姫路神社:常世ニ降ル花 神門如月篇 03

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オミヅヌは、神門家に養子に迎えられた人であったと伝えられている。
鳥取県の姫路神社(鳥取市気高町八束水)が、かれの生家であったという。
この神社は、かれの母君の閇知泥姫と関係があると言われる。
オミヅヌの后は、フテミミ(布帝耳)というお方であった。
オミヅヌとフテミミは、現在は長浜神社(出雲市西園町)に祀られている。

- 『出雲王国とヤマト政権』(富士林雅樹 著/大元出版)

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鳥取市気高町八束水(やつかみ)へ、やって来ました。

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その姫路集落にポツンと鎮座する「姫路神社」(ひめじじんじゃ)、ここが出雲王国6代大名持にして、西出雲王家の「八束水臣津野」(やつかみずおみづぬ)の生家があった場所だといいます。

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とは言いましても、由緒にも、祭神にも、彼の名前は見えません。

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大元出版でそのことが触れられているのは、富士林雅樹先生の『出雲王国とヤマト政権』がおそらく最初であり、比較的新しい情報なのかと推察します。

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師匠は「正しい歴史を残さなければならない」という確たる信念のもとに大元出版を立ち上げており、僕もここがオミヅヌの生家であるという前提で考察したいと思います。

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境内に鎮座する一対の狛犬は、江戸時代末期の名石工「川六」(尾崎六郎兵衛)の作であるとのこと。

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そのうちの一つは子持ちなのですが、

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よく見る子持ちの狛犬とは、また違った造形です。

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拝殿前にも小ぶりな狛犬さんがいらっしゃいます。

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嘉永元年の文字が刻まれていますが、こちらも川六作なのかどうか。
愛嬌のある狛犬で、愛らしい造形です。

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祭神は「素盞雄尊」「大日霎尊」「稲田姫尊」「事代主尊」「保食神」。

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初代・菅之八耳王とその后・稲田姫を祀り、その間に出雲の太陽の女神を配した形となるのでしょうか。

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神社明細帳には「勧請年月詳かならずと言えども宝亀2年(771年)と古書に記載あり」とあるようで、往古より当地、姫路・船磯の氏神にして三所牛頭天王と称していたと記されます。

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当社には、県指定の無形民族文化財「百手の神事」が伝わっており、宝亀2年に諸国に疫病が大流行した時、疫神を鎮めるよう勅令が発せられたことにより始まったと伝えられます。

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姫路神社の百手の神事は、二夜三日の潔斎を行った神官が、翁の面をかぶり、神木の根元に置いたコモの的を射て吉凶を占うのだそうです。

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百手の神事は、かつては全国的に行われていたようですが、特に愛媛・香川方面によく残っているようです。

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姫路神社の境内社は二社。

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荒神社と杵築神社で、出雲との繋がりを感じさせます。

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こうして境内をいろいろと見てみましたが、なかなかオミヅヌを彷彿とさせるものは発見できませんでした。

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彼の母親で、当社と関連が深いという「閇知泥姫」について、少し考察してみます。

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『古事記』に「天之都度閇知泥神」(あめのつどへちねのかみ)と記されるこの女性は、出雲王国5代大名持で東王家・富家出身の「深渕之水遣花」(ふかふちのみずやれはな)の后であったとしています。
また、粟鹿神社の書物『粟鹿大明神元記』にも同様のことが記されます。

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閇知泥姫は当地の女で、富家に嫁ぎ、当時は妻問婚なので、生まれたオミヅヌはここ八束水で育ち、神門家の養子になった、ということになるのでしょうか。
オミヅヌの息子には、ヤチホコの父である赤衾伊努意保須美比古佐和気 (あかぶすまいぬおおすみひこさわけ)がおり、もう一人、宗像族の祖となった吾田片隅(あたかたす)がいます。
一方、深渕之水遣花の正式な息子に、出雲王家7代大名持で富家の天之冬衣(あめのふゆきぬ)がいます。
そうなると、オミヅヌとフユキヌは兄弟、おそらく異母兄弟ということになるのではないでしょうか。

