
『入山禁止』「入山、警察に通報します」by 山主

ついに僕は、narisawa氏に犯罪の片棒を担がされることになるのか、と思いましたが、違いました。
nari氏が連れて来てくれたのは、長野県松本市中川会吉にある「會吉天白社」(あいよしてんぱくしゃ)という所でした。

しかしこの神社の参道入口には、あの張り紙があり、何も知らなければ足を踏み入れるのを躊躇ってしまいます。

どうやらこの山は、とある目的で不法侵入する者がおり、持ち主が苦肉の策として張り紙をしているのだと思われます。
参道・境内は私有地ではなく、神社庁の管轄となりますので、神社の敷地を外れなければ大丈夫なはずです。たぶん。

ゆるやかな坂道の参道を数分歩くと、

立派な建物が見えて来ました。

ここが會吉天白社。

向かいの建物、舞殿でしょうか、これは内部が茅葺になっています。
柱はまだ新しい。

拝殿の裏手に、複数の石祠がありますが、これが本殿なのか。それにしては少々寂しげですね。
おそらくこの奥にあるものが、御神体となるはずです。
創建は不明。會吉天白社に関しては情報が少ないのですが、祭神は「倉稲魂命」(うかのみたまのみこと)となっているようです。

「天白信仰」(てんぱくしんこう)とは、長野県・静岡県を中心とし、三重県の南勢・志摩地方を南限、岩手県を北限として広がる民間信仰です。
信仰の対象は、星神・水神・安産祈願など多岐にわたっており、さまざまな研究者が諸説を述べています。
柳田國男は、天白神は「風の神」である可能性がある、としています。
主力説としては、「天一神」(天一星)と「太白神」(太白星)の合祭説と、伊勢系麻積氏の祖神「天白羽神」(あめのしらはのかみ)説に分かれるようです。



さて、nari氏は再びズイズイと山奥に入っていきます。

すると、巨大な岩が現れ始めました。

不思議な形状の岩。
これは古代、この地層が海底にあったことを示しているのでしょうか。

岩の上に社が乗っています。

つまり、この岩を神として祀る信仰があるということです。

奥は谷になっていますが、川の流れはありません。

岩々を横目に、さらに数分登っていくと

とてつもなく巨大な圧が、そこにありました。

おお、すごい。
思わず感嘆の声が漏れます。

圧倒的な岩圧の隙間に、御堂が建っています。

ここは、「岩殿山観音堂」(いわどのさんかんのんどう)と呼ばれる場所。

投入堂的な、岩にめり込むような形で御堂が建てられています。

横には、奈良の酒船石を思わせる、手水石もありました。

天井は無く、

岩の表面に浮かび上がる赤いマーブル状の模様が、宇宙的な神秘を感じさせます。

創建年代は不詳で、観世音菩薩を本尊として祀る岩屋。

ここも情報が少なく、詳細は分かりかねますが、先の天白社との関係も気になります。

古代にはこの岩屋を御神体として祀る信仰が、一帯にあったのかもしれません。

のちに仏教が伝来し、神仏習合期に観音堂と天白社が個別に置かれたのでしょうか。
本来は2社で一つだったと思われます。

当地の北に麻積という地名の場所があり、天白信仰とも関係深いという麻積氏の関連も気になります。

波を思わせる岩肌はまるで、天空の龍宮。

乙姫の調べが、どこからか聞こえて来そうな気がしたのでした。

narisawa110
ここは天領であった為に、むかしの神仏習合のままの、スタイルが残っているのだそうです。
神社は黒不浄を避けますのでお寺の存在は都合が良かったのだと思います。