
「宿ですが、鶴富屋敷ももちろん良いのですが、
今回は、綾野ファームでお願いします。
五条様に了承いただければ予約しておきます。
(お氣に召さなかったら、帰りに深くお詫びします。)」
・・・えっ?・・・鶴富屋敷・・・じゃないの??


というわけで、僕は今、2度目の宿泊のために「綾野ファーム」を目指しています。
そもそも、僕が余裕で日帰りできる椎葉村(片道2時間)に、わざわざ泊まってみようと思ったのは、Aさんが
「今、 鶴富姫の屋敷に長期滞在しています」
って言うもんだから、
「えっ、鶴富屋敷って泊まれたの?」
ってなって、じゃあ
「僕も宿は鶴富屋敷で取らせていただくつもりです」
って返信したのに、鶴富屋敷やないんかーいっ!ってなったわけですよ。
すんすん。

でもまあ、椎葉を知り尽くしつつあるA氏がそう言うんだから、綾野ファームさんてよほど良いとこなんだろうねって期待していたら、ほらね、もう凄い。
椎葉村の中心地で椎葉厳島神社がある上椎葉地区から車で30分、まあまあな細道を走って来て、今ここ。
あの小さい赤い案内板、わかる?
あれを見逃したら、永遠に、綾野ファームには辿り着けないからね。

こっからの道はGoogleマップにも載ってなくて、運良くこの道に入って来ても、不安になる道を延々とさらに進まなければなりません。
よく、「呼ばれないと行けない神社」なんてあるけどさ、綾野ファームさんって正直、「呼ばれても行けない宿」だよ、ほんと。

そしてようやく入り口が見えて来ました。
ここまで来て、やっと安堵の息が漏れます。

で、なんで2度目なのかっていうと、
そりゃもう、通いつつあるからですよ。
そんくらい、良すぎなのよ、綾野ファームさんは。



綾野ファームさんに着いたら、2階の部屋に荷物を置いて、まずはこれですよ、「五右衛門Bath♨️」。

夏でも涼しい椎葉村は、秋から春の間の夜は特に冷え込みます。

だから薪で温めた五右衛門風呂は、冷えた体に最高のご褒美になります。沁みるのよね、この熱さが♨️

この五右衛門風呂は、側面はやや熱いくらいで、火傷するような熱さにはなりません。
しかし足元はやはり熱いので、この木の蓋の上に足を乗せて湯に浸かります。

Aさんが山で採って来てくれたこの木、クロモジと言って、とても良い香りのする木なのです。
精油が多く含まれ、芳しい香りがあり、高級楊枝の材料やお茶、アロマオイルとして利用されます。
これを入浴剤がわりに湯に入れて、五右衛門風呂を堪能させていただきました。
苦労して来た甲斐があったよ。
綾野ファーム、最高やわ。。。カエルめっちゃいたけど。

そして風呂の後は、待ちに待った夕食です。

「綾野ファーム」さんはご主人の”勇さん”と、奥様の智代美さんご家族が営む「農家民泊」です。
食事はこうして、ご家族と一緒に食卓を囲んでいただきます。

料理はすべて、智代美さんの手作り。
お母さんの味、というやつですね。

野菜類もほとんど椎葉産、それも多くが綾野ファームで栽培されたものなのですが、お肉がまたすごい。

猪肉の唐揚げ、

鹿肉のカルパッチョ、

鴨のロースト、

鯉のあらい、などなど、ジビエ料理が勢揃い!
どれも臭みがなくて、ジューシーで美味しいの😋

ウマ、ウマって食べていたら、外でガーガー鳴いている鴨の声が聞こえるんだよね。
「ひょっとしてこの鴨肉って・・・」
「さっき、私がツブしました♪」
って、智代美さんが可愛い顔でおっしゃいます。

猪や鹿は勇さんが狩ってきたもの、鯉や鴨は農園で飼っているもの。
買って来たものを食べているだけはわからない、命を大切にいただく、ということを改めて実感する食卓です。

とにかく豪勢豪華な食事ですが、今日は宿泊客がいるからなのかなと思いきや、
「いつもだいたいこんな感じです」
という智代美さんの笑顔に、僕はすっかり綾野ファームの子になりたいと思っちゃうわけですよ。おっさ、大人だけども。



勇さんと智代美さんは、家をリフォームしたとき、せっかくなら屋根裏部屋を作ったらという提案を受けて、宿泊者用の部屋を3部屋作られたそうです。
そうして農家民泊「綾野ファーム」が誕生しました。

2階の部屋は一人部屋がひとつ、

2段ベッドのある部屋がひとつ、

数人寝れる、広めの部屋がひとつあります。
基本的に宿泊は1日1組までとしており、どの部屋でも快適に過ごせ、夜はふかふかの布団でぐっすり寝むことができます。

清々しく朝を迎えたら、朝食です。

勇さんご家族と一緒に食べる朝食は、もちろん旨し。
小学生のお孫さんは、ひと足先に学校に向かいます。
椎葉村では、小学校に行くのも大変なのです。

勇さんが勧めてくれた、日本ミツバチの甘い蜂蜜を、たっぷり焼き餅につけていただきました。
甘く、やさしい味が、口に広がります。

綾野ファームさんに宿泊した、3月と6月。
3月は春とは言え、まだ冬枯れた景色が広がっていました。

椎葉の女神は雨好きですが、そんな景色も美しい。

綾野ファームにはポニーや牛、ヤギや鴨など、たくさんの動物がいます。

乗馬や飼育体験なども希望で受けることができ、また、天気の良い日はお手製の薪窯でピザを焼いたりもできるそうです。

昨夜ご馳走になった鴨さん。
近所の田植え農家さんが無農薬栽培のために、雛を田んぼに放つのだそうです。
雛のうちは害虫などを食べてくれるのですが、大きくなると稲まで食べちゃうので、そこで勇さんが買い取るとのこと。

