櫻井八幡宮〜神功皇后紀 8

武内宿禰は、暗闇の山道を歩いていた。 人知れず「橿日宮」を抜け出し、ひたすらに穴門を目指して、海を渡った。懐かしい、「豊浦宮」が見えた時は思わず目頭が熱くなる。しかし懐古に浸る時間はない。一時も早く皇后の元へ戻らなくては…

香椎宮「儺の橿日宮」〜神功皇后紀 7

「私が見まわしたのに、海だけあって国はない。どうして大空に国がありましょうか。いたずらに私を欺くのは、いったい何という神か。」 静寂の中、大王の声だけが辺りに響く。時は9月、秋の気配漂う夜、かがり火の中に数人の重臣ととも…

古物神社〜神功皇后紀 6

神功皇后を乗せた輿とその一行は、1月の寒空の中、ただひたすらに歩み進んでいた。山間から吹きすさぶ風は冷たく、雲は鉛のように重たい。 「もう少し行けば、青い海と新天地の見える峠にたどり着くはず」皇后はふと鈍色の空を見上げた…

岡湊神社・高倉神社〜神功皇后紀 5

「岡の水門」は開けていた。 行き交う人々で賑わい、活気に満ちている。空は晴れ渡り、海風が潮の香りを運んでくる。ここが熊襲征伐の拠点となるのか、 皇后はしばし物思いに耽っていた。 昨夜は熊鰐が屋敷で、珍しい魚などを振舞って…

一宮神社~神功皇后紀 4

なんとも微笑ましいこと。にわかに作った小池に、鳥、魚が戯れている。あの首の長い鳥、あれは「鵜」と言ったか。飼いならした村人が鵜から魚を得る様は、いつまで見ていても飽きることはない。それにしてもあの男、「鰐」の駆けつけた時…

国見岩~神功皇后紀 3

天と地の狭間に立っている。色は薄く、線の細い体は柔らかな曲線を描いている。口ずさむ祈りは、歌のように流れて空の彼方に消えていく。天に届くかのように、まるでそこが故郷であるかのように、彼女は両の手を差し出した。淡い瞳に映る…

縫殿神社~神功皇后紀 2.5外伝

宗像の隣の福津市、その住宅街を抜け、山の麓へ入り込んだところにひっそりと「縫殿神社」(ぬいどのじんじゃ)はありました。 応神天皇の頃、呉の国(中国)から4人の織媛が宗像にやってきます。 媛の名は兄媛(えひめ)、弟媛(おと…

織幡神社~神功皇后紀 2

激しい潮流の中、関門海峡を越える熊鰐は焦っていた。大王が留まられている豊浦宮が賊に襲われたというのだ。しかもそれは、新羅の塵輪という者が扇動し、この熊鰐が治める筑紫を抜けて事を成したという。その被害は甚大で、弓の名手と謳…