愛嶽山:常世ニ降ル花 朝近残月篇 03

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「宝満山の”おだけ”には行ったことがあるかい?」
「いや、行ったことがないです」
「行ってみるといいよ、”あいだけ”と書いて”おだけ”って呼ぶんだよ、面白いよね。それでなんかよくわからない不思議な穴があってね…」

大根地山山頂で出会った不思議なおじさん。その不思議おじさん(たぶん仙人)から与えられたクエストをクリアするため、僕は竈門神社へ向かうのでした。

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「愛嶽」と書いて「おだけ」、「Loveだけ」と書いて「おだけ」。
愛嶽山は宝満山と稜線でつながる小峰です。

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こっちが宝満なお山で、

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こっちが愛くるしいFACE。

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ということで古代人はここに女神が横たわっていると想像したのか、はたまたそんなことを思い浮かべるのは五条桐彦くらいのものか。

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愛嶽登山は宝満山麓の竈門神社下宮から登るのが一般的のようですが、僕はショートカットルートを選択。

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下宮横から続く細道を車を走らせ、大きくカーブしたところにある8台分ほどの駐車スペースから烏越峠経由で山頂を目指します。
登山時間はさほど変わらないと思いますが、標高差はだいぶ緩いかと。

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そういえば竈門神社から少しのぼったところはアサギマダラの名所となっております。完全に個人のお宅なのですが、時期になると訪問者を快く迎え入れてくださいます。
アサギマダラはふわりと降り立ち、ふわりと飛ぶその姿がとても美しい蝶です。鬼滅の刃の胡蝶しのぶちゃんタソのモデルになっているとか。
胡蝶しのぶは蝶なのになんで毒が武器なのだろうかと不思議に思っていましたが、そういえばアサギマダラは毒を喰らい、毒をその体内に宿すのだそうで、まさにちゃんタソにぴったりのモチーフなわけです。竈門炭治郎神社のすぐそばなので、ここが鬼滅の聖地というのもあながち、というわけです。

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さて、心細くなる山道を車で登り、ここだろうという駐車スペースに車を停めます。
そこから多分この道だろうと思われる登山道に足を踏み込みました。

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何か石積みがあります。

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辺りは小川が流れ、心地よい雰囲気です。

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しばらく林道を歩きます。

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歩きます。

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歩きます。

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ちょっと心細くなってきたので歌でも歌おうかと思っていると、

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烏越峠に着きました。

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ここが愛嶽・竈門神社方面と宝満山の分かれ道。

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竈門神社まで50分と書いてあります。やはりこのルートの方が短時間で愛嶽に着くのでしょうか。
駐車スペースから烏越峠まで15分、ここから愛嶽山頂まで10分、そんな感じだと思います。

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さらに歩いていくと、

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鉄塔下に出ました。

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歩いて、

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歩いて、

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歩きます。

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着きそうで着かないもどかしさ。

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と、ようやく鳥居の姿が見えてきました。

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こんにちはする、石の鳥居。

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感嘆に値する美しい光景が目の前にありました。
大根地山裏参道の扇滝と似た印象を受けます。

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扁額に書かれているのは「飯縄大権現」。

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飯縄は飯綱、または伊豆奈と表記され、「いづな」と呼びます。
飯綱はイイズナという実際にいる動物を指すこともありますが、架空の生物でキツネの妖怪・管狐(くだぎつね)を指すこともあります。

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飯縄権現(飯縄大明神)とは神仏習合によって生まれた神であり、多くの場合、白狐に乗った剣と索を持つ烏天狗形で表されます。
これによく似たものに、白狐に乗って剣と宝珠を持つ天女・荼枳尼天があります。ダキニと飯縄権現は同一視されるようです。

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現在、愛嶽山頂に祀られる愛嶽神社の祭神はなぜか火の神・軻遇土神(かぐつちのかみ)になっていますが、その正体がダキニ・飯縄権現であることを朽ちた赤い鳥居が物語っています。

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鳥居の先にある石に何やら文字が彫られていました。神代文字か!と思いましたが、

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奉寄進、

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奉納された手水でした。にしてもこの高さでは手を洗えない人続出ではないだろうか。

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独特の雰囲気の聖域が広がります。まさにダンジョンのラスボスステージの様相。

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案内板から由緒を知ることは、もはや不可能ではないでしょうか。
ネットで『宝満山研究会(山岳宗教遺跡の保全と研究)』というサイトを見つけたので、こちらを参照した方がよさそうです。

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宝満山研究会によると、愛嶽神社は明治以前は「飯綱大権現」社であったとしており、『筑前国風土記』では当社の伊豆奈権現を、「天竺の神茶吉尼と称す。魔術を好む者この神をたうとふといふ」と記されていたことを紹介しています。

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「飯縄法」や「愛宕勝軍神祇秘法」「ダキニ天法」は古来「邪法」とされ、天狗や狐などを使役する外法とされてきましたが、反面、熱心に信仰されており、飯縄権現に関わりのある薬王院は江戸時代には徳川家によって庇護されたほどでした。

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境内に、朽ちた物置のようなブロックの建物がありますが、

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これが本殿(拝殿)だって信じられるかい?