椎葉は水が豊富で、どこでも良質の天然水が溢れています。
その水でイケスを作り、勇さんは鯉を飼っていました。
この鯉を使って、勇さんは稲の無農薬栽培にチャレンジしています。
鯉も稚魚のうちは田んぼに放てますが、大きくなると難しくなるので、智代美さんの手で捌かれて食卓にのぼることになります。
茅乃舎さんの椎葉村を紹介した動画、素敵だから見てほしい。
勇さんと智代美さんも登場します。

椎葉には豊かな水があり、循環する食がある。
それにここには「かてーり」があるのです。

「かてーり」とは椎葉の伝統的な助け合いの精神を示す言葉。
蕎麦刈りや田植えなど、みんなで協力し合って暮らしを守ってきた村人たちの心のよりどころとなってきた素敵な言葉です。

Aさんはそんな椎葉の人と暮らしを知って欲しくて、僕を綾野ファームに誘ってくれたのでした。



6月に泊まりに来た時は、椎葉は新緑に染まっていました。出づ芽色です。

朝食後、勇さんは愛犬と共に、お気に入りの庭へ僕を案内してくれました。

椎葉がたっぷり詰まった、この景色。

山の中にちょこんと見える集落が、ことさら椎葉らしさを彩ります。

勇さんはここに東屋を建てて、みんなのくつろぎの場にしたいとおっしゃいます。
それはなんと、素敵なことか。
こんな景色を一日中眺めて、僕も過ごしてみたい。

椎葉に至る道は細く、たびたび災害も起こり、通行止めになることもしばしばです。
しかし椎葉の人たちは、慌てることはないそうで、それは豊かな自然と循環する命、それに「かてーり」があることを知っているからなのだと思われます。

ここに住む人たちは、外の世界を知ってなお、故郷の良さを忘れることのない、椎葉のミツバチたちのよう。

すっかり騙されて連れてこられた綾野ファームでしたが、Aさん、本当にありがとう。
こんなに素敵な世界は、他にはなかなか、ないのだから。



そして8月、日帰りで椎葉村を訪れた僕は、ぶらりと綾野ファームさんを訪ねていました。
アポ無しで訪れた僕は、手土産だけ渡して立ち去るつもりでしたが、勇さん、智代美さんに歓待していただいて、お茶をいただくことに。
そこで紹介された椎葉の新名物ですが、椎葉の柚子と椎葉の大根、椎葉のハチミツを素材としたシャーベット「椎葉物語」、

なんと、これを監修したのが智代美さんだということでした。

帰り道に物産センターに寄ってみたらあったので、一つ買ってペロリ。冷たくって、あま~い。

さすが智代美さん、ほんのり甘酸っぱくて、後味スッキリの上質なシャーベットです。
椎葉の香りが詰まった「椎葉物語」は通販でも購入できます。
思えばAさんに誘われて以来、だいたい2,3ヶ月おきに綾野ファームを訪ねていた僕。
そろそろあたたかい、あの家が恋しくなって来ました。
秋もやって来たことですし、五右衛門Bathの湯心地も、よろしい季節になったのでした。

魅力的なお宿です!あの細い道の運転は私だと苦労すると思いますが、だからこその幻想的な光景。
五右衛門風呂に、地元のごちそう♪どれもこれも美味しそうです。是非一度お伺いして、家でも真似してみたいです。茅乃舎さんの動画、とても興味深く拝見しました!
いいねいいね: 1人
coccocanさんなら、一緒に台所にも立てそうですね。
綾野ファームさんはお宿というよりも、実家に近い親戚の家、みたいな感じでしょうか😊
いいねいいね: 1人
行きたいです(切実) 行こうと強く願えば叶うと信じています✨ 今実は割りと近く😉⭐(地図で見るほど近くないのも宮崎県ナビいらずの身ゆえ承知です ꉂ🤣𐤔)
素敵すぎな綾野ファームさん、遙か41年前、北海道で自然そのものの「子どもの村」立ち上げスタッフだった時の事を思い出しています。トラックの荷台に牧草と一緒に乗り、鹿を撃ち…令和に健在なそんな暮らし、また体験したいです。
いいねいいね: 1人
ぜひとも!
narisawaさんとかもご一緒だと楽しくなりそうですね♪
とんでもない事になりそうな予感もしますが😁
いいねいいね: 1人
なんと言う事をw
本当にそうなっちゃうかもしれないから言葉にしちゃいかんのですww
いいねいいね: 2人
言霊、ですね😁
いいねいいね: 1人
narisawa110
そうそれww。判ってらっしゃる。
そして起きた事に後で文句なんぞ言ったら更にこっちが消滅の危機にww
二度目を誘うホイホイ。何と芳醇な誘惑。
いいねいいね: 2人
😋
いいねいいね: 1人