
“花の時に花を以って祭る また 鼓吹幡旗(つづみ・ふえ・はた)を用いて歌い舞いて祭る”
イザナミの御陵「花の窟神社」(はなのいわやじんじゃ)は、僕の大好きな神社のひとつです。

今回初めて気がつきましたが、「竜宮塔」なんてのが、あったのですね。

高波で9人が流死し、海の神を鎮めるために建立したとあります。
悲しい歴史を物語る石塔ではありますが、花の窟の海も、龍宮に通じる場所だと考えられていた証でもあります。

潮の音と鳥の声。

いつ訪れても、心地よい場所。
ここは僕のイメージする常世に近い。

花の窟の巌窟は、おそらく風葬地だったのだろうと考えています。
実際に花の窟の聖域からは、近年になって経典や人骨も出土しているとのこと。
正しく祀られた風葬地は、決して淀みがなく、清らかなものです。
風葬は、葬儀の在り方としては最も崇高で、正しい方法なのではないかと思います。

高千穂の天安河原も、本来はこのくらい清々しい聖地であるべきでした。
あそこは何を、違えてしまったのだろうか。

古代出雲王家の末裔「富家」に伝わる話では、熊野には出雲の血を引く一族が先住しており、サイノカミ信仰を広めていたとのことです。
熊野各地にその信仰の痕跡は残されていて、花の窟もサイノカミの女神を祀っていた祭祀跡だと。
つまり、本来ここに祀られるのは出雲王国初代クナト王の妻「幸姫」(さいひめ)ということになります。

花の窟神社では、2月2日と10月2日の年2回大祭が行われ、「御縄掛け神事」が執り行われます。
この大綱に、季節の花(2月はツバキ、10月はケイトウ)を結びつけた3つの「縄幡」を作り付けるのですが、往古は稲の花が結びつけられたのだと云われます。
この神事は、今はここに葬られたイザナミの霊を鎮めるための神事と解釈されていますが、本来は豊作の祈願と感謝を伝える農耕神事であった側面もあったかと思われます。
縄幡の特徴的な形状は、サイノカミの「生命創造」の尊いマークである「×」印がデザインされており、この春秋の祭りは、古代出雲王国に特徴的な祭祀の形を表しています。

死と再生の聖地、それが花の窟の姿でしょう。
出雲族は母系社会であり、「戸畔」(とべ)と呼ばれる女首長が集落を統治しており、花の窟もまた、有力な戸畔の風葬地だったと思われます。

ただ、熊野のこの聖地は、出雲とはまた違ったニュアンスも感じます。
おそらくはインドネシア系の、沖縄のガマ信仰に似た、出雲よりも古い原住民の影響が少なからずあるのではないかと思います。

「ところで其処の熊野牛を食いしモノ、近う寄って耳を貸したもれ。おぬし、美熊野牛のことは知っておるのか?」
なん・・・だと・・・・!

美熊野牛(みくまのぎゅう)は熊野の「岡田牧場」さんでのみ育つ希少和牛のことです。
牧場の裏山は、花の窟神社の土地となっており、岡田牧場の牛は、神の山から湧き出る水を飲んで育ちます。
とにかくこだわり抜いて育てられ、通常は28ヶ月程度の肥育期間で出荷する農家も多い中、美熊野牛は33~35ヶ月ほど肥育された牛が出荷されます。
熊野牛は複数の畜産家によって飼育されますが、その中でも唯一無二の肉質の牛、それが美熊野牛なのです🐃

ということで、たまたま入った新宮のイタリアンのお店「osteria TRENTA」(オステリア トレンタ)さん。

まあ、予想はしていましたが、なかなかなお値段です。
単品もありましたが、やはりコースで頂きたいじゃん。
そしてここは新宮ですよ、熊野灘の魚も食べたい。
それに、あったよ、美熊野牛!!

ということで「旬の豪華食材でおまかせコース」、キミに決めたっ!
ドリンクも入れて、壱渋沢栄一越えですよ、どどどどど、どんまい!!

でもねえ、

旨いんよ、これが。

どれもソースが最高。

濃厚だけど、あと口の残らないすっきりとした味わいです。

どの料理もすっごい旨いなぁと思ったら、

なるほど、タイヤ屋さんのお墨付きでしたか、納得。

こんなおしゃれな空間に、

何でワイは、一人寂しくおるんやろか。
孤独の至高飯。

やって来ました美熊野牛!
写真では分からんかもだけど、結構ボリュームあるステーキです。こぶし大より気持ち小さいくらいかな。
肉質はジューシーで、脂身は少なめでした。
正直、僕はグルメ舌ではないので細かなことまでは言葉にできませんが、昨年美熊野牛は、松坂さんを抜いて全国一位になったのだそうです。

とまあ、素材も最高なら味も最高、満腹感も十分に楽しめたオステリア トレンタさん。
店を出る頃にはむしろ壱渋沢栄一では安すぎるんじゃないかとさえ思えたのでした。



「あんた、前置きが長いんじゃ」

そうそう、確かにおっしゃる通りでして、ようやく本題の聖地なわけですが、丹敷戸畔ちゃんのお墓があるというので、はるばるやって来ました。
和歌山県東牟婁郡串本町二色にある「戸畔の森」の中にあります。