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前回、日御碕神社の記事で、神門氏系の小野氏は、富家の天之冬衣と吾田片隅の長女・田心姫の間に生まれた子孫ではないかと考察しました。
富家と神門家、東西の出雲王家は互いに姻戚関係を結んで来たとは聞いていましたが、ここでは特に、富家の婿に神門家が積極的に嫁を出して、神門家の母系に富家の血を取り込もうとする様が見えてくるのでした。

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姫路神社の外周を歩いていたら、裏手に墓地がありました。
失礼して拝見させていただくと、錚々たる家紋が並んでおり、八束水姫路の地に住まう方々の由緒正しさを感じました。
それにしても、右下の家紋は、何でしょうか。あまり見ない気がします。

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姫路神社からひと道路挟んだ先は、海岸になっています。

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深渕之水遣花は、「深い淵の水の流れ、その始め(ハナ=端)」と解することができ、天之都度閇知泥は、「天上界の集められた水路」と解することができるそうです。

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八束水臣津野もまた、「偉大な水の主」と解することができ、いずれも水に関係した名前になっています。

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オミヅヌが神門家に養子に入ったことと、彼が国引き王として語られるようになったことは、無関係ではないように思われます。
国引きの神話は、出雲王国が領土を増やしたことを示しています。
島根半島はおそらく、それまでは別の一族の領地であり、オミヅヌが神門家の大名持として就任することによって出雲領になったのだと考えられます。

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オミヅヌは、王国の領土を増やすために、各地の豪族の娘たちとの婚姻関係を精力的に増やしたとも云われています。

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また、これまでの僕の考察による真祖・越智族の系図と、富家伝承における系図を結びつけると、国引王オミヅヌと岩戸王タジカラオが、サワケの実父と舅という位置関係になってきます。
共に怪力を謳う二人の王の時代、この時代に国を動かす、大いなる何かがあったのか。
謎はさらに深まります。

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ところで八束水の海岸にある、この石の塔は何でしょうね。金?

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14件のコメント 追加

  1. 三九郎 のアバター 三九郎 より:

    右下の家紋、調べてみました。丸に三つ扇ですね。

    「家紋のいろは」へのリンクを貼り付けます^^

    https://irohakamon.com/kamon/ougi/marunimitsuougi.html

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    1. 五条 桐彦 のアバター 五条 桐彦 より:

      なるほど、扇なわけね😲
      デザイン秀逸やな😌

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      1. 三九郎 のアバター 三九郎 より:

        最初、メタリックな手裏剣か風車かと思いましたが…💦

        Snipping Toolでその部分だけ抽出して、そのままgoogleで画像検索したら判明しました😉

        いいね: 2人

        1. 五条 桐彦 のアバター 五条 桐彦 より:

          メタリックな手裏剣、そう、それ!
          検索にもいろいろな方法があるものですね。
          便利な世になりました☺️

          いいね: 2人

  2. 出芽のSUETSUGU のアバター 出芽のSUETSUGU より:

    こんばんは。

    オミツヌさまは、髙志や美保の関をひっぱってくるときに大山、火の神岳を杭にしたのだから。。

    奴奈川姫、鳥取県の米子にお住まいだったとしてもおかしくないです〜なんていま妄想してます。大山の麓にお住まいが。。。なんて想像したら非常に楽しいです。

    米子の宗形神社のある宗像らへんすぐ近くに、諏訪神社あって上諏訪とか上安曇とか下安曇とか、地名がどうにも宗像宗像しているのです。きっと海人が九州の宗像らへんから隠岐の島、島根半島、美保の関、北陸と、翡翠やら(古代は黒曜石?)を交易してて、御穂須須美命が奴奈川姫の跡を継いででもおかしくないもん、んで奴奈川姫ちゃまは、やっぱり美保神社に住んでたのですかねえ。。三穂津姫に後世に変えられて。ヤマト政権の影響で、玉櫛姫さまのほうが全面に出ちゃってますね(T_T) 

    でも、私はX型の背中合わせ翡翠が発掘された米子市内、そして勾玉や高志の土器がたくさん出土された、妻木晩田遺跡に、長旅で寄港した奴奈川姫の一族が長期滞在しててもおかしくないなあと思っちゃいます。。それからタケミナカタこと武宗像が九州から対馬、壱岐島を経て隠岐の島に北陸へ船で渡る途中に、米子の宗像やら安曇やらで休憩したり、出雲王国の中で人口的に1番多かった妻木晩田遺跡あたりを別荘にしてくれてたらいいなあと妄想(^_^;)

