
神秘の島「壱岐」。
その最果ての場所に、地元の漁師も近づかないという場所があります。
「ケンの池」、そこは呪われた池だということです。

ケンの池に僕が最初に訪れたのは、2017年の夏でした。
その時上げた記事は、気がつけば検索で上位に表示されるようになっていました。

以前は正確な場所を記しておりませんでしたが、ネット上ではすでに情報があふれておりますので、『偲フ花』でも解禁とさせていただきます。

場所は「平瀬」とあるところの手前の☆マークのところ。
平瀬は日本の排他的経済水域を守るために重要な場所です。
ケンの池は簡単にアクセスできそうですが、意外と苦戦します。
靴はしっかりしたものを推奨します。

荒い岩場をしばし歩きます。
手前のビーチのにぎわいに反して、ひと気はなく荒寥とした空気が漂っています。

ケンの池へ行く際の注意点がもう一つあり、干潮のタイミングを狙う必要があります。

満潮時の到達は不可能に近く、その他の場合でも大きくルートを迂回する必要が生じます。

足場の悪い石の上をしばらく歩き、ついにその池が姿を現しました。



ケンの池はかつての壱岐の王、カザハヤ王が財宝を沈めた池で、のぞき込むと、その人の欲しいものが池の真ん中に浮かびあがり、それを取ろうと池に入ると、そのまま引きずり込まれると伝えられています。

前回訪れた時は、もっとグリーンに濁った状態でしたが、今日はとてもクリア。のぞき込まずにはいれない、不思議な美しさを湛えています。

また、前回はゴミも多く、レタッチに苦悩しましたが、今回はそれらも除去されています。
おそらくケンの池に訪れる人が増え、地元の方が危険な場所で清掃活動をなされたのだと思います。今日この素晴らしい景色を見せていただき、感謝します。

この外海は、遭難者の遺体が流れ着く場所のようで、それゆえに心霊スポットのような噂が流れています。
当然そのゴミも、観光者が落としていくものではなく、海の向こうから心なく捨てられたものが、漂流してくるのです。

ここではしゃべる牛が現れ、なにやら語りかけて去っていくのだとか、外人の霊が出るとか、そういった噂があるのですが、聖地を穢す隣人に直接文句も言えず、こうして訪れた人に訴えかけているのかもしれません。

この池は底で外洋と繋がっており、引きずり込まれるのだとも云われています。
見た感じ、そうは見えませんが、池に入ってはいけません。
実際に死者も出ており、地元の漁師でさえ決して入らない池なのです。

対岸の大きな岩山の穴ですが、

頑張ると、こういう風に見えます。
危険を冒せば、もっと龍っぽくみえるそうですが、僕はこれで十分満足です。
これはあれです、

宮崎の大御神社(おおみじんじゃ)摂社「鵜戸神社」の『昇り龍』と同じだそうです。
片方の壁は自然のままで、片方の壁は人工的に加工され、昇龍の如き影を作り出すのです。

そうして見ると、この岩は神の依代(よりしろ)なのかもしれません。
実はこの岩は、

海側から見た時の、あの「さざえ岩」だったのです。
ソフトクリームみたいだとか言って、本当にごめんなさい。

島内から見れば、ちょっと爬虫類の何かのように、見えなくもない、かな。

この赤い鳥居の社は、流れ着いた遺体の御魂を鎮めるためのものだと思っていましたが、どう見ても稲荷社です。
鎮魂に稲荷社は普通使わないのでは。
ではケンの池とは一体何なのか。

壹岐嶋といえば、月の島。月読の元宮と呼ばれる聖地が鎮座しております。
だとすれば、この澄んだ呪いの池は、実は月を映しとるための水鏡なのかもしれません。満たす水は変若水か。
ならば水底は、常世に通じているのも道理というものです。

この近くには、水晶谷と呼ばれる場所もあり、名の通り水晶が取れるらしいですが、それはこの地のヌシの所有物で、持ち帰ると不幸があると伝えられています。
水晶も、どことなく月を連想させます。

帰り道、禁足地の森の前に、赤い鳥居を見つけました。

こちらも稲荷ですね。
稲荷の神体は、白蛇です。

月読みの聖地である可能性を見たケンの池ですが、やはり長居はすべきでないと感じました。
うかつな気持ちで近づくべきではない場所です。
ご参拝は自己責任で、くれぐれも御用心ください。