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頑張って中を撮影してみたら、祭殿の痕跡とお賽銭の残りが僅かに確認できました。

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そんで90度やないかいっ!って突っ込みたくなるような階段、

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この石段の上に祠があると聞いています。

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登ります。
実は最近登山続きで、膝をちょっとやらかしています。
ひいひい。

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良い声で鳴き始めた僕の目の前には、サディスティックなダキニ女帝が足組みして待っておられました。

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天狗の姿をした飯縄権現と

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役行者のお二方。

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真ん中にどどーん、牛に乗ったご神像様。この方がダキニ女帝でしょうか、靴を舐めたら良いのでしょうか。
いや、この神像は今の祭神のカグツチ神でしょう。ダキニは天狗姿の飯縄権現として、社の外に置かれているのです。

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流石に天狗のおっさんの下駄を舐める気にはなれません。ダキニは狐に乗ってちょっと僕を見下したような女王さまの像であって欲しかった。

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ダキニ天はインドでは殺戮の女神カーリーの侍女で裸身で虚空を駆け、人肉を食べる夜叉であったとされます。
やがてブッダに諭され、死んだ人間のものだけを食べるようになりました。

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同時にダキニには、誰がいつどこで死ぬかを予言できる能力を身につけました。
その超能力設定が密教や修験者に好まれたのかもしれません。

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ところで大根地山で出会ったおじさん(きっと仙人)は「不思議な穴」があるのだと言ってました。
不思議な穴とはいったどこだ?あたりを見回してもそれらしいものはありません。

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愛嶽神社の横にもう一つの山頂と思える小高い峰がありました。

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そこをよじ登ってみると、

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ああ、あります、謎の穴が。

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ロープが張ってあり、際までは近づけませんが、長い手を伸ばして写真を撮ってみました。そこは深くないようです。
思うにこれは古墳ではないでしょうか。

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古代からここは聖域であったのでしょう。
そこに後世、修験者が稲荷神・飯縄権現を祀ったのではないか。
埋葬者は宝満山の玉依姫を祭祀した巫女か、あるいは覡(かんなぎ)か。

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明治期に神仏習合色の強い修験神からカグツチ神に祭神を変えられたものと思われますが、記紀編纂期と維新政府設立期の、歴史の欠損は闇が深い。

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謎の穴底に眠る人物は、白をシンボルとする一族が関連しているのではないだろうか。そんな妄想をふくらませつつ、玉依姫の鎮まる女神のふくらみをながめ山を降りたのでした。

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9件のコメント 追加

  1. mame58 より:

    文章がリズムカルなとこ、面白かったです。歩きます。歩きます。のとこや、90°かい!のところ
    また、楽しみにしています😀

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    1. CHIRICO より:

      mameさん、ありがとうございます😊
      登山行程シリーズはそろそろネタが切れてきましたが、なんとか面白く書いていこうと思います。

      いいね

  2. Yopioid より:

    膝は大事ですネ。古代インドの信仰は出雲経由と思いたいデス。

    いいね: 1人

    1. CHIRICO より:

      ふとした時に、少し痛みます。ここのところハードでしたので、酷使しすぎたか。
      後年は修験の影響も強いと思いますが、修験のルーツも出雲系と豊・越智系があるようです。

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  3. Nekonekoneko より:

    ムチを振るうダキニ天と喘ぐおっさんの饗宴🐥穴はただの墓穴にしか見えませんが、墓穴なら古墳の一種かも〜。ダキニ天は生きた人肉が好物なんですか。じゃあ、人間の死体の心臓が好物なメジェド様と話が合うかも〜🦑

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    1. CHIRICO より:

      阿鼻叫喚の甘美な饗宴!とはならず、僕の筋肉が翌朝、悲鳴をあげただけなのでした。

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      1. Nekonekoneko より:

        それも一種の饗宴…Mとはそんなもの(甘美〜🦑)

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  4. Oshiho より:

    いつもフォローありがとうございます🥰 相当歩きましたよね?歩いて歩いて…何キロくらい歩いたんだろうと思いながら感心してしまいました
    お疲れ様でした💦

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    1. CHIRICO より:

      Oshihoさん、コメントありがとうございます😊
      いつもハムスターたちの可愛い姿を見て、月に帰ったそらくんを思い出して癒されています。
      愛嶽山は登山としては気軽に登れる山ですが、それでも登っている時はいつもなんでこんなことをしているのだろうと自問自答してしまいます。
      それでも山というのは不思議な魅力があり、その包容力と畏れを感じたくて、また登ってしまいますね♪

      いいね: 1人

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