丹倉神社:八雲ニ散ル花 木ノ国篇04

投稿日:

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自然を愛し、感謝し、そして畏怖した古代の日本人。
「熊野」の奥深い山中には、今なお連綿と続く人々の祈りが残されていました。

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三重県熊野市の赤倉にある 「丹倉神社」(あかぐらじんじゃ)を目指して、森深い熊野の山中に車を走らせます。

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途中見えてくる巨大な岩山。

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この大絶壁の山は「大丹倉」(おおにくら・おおにぐら)と言い、熊野市指定文化財・天然記念物に指定されています。

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岩壁の高さは約300mで流紋岩でできています。

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このあたりの岩には鉄分が多く含まれていて、風化によって酸化し、赤い岩肌を見せています。
このことから「丹」という字が当てられ、また断崖絶壁の山を表す「倉」をもって「丹倉」と呼ばれています。

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標高488mに達する大丹倉は、古代から修験道が盛んであったと云われ、頂上に、「高倉剣」(たかくらつるぎ)大明神が祀られています。
この大丹倉の山頂に近い場所に目指す場所はありました。

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再び林道を走ります。
この一帯は水害も多く、道が崩落している場合もあるので注意が必要です。

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離合も困難な狭い山道を進むと「潮掛場」という場所があります。

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ここは、丹倉神社参拝の禊場です。

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かつてはここで水垢離をして身を清めてから、参拝していました。

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潮掛場の少し先に鳥居があります。
以前はこのように駐車に困っていましたが、

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なんとこの度、立派な駐車スペースができていました。
しかしそれでも、バックモニターなしでは怖くて駐車できません。

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鳥居の先には、これまた恐ろしいほどの急勾配な下り階段があります。

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下り宮は珍しい、とされますが、意外に多い印象です。

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しかし元々の当社の参拝ルート・街道はさらにこの下にあったらしく、林道が通ったことで、この下り階段が作られたようです。

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若い杉の人口林の中に、ぽっかりと開けた空間があります。

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そこは祭の庭。

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その奥に何かが、いる。

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丸く、ゆったりとまるで生きているかのような巨岩。

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これが「丹倉神社」の御神体です。

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社殿はなく、神体を直接拝する古代信仰の原型。

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「熊野信仰」とは原始の頃の自然に対する畏怖の気持ちが、そのまま信仰になっています。
神道以前の古神道、「磐座信仰」の最たるものがこの丹倉神社にありました。

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岩の上には長い年月をかけて樹木が繁り、御神体そのものが一つの森になっています。

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当社の祭神は「近藤兵衛」とも「高倉下」(タカクラジ)とも云われています。

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近藤兵衛(こんどうひょうえ)とは詳細は不明ですが、文禄の頃の丹倉の山守武士で、修験者で鍛冶でもあったと伝えられます。
兵衛は砦を守りながら鍛冶をし、夜のは大丹倉の岩壁に籠って荒行をする修験者であったそうです。
神出鬼没の様から、里人は彼を「天狗さま」と呼ぶようになったと伝えられます。

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高倉下はまだしも、時代的に、近藤兵衛が当地の本来の祭神とは思えません。
もうひとつの伝承として、「丹敷戸畔」(ニシキトベ)が祭神であるという話もあります。

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丹敷戸畔は、『日本書紀』における神武天皇の東征の折の記述に登場します。
神武が、皇子の「手研耳命」(たぎしみみのみこと)と軍を率いて進み、熊野荒坂津(またの名を丹敷浦)に至った時のこと、丹敷戸畔に襲われたのでこれを誅したと云います。

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「戸畔」とは女性の首長のことを言います。
出雲王国時代は母系社会でしたので、女性の中に権力を持つ者も多数いました。
また彼女らには巫女としての資質を兼ね備えていたものも多く、神から神託を得る者として、民から崇敬の念を得ていました。

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丹倉神社の自然崇拝、磐座信仰が出雲人によるものであることは、かなり濃厚だと思われます。
しかし、出雲人はいつ、この紀伊半島の果てまでやってきたのでしょうか。

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深い森と断崖絶壁の海岸、限りなく少ない平地、そんな場所に好き好んでやってきたとは思えません。
彼らは止む無く紀伊半島に南下してきた「高倉下」らと共にやってきた出雲人、高鴨家を中心とした人たちだったのではないでしょうか。
厳しい環境下の紀伊半島において、ゆっくりゆっくりと拠点を広げ、生活と祭祀を行える場所を模索していったはずです。
そうしてたどり着いた大丹倉では、岸壁を赤く染めるほどの鉄分がにじみ出ていました。
そう、製鉄民族の出雲人が、この場所を放っておくはずがありません。

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丹敷戸畔と神武軍の戦いの伝承は、当地を聖域と考えた出雲人と、九州からやってきた物部族との争いを意味しています。
丹倉神社のあるこの場所で戦があったわけではないでしょうが、紀伊半島東方面は神武=ウマシマジらのルートとは微妙に外れていますので、ウマシマジらが大和入りを行った後に当地に根付いた物部族らが攻め込んだと云うことになるでしょう。
伝承では丹敷戸畔は討ち取られてしまいますが、その時、神が毒気を吐いて人々を萎えさせ、皇軍は振るわなかったとしています。

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訪れる人は決して多くはない神社ですが、境内は掃き清められ、祈りを捧げる人が今も絶えないことを示しています。
大昔から人々の願いを聞き届けてきた巨岩の姿は、慣れてくるとどこか愛嬌を感じさせ、心が気持ちよく、軽くなる気がしました。

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2件のコメント 追加

  1. nokanan より:

    はじめまして。
    10数年前に出雲へ行き、その後ずっとモヤモヤしてました。2年前、ちょっとしたきっかけで、もう行くことは無いであろうと思っていた出雲へ行きました。
    又、モヤモヤが始まり……紆余曲折(大袈裟ですが笑)有り、等彌神社(ここで目に見えない誰かが教えてくれました なんて笑⃝)を参拝し調べていたらchirikoさんのブログを知りました。その後、全く知らなかった大彦の記述で出雲王家のことが気になり本を求め、全て氷解です。
    ありがとうございます!感謝感激です。
    所で、この近くの【まないたさん】は行かれましたか?
    この辺はとても興味がある場所です。
    楽しく読ませて頂いてます 合掌♪
    敬具

    いいね: 2人

    1. CHIRICO より:

      こんにちは、nokanan様。
      ようこそお越しくださいました。

      「まないたさん」、ブサイク王様からも教えていただき、とても興味湧いているところです。
      熊野地区はまだまだ奥が深そうなので、改めてプランを練っているところです。
      が、なかなか休日が少ない身ですので、実行は来年になるかと。

      大元出版系の本は、多くのモヤモヤを解き明かしてくれますね。
      しかし長年の伝承ゆえか、同一作者であっても本ごとや前後で矛盾するところもあり、新たなモヤモヤになってしまいます(苦笑)
      でも古代の話なのでそれもやむを得なく、また空想を広げる楽しみにもなり得ます。

      こんなマニアックなブログにお付き合いいただき、ありがとうございます。
      貴重な情報提供も合わせて、感謝申し上げます。

      いいね: 1人

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