
Aさんという人もまた変わった方で、独特な魅力を持つ人です。
「金沢市からシイタケ栽培の研修で椎葉村に来ています」
と言っていたAさんは、それまでシイタケや農業に縁のなかった人で、なんなら金沢もゆかりなく、今はたまたまそこに住んでいるとのこと。
転々と移り過ごしてきたようで、その縦横無尽さが、”なんだかサンカのような人だな”、と感じたものです。

3月にお会いした時も、”初めて会ったような気がしないよね”という陳腐なナンパのフレーズが口からこぼれそうな、不思議な気持ちがしていました。
それは『古代戦士ハニワット』の武富健治先生のご印象もそうだったのですが。
なので「A氏とT氏と五条な桐彦旅」は、本当に旧知の友と旅するような、気さくなものだったのです。

Aさんは僕らを研修先の、シイタケ農家さんに連れて行ってくれました。
そこで乾燥したての立派なシイタケを、特別に譲っていただきました。
もちろん、卸値の正価はお支払いさせていただいております。たぶん。

が、水に戻してびっくり。
ぷるっぷるんの大きいシイタケが台所に現れました。

それでお勧めされたように、バターでジュウジュウ焼いてみましたが、

“旨しっ!”
宮崎・大分のシイタケは絶品だとは聞いていましたが、これは格別!
お値段を遥かに超えた感動が、口中に広がります。
旨みと香りと食感、どれをとっても最高です。
シイタケってこんなに美味しかったんですね。
今まで見た目の割に高く感じたんで、なかなか手を出してきませんでしたが、今後は美味しそうなシイタケを見つけたら即買いです。
戻し汁もうどん出汁にして、美味しくいただきました。



Aさんと武富先生の3人で椎葉村に来た時、Aさんがとっておきの秘密の場所を僕らに見せてくれる予定でしたが、あいにくその時は雨で霧が出て、展望はほぼゼロの状態でした。
そこで改めて僕はひとり、その場所を目指しているわけですが、すごい道だな。

3人と綾野ファームのご家族たちと夕食をとっていた時、「御池」の話が出て、樹海バリのヤバい伝説の話も聞いて、すごく興味を持ってからの2度のチャンスを、雨に降られました。
実際は他にも、休日に日帰りでも行ってやろうと構えていたのですが、椎葉に行けそうな日に限って、雨予報なのです。
樹海伝説の場所に雨の日に行くなんて、流石に無謀すぎる。

そんなんで悔しい思いをしつつも、雨・曇天の中で尾前神社に行って、日当集落を訪ねて、そしてもう一度向山神社を訪ねたら、俄かに晴れ間が覗き、それでこのAさんの秘密の場所を訪ねることができました。
するとその翌日、すんなり白鳥山に登れてしまったのです。
なんだかそう、順番を踏まえなければ、あの聖地には僕は行けないロープレのようでした。

いよいよ念願の、”Aさんが僕に見せたかった”という場所に僕は来ました。

ああ、なるほど、これがそうか。

豊かな自然に埋もれるように、山の合間にポツリポツリと見える集落。

村が誇る椎葉ダムの上には、吉川英治が名付けた日向椎葉湖(ひゅうがしいばこ)が緑色の水を湛え、その先を耳川が遡ります。

さらにその奥には、蒼い山々が連なり、そこに尾前集落があって、日添集落があって、
そして椎葉発祥の地とも謳われる日当集落がある。
さらに先には「神輿」の屋号がある向山があって、霊峰・白鳥山と聖域・御池があるのです。
なるほど、標高1000m越えのこの斜面は、Aさんがいうところの「椎葉を体感するには欠かせない場所」であり、椎葉の全てが詰まった場所。
Aさんが見せてくれた写真には、快晴の空の下、遠くの山々に冠雪が写っていましたが、この日は天を龍雲が覆ったよう。
これもまた散々雨に降られた、僕らしい椎葉の景色です。
Aさんは2ヶ月ほど椎葉村で過ごしてみて、同じような環境の、十津川や天河は思い浮かばず、龍鎮神社を連想したのだと言いました。
椎葉村が桑野内の奥宮、天空の龍宮なのだとしたら、なるほど感慨深いものがあります。

「シイタケとお茶、そして水に着眼すると、椎葉村の豊かさの一端を垣間見れると思います」
「未来を明瞭に描こうとする人や、感性の豊かな人には相当響く地域だと思います。
個人的には未来の詰まった場所。
資本主義の濁りから、次の時代のためにあえて取り残された人里なのかなあと」
Aさんのメッセージが、一つ一つ、僕の胸に響きます。
五条桐彦的に言うならば、ここは出雲サンカが隠し守った最後の「高天原」だったのではないでしょうか。
鶴富姫の伝承は、”富”ばかりでなく、”鶴”も重要なワードだったのだと思えてきます。

椎葉には何もないけれど、知る人だけが知っている素敵な宝が眠る場所。
椎葉村は、椎葉の良さがわかる人だけが、呼ばれる場所。
ここにはまだ僕の知らない椎葉あるので、この先も何度だって訪ねてみよう。
そう5月の頃には、鉄のフライパンとカセットコンロを車に乗せて。
こんな立派な椎茸、なかなか見かけないです。おこわにして食べたいです‼(米に出汁を吸わせたい笑)
上からの風景を拝見すると、椎茸が立派な理由が垣間見れます。緑が濃いですね。
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土地が豊かなのだと思います。
きっと昔は、日本中どこだってそうだったのだと😌
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