向山神社:常世ニ降ル花 天之高原篇 17

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椎葉村の向山日当、集落の少し手前に「白水の滝」(しらみずのたき)があります。
昔、壇ノ浦の戦いに敗れた平家の残党が御池に本陣を構え、その時にこの滝の上流が昼の休憩場所となり、川の水で米をとぎ昼食を準備しました。
そのとぎ汁が滝に流れて真っ白に見えたことから、この名で呼ばれるようになったと伝えられています。

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滝の水はまさしく白。白龍の姿のようです。
しかし白水の滝の上流と、御池がある白鳥山は方向が違っており、伝承にはやや矛盾が生じます。
源氏の追っ手から逃げる平家が、この辺りをウロウロしていたというのであれば、ずいぶん呑気だなと感じてしまいます。
この白糸の滝は、これから向かう向山神社の禊場だったのかもしれません。

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日当集落の先、白鳥山へと登る途上に、「向山日添」(むかいやまひぞえ)集落があります。
26世帯、住民約80名の集落で、生業として県指定無形民俗文化財に指定されている「焼畑」(やきはた)が継承される全国唯一の地だということです。

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向山日添神楽は12月に地区公民館である「峰越の館」にて奉納されます。

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以前は民家を神楽宿とし輪番制で行っていましたが、現在は公民館に御神屋を作り奉納されています。

【15分ver.】

夜神楽は神事を司る太夫(たゆう)、舞を司る仲司(なかじ)を中心に、世話役である通頭(つうかしら)などで構成され、「神屋(こうや)のツカワレ」とよばれる未婚の女性が夜神楽の間、御神屋内で飲食の補助をします。

【2時間ver.】

この「日添」という集落名ですが、「日に添う」と僕はそのまま解釈していましたが、鞍岡で湧水”四億年の雫”を利用した水田地区が「日蔭」と書いて「ひぞえ」と呼ばれていたことを思い出しました。

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位置的にはこのようになり、山間において陽だまりのような場所である日当に対して、日陰になる場所、と言う意味かもしれません。
鞍岡で感じたことですが、日の陰になる場所というのは、昏き水龍「闇龗神」を祀る重要な場所と考えられていたのかもしれません。

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日添の道脇から対岸を望むと、まるで姉妹集落のように、同じ標高に日当集落が見えていました。

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2025年、今年の3月に、Aさんと『古代戦士ハニワット』の武富先生と3人で椎葉村に来た時は、曇天に冬枯れた景色が広がっていました。

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軽トラで案内してくれるAさんはおもむろに車を止め、「外へどうぞ」といいます。
降りて景色をみると、

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うわぁ、絶景。

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椎葉の谷から、雲が生まれています。

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この先の向山神社近くの椎茸栽培農家さんも、Aさんの研修先のひとつなのですが、そこの屋号が「神輿」(みこし)と言うそうなのです。
尾前(御前)、日当、日添ときて、神輿。

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思えば、赤い鳥居にあった「天降日之宮」(あまもりひのみや)ですが、小島氏はなぜ天孫降臨の地を「天降日之宮」再建の地としたのでしょうか。
日之宮とは、日当をはじめとする、向山の宮ということではないのでしょうか。

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とまあ、そんなことはさておき、僕はいっときの間、このメルヘンな風景に見惚れていたのでした。

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白鳥山の5合目くらいでしょうか、「向山神社」(むかいやま/むこうやまじんじゃ)へとやってきました。

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ここも平家落人伝説の地となっています。
祭神が何故か「日本武命」(やまとたけるのみこと)となっていますが、明治期あたりに「白鳥権現」の名から祭神に宛てがわれたのでしょうか。

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白鳥とは何を意味するのか。
昔は九州にも多少、白鳥が飛来していたとはいいますが、どうでしょうね。
向山というのも、向家の「向」ではないかと勘繰ってしまいます。

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静まり返った境内。

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そこには、たくさんの椎茸の原木が置かれていました。

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Aさんは、「シイタケとお茶、そして水に着眼すると、椎葉村の豊かさの一端を垣間見れる」といいます。
どの家にも水源がある、と言えるほど、椎葉村はとにかく水が豊富なのです。

