一宮神社:たぬカタリ case of 小女郎

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むか~し、むかしのぽんぽこぽん。
立川の奥の小女郎谷に、まっこと美しい娘がおったんや。村人はその娘が、たぬきが化けたものじゃと知っとったけん、小女郎狸と呼んどった。
小女郎狸は神通力をもっとったけん、一宮神社の神さまに見込まれて、眷属として抱えられ、一宮の境内で、一番大きい楠の木に移って棲むことになった。
小女郎狸はとても賢う、普段はおとなしゅう神主さまのええつけ守っとったけん、たいそう気に入られて可愛がられとった。

ある夏のこと、1人の漁師が1匹の鯛を持って、一宮神社に訪れた。
「この鯛は今年獲れた、1番の鯛でございます。どうか今年も豊漁祈願おねがいするだ」
「こりゃこりゃ見事な鯛じゃな。御神前にてお供えいたそう」
神主は漁師から鯛を受け取り、神様に奉納し、豊漁祈願を行った。
その後、神主が、頂いた鯛を台所に置いとったら、
「クンクンこりゃ、うちの大好物の鯛の匂いやないか」
小女郎狸は台所に置かれた鯛に気がつくと、我慢ができんようになって思わずパクリ、と食べてしもうた。
ほいで、夕方になって神主が台所に来てみたら、あるはずの鯛がない。
「こりゃあの小女郎狸の仕業じゃのぉ」
神主はたいそう立腹して、「人の物盗むような奴は眷属の資格がない。今日かぎり一宮の森から出て行きよ」
言うて小女郎狸追い出してしもうた。
 
小女郎狸は、ぽつりぽつりとあてものう歩き、やがて浜に出た。すると漁船がこれらか出港するところであった。
小女郎狸は知り合いの慈眼寺の和尚に化けて船頭に言うた。
「うちゃ大阪に行きたいんじゃけんど、この船に乗せてもらえんじゃろうか」
こうして小女郎狸は船に乗せてもらえることになった。
大阪までの海路で、船は大量の鯛を釣り上げよった。船旅が始まって、もう幾日かが過ぎとったからの、腹のへった小女郎狸は、我慢しきれず鯛食べってしもうたさ。
それが船頭に見つかり、
「坊主のくせに、とんだ生ぐさじゃぁ思うたら、たぬきじゃったか」
と正体がバレてしもうたと。
「うちゃ、一宮の森の小女郎狸と申します。神主さんに追い出され、反省しとったけんど、大阪へ行く途中でまた悪いことしてしまいました。罪ほろぼしに、うちが黄金の茶釜に化けるけん、それ売って、食べた鯛の穴埋めにしてつかぁさい」
そうして大阪に着くと、小女郎狸は金の茶釜に化けて、古道具屋に高う買うてもろうたのじゃった。

道具屋は、金の茶釜がおおいに気に入り、大切にしとった。
ある日、ようよう見ようと、縁側へ茶釜もち出したとき、それを庭の隅に落としてしもうた。茶釜はそこらへんに転がっとるはずなのに、なんぼ探しても見つからなんだ。
それから程なくして、道頓堀、千日前辺りで、きれいな娘の姿を見たっちゅう人たちがようけおって、噂になっとった。
「なんて、きれいな嬢はんやこと」「ほんま、どこの娘はんでっしゃろ」
皆んながその娘を見かけると、はたと立ち止まり、振り返ってまた見るのであった。
すっかり気ぃようした小女郎狸であったけんど、その後は友達のいる、しのだの森を訪ね、長う、その森に住むことになった。
さらに時が過ぎて、小女郎狸は一宮神社に戻ってきた。
「神主さま、小女郎はただいま戻りました。あの時はごめんなさい。深う反省しとります」
「おお、おお、小女郎よ。わしも言い過ぎて悪かったの。お主のことを、ずっと心配しとった。無事でよかった、よかった」
こうして、小女郎狸は一宮神社の一番楠で余生を過ごし、今では楠木神社に祀られとるということじゃった。
ぽんぽこぽんぽこ、ぽんぽこりん。

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愛媛県新居浜市一宮町に「一宮神社」(いっくじんじゃ)があります。

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一の鳥居からは楠が道を作り、木漏れ日が心地よい参道となっています。

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当社はその名の通り、新居浜の一の宮とされる古社となります。

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祭神は「大山積神」(おおやまつみのかみ)、「大雷神」(おおいかづちのかみ)、「高龗神」(たかおかみ)を主祭神とし、「健御名方神」(諏訪神)を配祀します。