ヒ~、階段登るよ~。

すんごい急勾配の階段を、膝に鞭打ち登ります。

眼下に見える青いおっぱいみたいなのは、トルコのお守りなんだそうで、なんでやねんとなります。

二色の地名は丹敷によるものでしょう。
地名として残り続けるということは、地元でも愛され、誇りにされている証ではないかと思います。

「丹敷戸畔」(にしきとべ)とは、『日本書紀』における初代天皇東征の折に登場する人物ですが、彼女の登場シーンは僅かに記されるのみ。
“神武が、皇子の「手研耳命」(たぎしみみのみこと)と軍を率いて進み、熊野荒坂津(またの名を丹敷浦)に至った時のこと、丹敷戸畔に襲われたのでこれを誅した”

このように丹敷戸畔はあっけなく討ち取られてしまいますが、その時、神が毒気を吐いて人々を萎えさせ、皇軍は振るわなかったと記しています。
“神が毒気を吐いた”とは、丹敷戸畔が紀伊半島南部の偉大な媛巫女であり、皇軍は彼女を殺してしまったため、深刻な呪いを受けたと見ることができます。
その後皇軍は、熊野川の中洲「大斎原」(おおゆのはら)で身動きできなくなってしまいます。

そんな丹敷戸畔の墓と伝わる場所が、見えて来ました。

なんと、慎ましい。

こんなに愛らしいお墓を、僕はこれまで見たことがありません。
墓、というよりは石塔ですが、神に毒を吐かせるほどの豪傑の者が眠っていると思えぬ質素さ。

思わずお持ち帰りしたくなるような、かわいい媛巫女の姿がそこにありました。

石塔の前には、たくさんの珊瑚や貝が供えられています。

熊野市赤倉山中の「丹倉神社」は、丹敷戸畔を祀った聖域であるという説もありますが、花の窟や丹倉からこの戸畔の森を含む一帯が、丹敷戸畔の支配域であったと僕は考えています。
その媛巫女女王を討ったのですから、第一次物部東征軍は相当な窮地に立たされたはずです。

ただ、ここに眠る丹敷戸畔が、物部軍に討たれた人であるかどうかは分かりません。
丹敷戸畔とはこの一帯を統べる女首領の役職名であり、名草戸畔と同じく、何代か居たと考えられるからです。



戸畔の森の横に海岸があったので、散歩してみました。
写真の左ピークらへんが、丹敷ちゃんのお墓がある場所です。たぶん。

海抜7.5mから42mまで、約35mの高さを登ったことになります。

海岸はまるで、禊の浜のように穏やかで、美しい。
月夜に肌を濡らす彼女の姿が、目に浮かびます。

砂浜を歩いていると、丹敷戸畔ちゃんのブラ、忘れ物が落ちていました。
せっかくなので匂いを嗅いでみると、イカくさ、磯の香りがしましたので、海水で丁寧に洗い、彼女との思い出に、大切に持ち帰ることにしました。


オステリア トレンタさん、なんて素敵なお店。
お店の雰囲気も、盛り付けも、最高ですね。
このお値段で、この希少な美熊野牛をいただけるのは驚きです。
熊野古道、いつか行きたいと思っているので、花の巌神社とこちらのお店、
しっかりと覚えておきます‼
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coccocanさんに、おすすめです♪
僕はお酒が飲めないので、そこが勿体無い😅
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ワインでペアリングしたいです。酒飲みの私的にはw
でも、純粋に味を堪能するにはアルコールはない方が間違いないとは思います笑
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今更ながら、『丹』に関する一族の首領なんですかね?
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その可能性も考えられますよね🤔
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花の巌神社、五条さんに教えていただいて行きましたが、私も好きな場所になりました。
雰囲気がとてもいいです!!
そして、オステリア トレンタ!!
なんて素敵なお店なんでしょう!!!
とっても美味しそうです(*^^)v
私は、お料理に合わせてワインも楽しみたいです(笑)
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オステリア トレンタさんは、僕のような下戸でショボくれたおっさんよりも、お酒の味を知る旅する栄養士さんのような方に来て欲しいと思いますよ😊
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味を知るというか、単なる酒好きです(笑)
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いつも楽しく拝見しています。熊野古道中辺路にニシキトベ屋敷跡が存在します。熊野荒坂津神社の近くです。そこの説明によれば3代目ニシキトベのとき神武と戦い、17代目のとき景行天皇と戦い、北海道に追いやられたとあります。
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コメントありがとうございます😌
熊野荒坂津神社の近くのニシキトベ屋敷跡とは、おな神の森の先にある遺跡のことでしょうか。
なんと、3代目が神武と戦い、17代も続いたのですね。
丹敷一族は北海道にて生きながらえたのでしょうかね。
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🐥高級料理とは名ばかりで二束三文の安物料理を出す店が乱立する中で、一万円でこのレベルの料理を出す店は素晴らしいですな🐣私は昔、家族と一緒に1人一万円の値段のフランス料理を食べたが、その内容はどう考えても4000円ぐらいのものでした…横浜の店で食べたのですが、場所が横浜でもそれ🐤
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高くなるのはコック帽くらいにして、鼻まで高くされてはヤレヤレですな。
良い腕をもっているからこそ、謙虚であるべきかと。
こちらはミシュラン認定であるにもかかわらず、シェフの人柄を感じさせる良きお店でした。
僕も初心に帰る機会をえましたな🧑🍳
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