2016年4月14日に起きた「熊本大震災」は、多くの傷跡を残しました。
人が造ったものは、時間をかければまた造り直すことも可能でしょうが、二度と戻らないものもたくさんあります。
「天空の道」(ラピュタの道)は、残念なことに、その姿を大きく変えてしまいました。
阿蘇の外輪山の上を走る県道339号、通称「ミルクロード」の脇に、小さな農道があります。
正式名称「阿蘇市道狩尾幹線」というその農道は、見る人に感動を与える、素敵な場所でした。
その絶景を見るために、朝4時に福岡を出ます。
なんとか日の出に間に合いました。
厳かに、日が昇ります。
そこにはまさに、天空へと続く道がありました。
僕は今も噴煙を上げ続ける「中岳」を「阿蘇山」だと思い込んでいましたが、実はこの外輪山を含むカルデラ一帯の全てが阿蘇山でした。
スペースシャトルから得られたNASAの3Dデータを見ると、広大なカルデラが、ひとつの大きな火山だと言うことがわかります。
その広さは、南北に25km、東西に18km、面積380k㎡になり、国内第2位の大きさだそうです。(国内第1位は屈斜路湖です)
この広大なカルデラは30万年前~9万年前の間に発生した、4回の巨大な噴火により形成されたと云います。
その中でも9万年前に起きた、4回目の噴火 「阿蘇4テフラ:Aso4」は最も規模が大きく、火砕流は九州全土はもちろん一部は山口の萩あたりまで至り、火山灰は日本全土を覆ったそうです。
今この噴火が起きたとしたら…
考えるだけでも恐ろしいことですが、温泉や肥沃な大地がもたらす豊かな作物など、この阿蘇の大火山がもたらす恩恵もまた計り知れないのです。
この美しい農道は、今は大地震により先端の部分が崩れ落ち、見るも無残な姿になっています。
この写真を撮ったのは、2015年の秋でした。
秋は雲海が発生しやすいので、狙って行きましたが、草が秋色になっていましたので、新緑の春も撮りに行こうと思っていた矢先の大地震でした。
今はもう、この世界を堪能することはできないのです。
少し日が昇ってくると、うっすら草にも緑が戻ります。
この世のものは、いつか失われる危うさがあるからこそ、愛しく美しい。
改めてそう思わされる、「天空の道」でした。