能登を訪ねて

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令和6年(2024年)9月2日および3日、僕は珠洲市と輪島市を中心に、能登半島を訪ねました。

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僕がにわかに能登を語るのでは、言葉が及びません。
そこで、自身が被災者でありながらも支援活動を続ける「おいこらさん」が紹介される『長周新聞社の記事』をぜひ、ご一読ください。
能登のリアルな現状としてはまさに、そこにその通りのことが、書かれてあります。

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今回僕は、羽黒神社の宮司様にお会いするため、能登を訪ねました。
今、能登に行っておかなければ後悔することになる、そんな焦りの気持ちもありました。
能登の珠洲市、そして輪島市で見たのは、予想はしていたものの、それを遥かに越えた、地震発生から8ヶ月を過ぎてもおよそ復興・復旧とはかけ離れた惨状でした。
電柱や標識が歪んているのは当たり前で、倒壊した建物には、『注意、中にプロパンガスがあります』といった張り紙もいくつも見受けられました。
冬になれば雪の重さに耐えられない家屋も出てきます。
このままでは深刻な二次災害が起きる可能性も高い。なんとかする気は、国にはないのでしょうか。

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珠洲市では水はまだ貴重で、下水がダメになっているので、トイレも限られた場所でしか使えません。

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噂には聞いていましたが、実際に震災後に駆けつける心無い人間もいるようで、鉄や銅が根こそぎ持って行かれた家があるという話も宮司様から伺いました。

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生々しい震災当時の話も伺いました。
倒壊した一つ一つの家々は直視に耐えず、『偲フ花』で現状をお伝えするための全景を数枚だけ、申し訳なくも撮らせていただきました。
妻や子供、何気ない平和だった時間を押しつぶした家が、8ヶ月過ぎてもまだそのままの形で残っている現実。
国や行政には、あなたの愛する人がそのような目にあっているという気持ちで、どうか1日も早い復興を成し遂げて欲しい。
個人ではどうしようもないのです。あなた方の大いなる采配なしでは、能登を救うことはできない。

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幸せというものは何気ない日常の中にあり、失われて人は、それを知ることもあります。
大晦日を過ぎ、穏やかで、小さな賑わいの中で迎えた新年。
その日に日常を失ってしまった、多くの人たちの状景が僕の脳裏に押し寄せ、ただただ己の無力感を感じるばかりです。

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幸いにもこの日、寝床をいただいた宿では、思いがけず素晴らしい湯に浸かることができました。
が、自衛隊も撤退した能登、珠洲市では、未だ満足に風呂にも入れない人も多いのです。
珠洲市では、普通に過ごすことにさえ、申し訳なさを感じます。
宮司様に僕は率直に尋ねました。私のように今後、多くの人が珠洲市を訪ねてくることを地元の方々はどう受け止められるのでしょうか、と。
「珠洲市でも再開させはじめた店などもあり、そうしたところは人が来てくれることを望んでおられるでしょうが、来ていただいても見てもらうところもなく、おもてなしも何もできない状況です」
珠洲市を見ても、全壊した家、半壊、ぱっと見は普通に建っている家が混在し、再開不能な店もあれば、再び立ち上がって生計を立てている商売もあります。
つまり、それぞれの思いは複雑であると推察します。
復興までの道のりは長く、そこには多くの人々の葛藤が、これから先も続くのです。
財務省の言う「コストを重視したコンパクトで集約した復興」など、現地の人の心を知ろうともしない者の、血の通わぬ言葉でしかありません。

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宿をいただいた「宝湯」さんの従業員の方は、仙台在住であったが能登の震災後に仕事を辞め、ここに移住してきたのだそうです。
よそ者の僕が地元の方に語りかけると、皆さん快く話し返してくださり、時には歴史好きな方と笑顔で歓談することもありました。
能登への車道は思いのほか整備されてきており、陽の差す道を車を走らせてみれば、青い海と緑の山野が広がり、改めて素敵な場所だと実感しました。
失われたものは多く、元には戻らぬ珠洲市と輪島市であろうと思いますが、できれば若い人たちも呼び込んで、少しずつでも復興の道を歩んで欲しい。
日常は突然失われることもあるものですが、気がつけば、また傍に寄り添ってくれている。
能登に坐す大地の女神に、どうか能登の方々の穏やかな日常が一日も早くもたらされることを、切に願い奉る次第です。

今回、唯一自分用に買い求めたのは、輪島市の震災で救い出されたという、箱のない輪島塗の器でした。
道中で参拝した天日陰比咩神社では御朱印をいただいた際、多めにお渡ししたお金のお礼にと、どぶろくの御神酒をいただきました。
御神酒を器に注いで口に含むと、強めの酒は下戸の喉を灼き、心の芯まで痺れさせたのでした。

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氣多本宮:能登生国玉比古神社
氣多大社

天日蔭比咩神社
正院 羽黒神社
須須神社 高座宮・金分宮
須須神社 奥宮
珠洲岬
重蔵神社

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8件のコメント 追加

  1. 五条 桐彦 のアバター 五条 桐彦 より:

