まれており、古くから潜水漁業がおこなわれていたことを示唆します。

この九州大分県佐賀関と四国愛媛県三崎を結ぶ航路は、31kmの国道197号海上区間となり、国道九四フェリーで最短時間の70分で結ばれます。

船の甲板で過ごす70分はあっという間。
すぐに佐田岬半島の先端が見えてきました。

この灯台の先にある小島、これが海士の兄弟が光る玉を持ち上げたという御島(おしま)、またの名を御籠島(みかごじま)と言います。

三崎町の港についてすぐ、

名物のじゃこ天とじゃこカツをいただきました。
あつあつでうまうまです♪

胃袋もほっこりしたら、しばしドライブ。
爽やかな山道を進むと佐多岬漁港が見えてきました。

そこに鎮座するのが「野坂神社」(のさかじんじゃ)です。

こじんまりとした境内。

ひと気はなく、静かな時間が漂っています。

主祭神は「速吸比古命」(はやすいひこのみこと)。

配神として「住吉三柱大神」(すみよしみはしらのおおかみ)と「宇迦之御魂神」(うかのみたまのかみ)が祀られています。

もともと御身体は御籠島に祀られていたそうですが、海難はなくならず、一夜のうちに竹が三本生えているのを村人が見つけました。

これはご神託だと言い出す者があり、その地に神社を建て遷座したのが当社と言われています。

三本の竹とはどれのことかと探してみましたが、当然そんなものは見当たりません。
生えていたとしたら、それは竹林になっているでしょう。

そもそも竹の姿そのものが見当たりませんので、枯れてしまったか。
周りはどちらかというと、南国系の植物に覆われているように感じました。

祭神の速吸比古について思うのは、大分佐賀関の「早吸日女神社」(はやすひめじんじゃ)との対比です。
字こそ違えど、速吸彦・速吸姫の対であることは想像に難くありません。

早吸日女神社の由緒では、神武天皇東征の途中、速吸瀬戸において黒砂(きさご)・真砂(まさご)の姉妹の海女が海底に棲む大ダコより神剣をとりあげ、天皇に奉献。
しかし神剣を献した黒砂・真砂の姉妹は息絶えたとありました。

野坂神社の兄弟の海士の話は、この男女を入れ替えた話となっており、佐賀関の伝承が当地に伝播したことを窺わせます。

早吸日女神社の宮司家では昔からタコを食べない、蛸断(たこだち)祈願というものがあります。
三崎の正野でもタコを食べない家が今もあるとのことです。

早吸日女神社ではタコの絵が拝殿内に納められていましたが、野坂神社でも願かけにタコの絵を供えたり、神前でタコを食べませんと唱えながらお百度をふむ習俗があったと云います。

同名に彦・姫が付く場合、それはその部族の王と巫女を示す役職名である場合が考えられます。
つまり速吸彦・速吸姫とは速吸の瀬戸一帯を治めていた速吸一族の王と巫女を示しており、黒砂・真砂の姉妹は当地の姫巫女であったということでしょう。

そして彼女らは、あの豊玉姫の血縁であった可能性が濃厚なのでした。



さらに岬の先端に向かって車を走らせます。

パーキングに車を止めると

眼下に美しい海岸がありました。

「この先がきれいだよ」と地元の方に勧められて歩いて行きます。

森の中を数分歩くと

素晴らしい佐多岬の景観がそこにありました。

先端に建つ白い灯台。
その先に御籠島があります。

そして遥か彼方には大分の佐賀関が見えます。
厳しくも広大で豊かな、母なる速吸の瀬戸。
そこには往古に漁をする速吸族と黒砂・真砂の姉妹の姿が目に浮かぶようでした。

絶景ですね。透明度が!!
言われてみれば、船で渡れば大分と愛媛はそんなに遠くないんですよね。改めて島国だなぁー、と思いました。
じゃこ天は想像がつくのですが、じゃこカツ、、、気になります!! 美味しそう♪
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じゃこカツはじゃこ天に衣をつけて揚げた感じでした。どちらも揚げたてで、あつあつほくほくでしたよ😋
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