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もともとは「大山積神」を祀る古社であり、和銅2年(709年)に「雷神」「高龗神」が大三島から奉遷しました。

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社伝に依ると嵯峨天皇の勅願所であり、西条藩主松平公の祈願所六社のうちの一社であったとのこと。

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天正13年(1585年)に起きた天正の陣の際、毛利氏・小早川隆景軍の焼き討ちに遭い、社殿が消失しました。

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その後、毛利氏に不幸が続いたため、これは一宮の祟りだと恐れられ、元和6年(1620年)に毛利氏により再建されています。

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この際、毛利氏は当社分霊を長門国の萩城下に勧請し分社を建て、厚く奉ったということです。

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本殿隣に建つ神社は伊豫八幡神社。

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他に「素鵞神社」「新居神社」「金毘羅宮」などの境内摂社が鎮座します。

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そして、境内に一際高く聳える、一本の楠。

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これが「小女郎狸」(こじょろうたぬき)の棲家という、国指定天然記念物「一番樟」(いちばんぐす)。
高さ29m、胴回9m、樹齢は約1千年という大樹です。

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その下に鎮座する楠木神社に祀られているのが、小女郎狸です。

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小女郎狸は、壬生川の喜左衛門狸・屋島の禿狸を兄に持つ、三兄妹の末妹とされ、伊予の狸族の名門と言われています。

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代々一宮神社の宮司に仕え、可愛がられていた、利口なたぬたぬでした。

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一番楠の根元の股のところに、石のようなものが祀ってあります。

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これは自然石なのか、まるで若い娘に化けた、小女郎狸のようです。

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その上にはイボのようなものがあり、

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また、別の股にもイボがありました。
この木はサイノカミとしても、拝まれていたのかもしれません。

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小女郎狸には、曽孫狸の話も伝えられています。

新居浜市教育委員会発行『新居浜のむかしばなし』より-

明治の初めの頃のお話です。
百姓仕事もひまになった冬の初め、西の土居の若い衆がお茶屋谷へ毎日たきぎを採りに行っておりました。ところが木の枝に掛けていたおべんとうがよくなくなるのです。
ある日みんなで相談をして、今日はべんとう泥棒をつかまえてやろうと、木の陰にかくれて待っておりますと一匹の狸が出てきました。そしておべんとうを取って逃げようとするところを、引っ捕らえました。

「このタヌキめ!!」と、みんなでかわるがわる棒でなぐっていると、とうとう死んでしまいました。すると誰かが「タヌキ汁にして今晩一杯飲もうや。」といいますと、一同は賛成してその晩タヌキ汁をつくりお酒を飲んでドンチャン騒ぎをしました。

ところがそのあとにたいへんなことが起こりました。翌日タヌキ汁を食べた人はみんな病気になり、またその家にも不幸なことがつぎつぎと起き、西の土居中は大騒ぎとなりました。
さっそくある所から霊能者を呼んで来ておがんでもらいました。すると霊能者は「我は一宮神社の子女郎狸の曽孫であるぞ、よくも我を殺して食べたな、お前達の家には七代祟ってやるから覚えておれ!!」と大声でいうのです。

みんなすっかり驚いて恐ろしくなり、「どんな償いでもするからどうかお許し下さい。」と、あやまりました。そしてお寺の坊さんにお願いしてタヌキの供養を丁重にしました。それからみんな病気もよくなりました。

この話は西の土居町にあったほんとうの話です。

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陽気の中、一番楠の上の方を眺めていると、サワサワと風が吹き、ガサリと何かが動く気配がしました。
そうしていると、どこからともなくクスクスと、小女郎狸の笑う声が聞こえてくるような気がしたのでした。
ぽんぽこぽんぽこ、ぽんぽこりん。

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2件のコメント 追加

  1. 愛月 のアバター 愛月(manaru) より:

    昔聴いた懐かしいお話の再現をありがとうございます。
    新居浜の住人より♬

    いいね: 1人

    1. 五条 桐彦 のアバター 五条 桐彦 より:

      愛月さん、コメントありがとうございます♪
      愛月さんは、新居浜の方でしたか。ふらりと訪れた一宮神社でしたが、楠の隙間から吹く風が心地よい所でした。
      四国のたぬきたちは、皆お茶目で可愛いですね。
      僕もそんなたぬきに化かされてみたいと、ちょいちょい足を運んでしまいます。

      いいね: 1人

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