    でも山陰の神社の御祭神にタケミナカタは少すぎる、特に米子には。それ考えたらありえないですかねえ。

    それから、長髄彦にされてしまった大彦。滋賀、近江の伊勢遺跡の祭祀王じゃないか、最近またそのフィーバーが蘇り1人で妄想してはたのしんでます。去年遺跡に行ってみてそう感じました。三上山近いし、そもそも野洲は大彦が物部と戦った地ですから。。兵主大社や御上神社、沙沙貴神社、そして大彦、海部尾張氏、神功皇后ともゆかりがある近江。 

    アダカヤヌシタキキヒメやカヤナルミに頭がカオスになってから、ちょっと頭をそこから離してみました。

    で、ちょっと離れてみたら、淀江の妻木晩田遺跡と滋賀守山の伊勢遺跡がまた気になって気になって。

    実際行ってみたフィールドワークや地名とかから、「あれ?」ってピンとくるカン、それから出土品、いろんな角度から検証してみる価値はあると思うんだけどなあ。。伊勢遺跡も妻木晩田も、あんまり論点になってるものを書籍も、ブログもまだまだ少なくて残念。

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    1. 五条 桐彦 のアバター 五条 桐彦 より:

      淀江は今しばらく、お待ちください😌

      いいね

  3. 出芽のSUETSUGU のアバター 出芽のSUETSUGU より:

    長くなってすみません。

    あとですね。。

    オミツヌさんの国引きの風土記によると、島根半島辺りって、闇見の地なのですよね。闇ですよ闇。。流罪地になるのもわかります。

    島根半島野波地区(古地図は野浪、こちらが古代漢字)は、昔は流罪地でもあったようです。近江源氏分流出雲源氏のルーツを持つ、松江城を護っていた末次氏は尼子に仕えていたため、毛利の追手から逃げるためにここ野浪の地に逃げたという説と、こちらの地に流刑されたという説があります。

    そういえば、尼子の敵であった毛利家も東出雲王家筋ですよね、後に口伝で知ってかなり驚きました。しかも大好きな野見大田彦や菅原道真公に繋がる直系の。(あ、偶然にも、野見、→ノウミですね。)

    根絶やしを防ぐために末次姓から別の姓に変え、伯耆の国、米子に移動し居着いた一族。でもなぜ粟嶋神社の近くに最終的に居を構えたのか、その意図を追うために島根半島の古地図を見ているうちに。。。オミツヌさんの国引きの風土記が気になってしょうがなく。

    兎にも角にも、この島根半島がキッカケで冨家の口伝を知ることになりましたから、これも何かのご縁かなと思います。闇見の地から、夜見(黄泉)の国と呼ばれた粟嶋神社へ。夜見町という地名が小さい頃、不思議でしたが、口伝を読んでその意味がわかって納得しました。

    島根半島の、今は小さな濱がある野波村にうちのご先祖様はいたんだよ、と父は祖父(私には曾祖父ちゃん)から聞いて育ったそうです。どうもこっちに逃げてきたんだよと。父からそれを聞いて以来、闇見の地が気になって仕方ありません。

    そのオミツヌさんの生家が、鳥取の姫路神社だと、富士林先生の著書に書いてあったのでずっと気になっていました。私もいつかぜひここを訪れようと思っています。アップありがとうございます☺

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    1. 五条 桐彦 のアバター 五条 桐彦 より:

      日本には、黄泉の国を連想させる場所がいくつかあります。
      それは島根半島であり、紀伊半島であり。伊勢志摩にも、安楽島という半島がそうでした。
      海に突き出た場所というのは、そうものを連想しやすいのでしょうかね。
      島でいうと、圧倒的に四国だと思います。

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      1. 出芽のSUETSUGU のアバター 出芽のSUETSUGU より:

        確かに。。。四国は死国、穢を浄化し、禊をする地というイメージありますね☺ サムハラ近辺に、阿波村(アバ?)や鴨川などの地名とか、金毘羅のお社があれだけあるのは、川づたいに船で四国から瀬戸内海、中国山地を渡って鳥取日野川まで黒曜石の交易していた四国の一族がかなり古い時代にいたんだろうなあと思います。製鉄技術が出雲にもたらされる前に。