    混乱と困惑の日々が、また続いてくのでしょうね。
    出口があるのかどうか、トンネルはどこまでも長い。
    ただそれでも、日本は終わったという人が多くいますが、そもそも世界が終わっているわけで、日本はまだマシな方だと思っています。
    偉大なご先祖様に申し訳ないことではありますが、それでも先人が残してくれた美徳・美意識が、少なからず残っているのが幸いです。

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    1. 五条 桐彦 のアバター 五条 桐彦 より:

      荒んでいく世の中でも、美しいものは更に際立っていくと思います。
      美とは思いのほか、強いものです。

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  2. 出芽のSUETSUGU のアバター 出芽のSUETSUGU より:

    復興どころか復旧も進んでいない感じが伝わってきました。

    先日読んだ某記事で、

    「1月1日から7カ月間、小学校の避難所で段ボール生活をしてきた。長くてつらい毎日だった。でも仮設に入れた私はまだいい方で、今も県外や金沢方面のホテルやアパートを転々として生活している高齢者のことを思うと胸が痛む。これまでのんびりと米や野菜を作って生活してきた人たちが、右も左もわからない都会にポツンと行って、何もすることがないことほどつらいものはない。しかも2次避難先のホテルも国や県が“北陸応援割”といって観光客誘致を進めるため、8月いっぱいで被災者は立ち退かなければいけないという。帰りたいけど帰れない。それなのになぜ期限だけ決めるのか。まるで年寄りに死ねといっているようなものだ」

    五条さんの現地の声と合わせてこちらの記事を読んで。。本当に普通にその日の寝床を頂けただけでも申し訳ないと書かれている五条さんのお気持ちがやっとわかりました。

    自分の認識も世間と同じく、まだ現状を何も知ろうとしていないのだと思いました。見えてないから、なかったことに。それからは見ないようにしていたのかもしれません。

    コンビニとかに置いてあるのにお金入れたり、復興支援コンサートへ行ってお金落としたりするだけでは復旧の役には到底及ばす、ただ自己満足なだけの気がしています。個として何ができるのか。国を動かす力がある人に未来を委ねるには、政権を担う一体誰を支持すればいいのか、普段から政治に関心を持っていないと、こういういざとなった時に私のようにどうしていいか分からないですね。これではこの国の今をちゃんと知ろうとしていませんね。

    田中角栄さんのように、何をしようが言われようがインフラ整備に命をかけられた政治家を見極めたいと思いました。いるのかな。。

    これ以上のことは、分からなくて言葉が出てきません。。

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    1. 五条 桐彦 のアバター 五条 桐彦 より:

      ありがとうございます。
      24時間のチャリティに始まり、世の募金の中抜き問題などを聞いて、それならば直接お届けしたいという思いでした。

      雪が降る前にどうにかしなければ、さらに苦しい状況になることは目に見えています。

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  3. asamoyosi のアバター asamoyosi より:

    全部進まない能登の復旧・復興。政治の無責任さに怒りを覚えます。政治の劣化を痛感しています。

    次は絶対国民に寄り添ってくれる政権ができるよう、真剣に考えなければ、日本という国は滅びの道を進んで行くのではないかと思えてなりません。

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    1. 五条 桐彦 のアバター 五条 桐彦 より:

      こんにちは。
      おっしゃる通りです。しかし、では誰を支持すれば良いのか、それも問題で・・・
      それに政治家だけでなく、問題の本質は官僚にもあると思います。今の国政は日本人のための国政ではなくなってしまっています。とっくにそうだったとも言えますが、昨今は特に酷い。
      一度全てを解体しなければ、何も変わらないのかもしれません。

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      1. 不明 のアバター 匿名 より:

        昔は実質官僚が国を動かしているとか言われていたようですが、今は政治家の思い通りに動く組織になっているように思います。森友事件でも分かるように、生殺与奪の権を官邸に握られているからです。一度全てを解体せねばというおお考えには大賛成です。そのためには現政権の弱い立場の人々を無視するような政策とは対極にある人を支持し、増やしていくのが良いように私は思っています。中途半端に現政権寄りのことを言っている人では、解体できませんもの。それで、いわゆる政官財の癒着を一旦断ち切らなくては同じことを繰り返してしまうように思えてなりません。もし、それで不都合なことがおきれば、次は違う人を支持すればいいだけのことですから・・・。それが民主主義というものだと私は思っています。

        私の尊敬して止まない五条様に向かって偉そうなことを申し上げてごめんなさい。 🙇頓首🙇

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        1. 五条 桐彦 のアバター 五条 桐彦 より:

          いえいえ、私も若輩者ですので。
          しかし最近はとにかくおかしい。
          彼らの愚行を多少は見逃すとしても、能登を置き去りにだけは、しないでいただきたいと願います。

          いいね: 1人

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