「阿麻氐留神社」（あまてるじんじゃ）は、対馬の小船越、ちょうど上対馬と下対馬の境目、対馬のくびれに鎮座する神社です。

祭神は「天日神命」（あめのみたまのみこと）。

『神名帳考證』に「阿麻氐留神是天日神命也」とあり、この神は津島県直の祖神と考える向きがあります。
『日本書紀』顕宗天皇紀では、壱岐の月神と共に高御魂命の末裔として現れ、阿麻氐留というのは「天照神」だったと考えられています。

太陽神の説話に関して、中国には、太陽はもともと10個あり、旱魃が起きたため羿という英雄が9つを射落としたという神話があります。

阿麻氐留神社にも弓で的を射る神事が伝えられており、その関連が指摘されているとのこと。

『先代旧事本紀』の 「国造本紀」では、対馬県主の祖を「建彌己己」（たけみここ）としていますが、「天神本紀」ではこの天日神を対馬県主の祖としています。
天日神は別名を「天照魂命」（あまてるみたまのみこと）と呼ばれており、「天照国照彦火明命」と同神であると考える説が根強く、それでいくと天日神は徐福のことである、ということになります。

古事記に準じるならば、対馬県主の系図は

天穂日命
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天夷鳥命
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伊佐我命（櫛八玉＝伊勢津彦）
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建弥己己命（対馬県主＝漆嶋＝漆部）
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伊奈久比命（対馬の伊奈の伊奈久比神社）

のようになり、ホヒのオヤブンである徐福が対馬県主の祖・天日神として君臨していてもおかしくはない、ということになります。
しかし𝕣𝕦𝕔𝕙𝕠𝕝𝕝𝕖𝕣𝕚𝕖さんから頂いた情報によれば、出雲より移住した西の郷戸家（神戸家）は迫害を恐れ、祖神のサワケを天穂日と見せかけ、このような系図に書き換えたということのようです。

このように、ある一族が他族からの迫害を恐れ、別の氏族のふりをすることを、僕とnarisawaさんとmonoさんの間では”ホヒる”と呼ぶことで、一致しました。なんのこっちゃ。

冗談はさておき、𝕣𝕦𝕔𝕙𝕠𝕝𝕝𝕖𝕣𝕚𝕖さんが提唱する、真の対馬県主の系図は

八束水臣津野命
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赤衾伊能意保須美比古佐和気能命
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伊佐我命（櫛八玉＝伊勢津彦）
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建弥己己命（対馬県主＝漆嶋＝漆部）
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伊奈久比命（対馬の伊奈の伊奈久比神社）
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阿比留氏

ということになり、僕もこの説を念頭に考察を重ねたいと思っています。
すると天日神とは、出雲の太陽の女神ということになるのでしょうか。

𝕣𝕦𝕔𝕙𝕠𝕝𝕝𝕖𝕣𝕚𝕖さんから頂いた情報は、多くの書物・系図を読み込んで導き出されたものばかりで、目から鱗が落ちるようなものばかりでした。
その中には、まだ僕の理解力が及ばないものも多く、少しずつ消化しながら、次の旅の計画を練っていこうと思いを新たにしました。

さて、この阿麻氐留神社から見える入江と、

この小道の先を結んで、古くは「船越」（ふなこし）と呼ばれていました。

ここは対馬のセクスィなくびれの部分になります。
ここは古代より、日本と朝鮮半島・中国大陸を往来する航路の要衝でした。日本からやってきた船はまず鴨居瀬（かもいせ）に着岸し、岸沿いに船越へやって来ました。
「船越」という名称は、小さな船は陸揚げして対岸へ運ばれ、大きな船は人と荷物だけを陸上げし、対岸に用意した別の船に載せて、半島・大陸を目指したと、ブラタモリさんが言っていました。たぶん。

この陸越えの際に、航海の安全を祈願したのが阿麻氐留神社だったのでしょう。
対馬県主や対馬の支配者であった宗氏らは、関税でさぞウハウハだったようで、船越の町も相当賑わったといいます。
しかし、かろうじて陸続きだった上対馬と下対馬に寛文12年（1672年）堀切水路が完成します。
するとこちらは大きな船が越えられるので大船越と呼ばれるようになり、従来の船越は小船越（こふなこし）と呼ばれて町は寂れてしまったということです。

まっこと諸行無常の響きありです。
この小船越の西側には、いにしえの雰囲気を今に残す「西の漕手」（にしのこいで）という古代港跡があります。

そこがまあ、なんとも素敵な場所でした。

かつて、この地を多くの人々が行き交い、この小さな港から旅立っていったのです。
その人の中には伝教大師最澄もいたと伝えられ、552年、百済の聖明王から献上された仏像などを運ぶ途上にも一行は小船越に寄り、当地にそれらを一時安置するためにお堂を建てたといいます。
その仏像は、日本に仏教を伝来させた始まりの仏像であり、今は長野善光寺の本尊「一光三尊阿弥陀如来」として安置されています。

海岸が海水によって激しく浸食された、複雑に入り組んだリアス式海岸の港は、波がほとんどなく、辺りの景色を映し出していました。

このいにしえの水鏡を見つめながら、僕は思います。
この十数年旅を続け、人知れない聖地にも足を運び、美しい景色に出会えて来たのは、多くの友人から貴重な情報を惜しみなく頂いたからなのでした。
その中には、九州王朝説など論を異にする方からの情報もありました。

情報というものは、その人の情熱と時間、お金をかけた宝なのです。それを提供してくださるご厚意に深く感謝申し上げます。
僕はSNSなどでは、コメントを残すことが少ない方です。それは面倒でもあり、一般常識とは違う説を吹き込むことで、その人に嫌な思いをさせてしまうことを危惧するからでもあります。

たまに、情報を提供くださる方々の真似事をして、古代史に興味を持っている人、一般常識の古代史に疑問を持っている人に、僕も情報を提供することがあります。
しかしそこで「ああ、はいはい」的な対応を受けると、やはり言わなければ良かったと思ってしまうのです。
古代史ファンにありがちなことですが、自説に同調的な意見は受け入れやすく、異説は拒絶するという体質は、つまり目の前に広がる知識や経験のチャンスの喪失であり、古代史研究が発展しない要因となっています。ヤマタイ国論争が永遠に終結しない理由なのです。

謙虚であれ、という言葉は、実践するのはなかなかに難しいことですが、眼前に広がる世界を深く知りたければ、人の知識と経験に敬意を払い、謙虚であることが何よりも近道であると、思われたのでした。