        阿波とか飛騨とか、神門家とか。口伝もしくは世紀の発見的な何かが出てくればいいのにですね。

        ところでですね、たまに妄想するんですけどね、過去に戻れるのならば、バック・トゥ・ザ・フューチャー的に、出雲王国のツートップを武夷鳥命、ホヒ一族から護ってあげたいですね☺ 記紀に宇宙から来た八咫烏とか書かれるんかな。あ、出雲風土記のほうか。

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  4. 出芽のSUETSUGU のアバター 出芽のSUETSUGU より:

    こんにちは😃

    島根半島には、オミツヌが出雲領土を拡大する前は別の一族がいた、という五条先生の考察を何度か目にして、ずっと思うことがありました。島根半島ワールド。車で通るたびに、何か特有の風というか、異質なものを感じます。それと、少し暗い歴史が隠れてるような。。

    以下、私の勝手な考察です。(またさらにこれより前に他の一族がいたような気もするけれど。。。)

    島根半島は、古代、クナト大神率いるトラビタ族と東北土着のアイヌの人達が融合し、辿り着いた地であり、そこに伽耶王朝から逃げてきた高い海洋技術を持った人達が更に融合したような痕跡を持つ地名があります。

    まず、鳴海は、能海、濃海、野波(野浪)、ナルミ→ノウミとも言われ、其々意味的には、穏やかな海ではなくて、荒い海を表す漢字がついてます。鳴る海も騒々しい、そして「野」は、大陸の漢字由来の意味としては、荒々しい、猛々しいという意味です。また、アイヌ語では、トリ、カヤは、船の帆や竿を指すそうです。

    加賀の潜戸は、今でも小さい船だと、新潜戸の中に入ると恐ろしく揺れます。江戸時代、古くはあそこを潜るときは、ギャーギャーオーオー吠えて潜らないと良くないことが起こるとされていたようです。加賀は、賀夜奈留美命の別称である賀屋であり、私には、加賀の潜戸が、「賀屋のクナト」に思えてきました(^_^;)

    また、ナルミという地名の近くには、米子の成美地区もそうなんてすが、カヤがつく地名や神社が割と多い気がしますね。島根半島は野波(ナルミ、ノウミ)の近くに比加夜神社があります。山を1つ越えたところですが。カヤには茅、萱、伽耶、賀屋、加悦、いろんな漢字がありますが、萱と言えば。。。鵜葺草葺不合命が思い出されますね。そしてカヤ、伽耶と言えば製鉄、迦具土、火の神というイメージもありますね。伽耶王朝は鉄の産地でもあり高度な製鉄技術も持っていたのでしょうね。

    https://jinja.matsue-hana.com/jinja/hikaya.html

    こちらのブログには、比加夜神社と諏訪大社のことが少し触れてありますね。。八幡大井神は応神のこと。諏訪神社の気になる部分です。建御名方の名前は。。残念ながらありませんでしたね。

    グチャーっと、カヤナルミとトリナルミ、宇佐家と宗像家。宗像→ムナカタ→ミナカタ。。。佐太大神。オミツヌさん、どうかそこら辺の島根半島ルーツのヒントを教えて下さい。クナトと佐太大神の関係も誰か教えて。。猿田彦は岐神として結構祀られてますね。

    (-_-;)という今の心境です。。。残念ながらトリノナミ頭の私は(このネーミングはかなり失礼か。。)、五条先生の考察する、島根半島に前からいた別の一族説を聞いてみたい欲望がムクムクなこの頃です。

     

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    1. 五条 桐彦 のアバター 五条 桐彦 より:

      それでいくと、カヤノ姫なんかも関係してきそうですね😊

      いいね

  5. Nekonekoneko のアバター Nekonekoneko より:

    🐥二本の矢を一手とし、二百本の矢を百手撃つとは剣呑ですな。ちと多すぎやしないか…🐤

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    1. 五条 桐彦 のアバター 五条 桐彦 より:

      矢屋が儲かって笑いが止まりまへんなぁ💴

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      1. Nekonekoneko のアバター Nekonekoneko より:

        🐥矢屋とか桶屋とか胡散臭い🐤

        いいね: 1人

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