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水があると言うことは、作物が育つということ。
作物があれば、馬や牛を飼うことができます。
清らかな水があれば、命は健やかに育ちます。

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Aさんはお茶にも詳しく、水成岩で形成された村落に散見される茶は在来種も多く、椎葉村では相当に質の高いお茶を作ることが可能だといいます。
実際に、道路わきの岩場のそこかしこに茶木の自生を目にするのだと。

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「5月頃、鉄のフライパンとカセットコンロがあれば、簡単に自分だけのお茶を作れるので、機会があれば、是非試してください。
椎葉の湧き水で淹れれば、最高のひと時が訪れると思います。」

と教えていただきましたが、自生した茶葉をモミモミして、フライパンで炙ったら良いのでしょうか。
たしかにそんなティータイムは最高でしかありません。
道具なら、ある。

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向山神社は日当・日添・追手納など、隣接する各地区の氏神様で、それら集落に他の神社はありません。
神楽は集落ごとの公民館などで行われ、当神社の祭祀についても、集落ごとに個別に執り行われるとのことです。

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そして椎葉村全体でも言えることですが、特に向山地区の男性は、子育てが上手なのだそうです。

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家族思い、愛妻家、子煩悩な男性が多いとの評価があるようで、綾野ファームの勇さんを見ていると、確かにそう実感します。

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日本最後の秘境には、今の日本人が忘れてしまった日本人の姿が、残されているかのようです。
一見すると僕らが不便に思うような場所ですが、自然が豊かで、自然と人を大切にする村人の心が豊か。
真の理想郷が、このような世の中であってもまだ、残されているのです。
ありがたい。

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向山神社は車で来ると、裏参道の方に着くようで、正面側から下りると、この大きな杉の木があります。

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この木は「壱の杉」(いちのすぎ)と呼ばれ、樹高約30m、幹囲7.2mほどで、樹齢は800年と伝承されています。

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名前の由来はこの辺りで一番大きいかららしく、椎葉らしい、おおらかさがにじむネーミングだと思いました。

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ここは出雲サンカが、移りゆく世から隠し守りたかった聖地、なのかもしれません。

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Aさんは向山神社で作業していたとき、「陽射しの美しさが神秘的で、もしかしたらこの辺りが椎葉の発祥なのかも」と話しておられました。
それで僕も日を改めて、立ち寄ってみました。

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確かにきれいで清々しい空気に境内は満ちていましたが、Aさんの言葉には及ばない気がしました。
おそらく、日時や気候的な条件があるのでしょう。
それでも確かに、ここから椎葉が生まれたのだと、僕にも感じたれたのでした。

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4件のコメント 追加

  1. 三九郎 のアバター 三九郎 より:

    こちらも向山ですね。熱海の多賀神社の神奈備も向山。大元本にも、熱海は海部からの由来とありますが、共通項としては多氏でも繋げられる気が…それとも、もう一、二層前の民族?

    鶴、白鳥など、どの氏族のどの思いを示す、または暗示していたのでしょうか^^

    コウノトリの古語は、鸛鶴【こうづる】であり、鶴の漢字が入るので、鶴というのは白い鳥のこと全般をそう呼んでいたんだとは思いますが…

    それとも、ツルという音自体に、何かの意味をかけているのか。製鉄用語にも”ツル”はありますね。

    ネット上には、鳥の別称や古称リストをつられている方もいるので、調べてみるのも面白いですよ♪権利上、その方のページリンクを貼っていいのかよくわからなかったので、貼り付けは止めておきました。

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    1. 五条 桐彦 のアバター 五条 桐彦 より:

      先日お会いしたシズさんも、鳥に注目されていました。
      確かに鳥の名を持つ古代人も多いですね。

      いいね: 1人

  2. 不明 のアバター 匿名 より:

    narisawa110

    龍が地を這う様にして蠢くかの様な雲海。神秘的ですね。

    いいね: 1人

    1. 五条 桐彦 のアバター 五条 桐彦 より:

      龍っぽいよねー🐉

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