五ヶ瀬町にある「うのこの滝」も、重要な場所であったと佐織さんは言います。

うのこの滝へ行くには、「五ヶ瀬の里キャンプ村」の向かいから細い道に入っていきます。

駐車場からは５分ほど、ぐいぐいと下に降りる遊歩道。

傾斜はそこそこあり、降った後はもちろん、登って帰ってこなければなりません。
遊歩道を抜けると、

柱状節理の崖に囲まれた「うのこの滝」が姿を現します。

滝の落差は20m、滝壺の大きさは5,000㎡。
圧縮された質量をもつ巨岩に囲まれた滝は、神の箱庭のような印象です。

佐織さんの母・鈴さんの時代は、もっと水量が多く、その頃は村の人たちで、ここに祀られる水神を大切にしていたそうです。
上流に桑野内ダムが出来て以降、うのこの滝の水量は激減してしまいました。

この滝の名前は、鬼八伝説に出てくる、鵜の目媛の名前を彷彿とさせます。
ただ、古くは「猪の子の滝」とも呼ばれていました。

イノシシといえば、高千穂神社で行われる鬼八伝説の『ささふり神事』がありますが、神事において捧げるイノシシは、昔は若い女の子を生贄としたと伝えられていました。
僕は『ささふり神事』は元からイノシシを捧げた祭りであったと考えていますが、「若い女の子を生贄とした」というフレーズは、橋本家に生まれた女子のありようを比喩したものではないかと思えてきます。

代々、女子を多く産む家であった橋本家が嫁を出すのは、代々、男子を多く産む興梠家（五ヶ瀬の興梠）であったそうです。
高天原・桑野内の神の家には、橋本と興梠が住んでおり、イザナギ・イザナミの祭祀をしながら今に至るのだと、佐織さんは言います。
高千穂は鬼八と鵜の目媛の真実を伝説に変え、桑野内の橋本と興梠は隠されてきました。
桑野内の興梠家には『八』の字を大切に名前に残しているそうで、『キュウ』と『八』の名から産まれた子供たちが、たくさんいるのだとのことです。
かつては禊の地であったと思われる神秘の滝は、桑野内の入口で、今もひっそりと水を湛えていました。