五条 桐彦さま
こんにちは。
お忙しい中、とても丁寧なご返信をいただき、本当にありがとうございます。
カザハヤ王・カザハヤ姫の伝承についてのご考察、そして伊勢津彦との関連性や、水晶にまつわるお話など、非常に興味深く拝見いたしました。
特に、水晶採取地としてのケンの池周辺と
古い祭祀との関係の可能性は、私自身まったく視点がなかったため、大変参考になりました。
もし差し支えなければで構わないのですが、水晶や“水晶をめぐる伝承”について、
五条さまが印象に残っているお話や、
参考になさった資料・サイトなどございましたら教えていただけるととても嬉しいです。
もちろん、ご存じなければその旨だけで十分です。
このたびはご丁寧な返信を心より感謝申し上げます。
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水晶をめぐる伝承というのは、これといって存じ上げませんが、高千穂でも高純度の水晶が採れると聞いています。
もっとも、水晶は日本中で採れる、鉱石の中でもポピュラーなものではありますが。
古代出雲王国では、翡翠の勾玉は身につけることが王家の嗜みでした。またたとえば、由布院の宇奈伎日女は稀代の巫女であると思われ、ウナギとはウナグ、大きな勾玉を表しているとのことです。
そのようなことで、水晶もまた、古代から祭祀に使われてきたのではないかと思われます。
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五条 桐彦様
このたびは、お忙しい中ご丁寧なご返信をいただき、誠にありがとうございました。
水晶や勾玉にまつわるお話、また古代祭祀との関係についての考察までお聞かせくださり、とても興味深く拝読いたしました。
壱岐における水晶伝承については、大変参考になりました。特に、全国的な鉱物文化や古代の宝玉信仰と関連付けてご説明くださった点は、自分では気づけない視点で、たいへん勉強になりました。
壱岐の伝承は、古い口承や地名、古代の風習が複雑に重なって、独自の世界が形作られているのだと改めて感じています。
その中にあるケンの池の伝承についても、文献だけでは分からない部分が多かったため、今回のご意見は大きな手がかりとなりました。
お忙しい中、貴重なお時間を割いてご回答くださり、本当にありがとうございました。
また何かご迷惑でなければ、今後も壱岐について学ぶ際の参考にさせていただけましたら幸いです。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
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お力になれたのでしたら、幸いです。
某スピリチュアルにずいぶんと浸食されている壱岐島ですが、歴史的にも、我が国の宝の島です。
先祖が大切に守られてきた聖地が、人の我欲で穢されぬことを願っております。
ちなみに、ケンの池で水晶を見つけられても、持ち出しは控えられることをお勧めします。
実際に持ち出して不幸な出来事が続き、返却に再訪することになったという話を、幾つか聞いております。
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はじめまして。突然のコメント失礼いたします。
壱岐の「ケンの池」について調べており、こちらの記事を大変興味深く拝見しました。
特に「カザハヤ王の宝を沈めた」という伝承について知り、参考にされた情報源(差し支えない範囲で構いません)を伺えればと思い、コメントさせていただきました。
個人で全国の民俗資料・伝承を整理しており、いただいた情報はあくまで背景調べの参考とするのみで、記事内容の正確性や裏付けを求める意図はございません。
もし可能な範囲がありましたら、ご教示いただけますと幸いです。
よろしくお願いいたします。
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こんにちは。コメントありがとうございます♪
ケンの池について最初に記事を書いたのは2017年のことで、カザハヤ王の伝承も、その時ネットで情報を得たのを覚えています。どのサイトだったかももはやわからなくなり、十分なお答えにならないこと、誠に申し訳ございません。
今も検索をかけると、当地にカザハヤ王とカザハヤ姫がいたと説明するサイトがあります。これが正しいとするなら、王と姫(巫女・妃)の古い制度があったことになりますので、カザハヤとは当地の地名・呼び名であった可能性があります。
対馬に関連する神に伊勢津彦がおります。
伊勢津彦は一般に風の神とされます。
カザハヤとは普通に考えれば、風早の字が充てられるかと思いますが、彼が関わっているとするなら、カザハヤ王・カザハヤ姫は、伊勢津彦・伊勢津姫というふうに置き換えられるのかもしれません。
壹岐嶋は古代安曇族の聖地であったことは間違い無いと思われ、同時に月読みの祭祀も行われていたと僕は考えています。
ケンの池周辺は水晶が採れる場所で、祭祀場跡と見受けられる場所もありますので、古代にケンの池に月を映し、そこで採れる水晶をもって祭祀が行われていたのではないかと夢想します。
ケンの池に伝わる財宝云々はこの水晶を表し、ホラー話はその聖域に無闇に近づかないようにとする戒めなのかもしれません。
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