静岡県熱海市にやって来ました。
「多賀神社」は、住宅街の一角に鎮座していました。

境内には様々な木が植えられています。

奥がマキで、手前がムクロジかな。
バクチの木なんてのもあったようです。

祭神は「伊弉諾尊」（いざなぎのみこと）と「伊弉册尊」（いざなみのみこと）。

由緒によれば、正徳年間（1711年）に近江国（滋賀県）の多賀神社を勧請し、明治6年に多賀大明神と改称するまでの160年間は「日少宮」（にのわかみや）と称していたとします。

お多賀さんの勧請であれば、祭神はクナト王と幸姫、出雲のサイノカミということになります。

しかし1711年と言えば江戸時代であり、さほど古い由緒ではないということになります。

当社は上多賀地区に鎮座しており、下多賀地区の下多賀神社というものも存在しています。

興味深いのは、伊豆国の式内社は92社が記されており、その中で上多賀の神社として「白浪之彌奈阿和命神社」（しらなみのみなあわのみことじんじゃ）の名が記されている事です。

社頭の石碑によれば、「これは日本神社の研究書として著名な大日本史神祇志、特選神名帳、伊豆国式社考略、南豆神祇志、豆州志稿、日本地理志稿、静岡県史の七書において上多賀の多賀神社であることを立証している」とのことで、当社が「式内・白浪之彌奈阿和命神社」に比定されています。

すなわち、少なくとも延喜年間（901年－923年）には、当社は既に存在していたと考えられるということになります。
それを証明するかのように、境内裏には、古代祭祀遺跡の磐座が保存されていました。

磐座と言っても、小さな丸石が置かれているだけです。

昭和33年に国学院大学教授の「大場磐雄」博士と、沼津女子高等学校の「小野真一」等の指導の下に、当地を発掘したところ、白銅鏡一面、祭祀用青銅鏡五面、有孔円盤句王など、多くの祭祀遺物が出土したということです。

古代の人は、何をもってこの石を神の宿る石と見極めたのか。さほど特別感を感じるものではありません。

強いていうなら、要石（かなめいし）のようなものか、もしくはかつては背後に樹木があり、ミシャクジのように石の上に立たせた子供に神を降ろしたのかもしれません。

白浪之彌奈阿和命神社といえば、おそらく祭神は阿波姫。
阿波姫の祭祀は、長い年月のうちに忘れ去られたか、別のもので覆い隠されてしまったのでしょうか。

熱海市下多賀にある「下多賀神社」（しもたがじんじゃ）も気になったので、やって来ました。

多賀小学校・多賀幼稚園に隣接する、元気な子どもの声が響く、良い神社です。

いぶし銀な上多賀さんと違い、こちらは雅。

祭神は上多賀と同じく「伊弉諾尊」と「伊弉册尊」。

慶長年代以前は「中村大明神」と称し、延宝7年（1679年）に「松尾大明神」、そして明治6年（1873年）に現在の「下多賀神社」へと改名されました。

境内からは縄文土器や石器、経塚遺物が発見されており、下多賀神社は古くから信仰が厚かった事を示しています。

当社の所在地である昔の字「新釜」には、築城石を管理する「石番」が置かれていたと、福岡藩の史料に記されているそうです。

また、下多賀神社にも「白浪之彌奈阿和命神社」に比定する説があるとのこと。

長閑な神社ではありますが、

古い地名の新釜や、白蛇の伝承があることも気になりました。

熱海の多賀には多賀三社参りなるものがあるとのことでした。
その三社目が下多賀にある「津島神社」です。

入り組んだ住宅街の隙間に鎮座。

こちらにも立派な磐座がありました。

う～ん、読めぬ。

津島神社の創建その他は不詳。

しかし案外、津島は対馬だったりしないのでしょうか。

頼朝のなんちゃらと書いてかる「駒の爪の碑」なるものがありました。

よくある、馬の蹄の跡が残っているというヤツでしょうか。

そしてなんと、こいつがありました。「竈神社」。
祭神は玉依姫か、豊玉姫か。

熱海も、あるいは龍宮だったのかもしれません。